第21回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 バングラデシュ事務所 チャカール亜依子さん

 チッタンゴン丘陵地帯ランガマティでのコミュニティースクール支援の現場をモニタリングする筆者(右)

2014年1月6日

みなさん、こんにちは。チャカール亜依子と申します。2012年より国連開発計画(UNDP)バングラデシュ事務所チッタゴン丘陵地帯開発ファシリティー(Chittagong Hill Tracts Development Facility:CHTDF)というプロジェクト事務所にて、平和構築と開発プロジェクトに係る計画、モニタリング、報告業務 (Planning, Monitoring, Reporting)を担当しています。2010年から2012年まではUNDPスリランカ事務所の平和と復興班にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として勤務していました。

チッタゴン丘陵地帯問題
チッタゴン丘陵地帯は平野が続く他地域とは違い、バングラデシュ唯一の丘陵地帯で、インドやミャンマーと国境を接した東南部に位置しています。この地域では先住民と政府軍との間で、土地、資源問題、人権をめぐる闘争が25年以上続きました。その後、1997年に先住民によって組織されたチッタゴン丘陵人民連帯連合協会(Parbattya Chattagram Jana Sambati Samiti, PCJSS)と現在の政府与党であるアワミ連盟の間で和平協定が調印され、長期に及ぶ紛争が終結しました。和平協定後、自治制度を実現すべく、チッタゴン丘陵地帯省、地域評議会(Regional Council)、丘陵県評議会(Hill District Council)といった、丘陵地帯機関が設立、発足しました。

しかし和平協定調印から16年たった今なお協定が十分に実施されていないのが現状です。例えば、和平協定で定められた33分野のうち、教育、保健、農業といった半数以上の分野は協定通りに省庁から丘陵県評議会へと権限が委譲されましたが、人事と予算の配分が伴っていません。また和平協定のコア部分ともいえる丘陵県評議会選挙、土地問題の解決、難民と国内避難民(IDPs)の生活再建、同地域における軍の撤退(非軍事化)なども実施に至っていません。これに不満を募らせる先住民の間で、さまざまな意見をめぐり、分裂が起こっています。

また丘陵地帯では、後からの入植者であるベンガル人の人口が増加しており、彼らによる和平協定実施反対の動きが拡大・組織化してきているのも事実です。入植者による先住民の土地略奪や焼き討ちなどの暴力行為も起こっており、2013年8月にはカグラチャリ県(チッタゴン丘陵地帯3県のうちのひとつ)にて2000人以上の先住民が組織的な土地略奪、焼き討ち被害に合い、家や財産、畑などを失い、避難生活を余儀なくされ、UNDPバングラデシュ事務所でも早期復興支援を行いました。

CHTDFの取り組み
バングラデシュ事務所のCHTDFは2003年からの準備期間を得て2005年より政府の和平協定実施を支援する目的で、チッタゴン丘陵地帯における平和構築・開発支援を本格的に開始しました。UNDPが直接プロジェクトを実施する形式で、現在までに、丘陵地帯全3県(Districts)、全25郡中(Upazila/Sub-districts)20郡、3257村、10万4711世帯、また8つの丘陵地帯機関を対象に1億3000万ドル規模で支援を行ってきました。支援分野も平和構築・協定実施へのアドボカシー、丘陵地帯機関のガバナンス強化、保健と教育、ジェンダー、コミュニティー・エンパワメント、経済開発、自然資源管理など多分野に渡ります。

CHTDFは日本との連携や調整も積極的に行っています。会合などの場で、日本と共に和平協定実施に向けてバングラデシュ政府をサポートする姿勢を表明していくことはもちろん、日本大使館とは緊密にチッタゴン丘陵地帯に関する情報交換も行っています。また数年前にはCHTDFは日本からの支援で、丘陵地帯に多目的ホールを建設しコミュニティの発展に寄与しました。さらに現在日本は、カグラチャリ丘陵県評議会の灌漑設備事業を、草の根・人間の安全保障無償資金のスキームで支援しており、CHTDFが実施する丘陵県評議会へのガバナンス強化事業との相乗効果も期待されています。丘陵地帯以外にも日本はバングラデシュ全土において円借款、技術協力、資金協力を行っており、バングラデシュにとって最大援助国の一つとなっています。

私の仕事
実際このような大規模なプロジェクトで働くことは面白く、やりがいがあります。事務所はモンゴロイド系先住民とベンガル人のプロジェクトスタッフが交じり合っています。丘陵地帯に強い想いを寄せる熱いスタッフが多く、それが私のやる気の根底となっています。私の仕事の一つは、現場から上がってくる報告書に目を通し、その報告書を国や地域レベルで起こっている事実や現象と関連付け、現場の活動にどのような意味や成果があるのかを理解し、現場にいないドナーやUNDP本部職員が読んでも分かる言葉に置き換えていくことです。もともと現場スタッフに直接報告書を作ってもらおうと頑張っていましたが、最近は、現場での活動と私たち支援国や国際社会で使う言葉に、ギャップがあることに気づいてきました。例えば、UNDPで「Transformational Change」という用語をよく使います。UNDPは、これを開発の成果が達成され、かつ持続し、政策やプログラム、またプロジェクトが国家戦略の一部として制度化される過程と定義しています。しかし、それを現場スタッフに彼らの活動と関連付け理解してもらい、次の支援に繋げる素晴らしい報告書を作成してもらうのは、容易なことではありません。ワークショップ開催や、トレーニングをモニタリングするというような活動を日々こなしていく彼らの視点には「Transformational Change」で謳われるような大きな社会の変化を思い描き言葉にすることが非日常的であるためです。

地道な作業ではありますが、そんな時に、私は現場と国際社会のギャップを埋める言葉を生み出すことにやりがいを感じます。またプロジェクト成果を測定するために、サーベイ調査や評価業務などを実施することがありますが、その際に、調査手法や評価方法をチェックし、質の高く信頼性のある調査や評価となるように、見直しと助言を繰り返し行うことも私の現在の仕事の一つです。資金不足で事業が実施できなくなる事がないように、業務上起こりうる問題やリスクを事前に察知し、周囲に助言しつつリスク回避のための行動を起こしていくのも仕事です。その際は現場スタッフと協議して、納得の行く解決方法を提案してから実施に移すよう、常に心がけています。またドナーとのリエゾンも担当しており、プロジェクトの実施が上手くいかなくなったり、問題が生じたりした際に、上記のようにドナーが理解できる言葉と納得のいく対処法で説明し打開策を見つけていきます。現場で自分の目で支援の現状を確かめ、それを自分なりに理解、分析し、また形のある次のものにつなげる、それが丘陵地帯支援に繋がっていると実感できるときはとても贅沢に感じます。

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チャカール亜依子
UNDPバングラデシュ事務所チッタンゴン丘陵地帯開発ファシリティー、計画・モニタリング・報告ユニット・チームリーダー、プログラムアナリスト。

2010年よりUNDPスリランカ事務所の平和と復興班にてJPO。2012年より現職。開発コンサル、証券会社勤務。2009年早稲田大学大学院国際関係学修士、1999年米国バージニア大学経済学部卒。

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