第25回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 UNDPスーダン事務所 児玉千佳子さん

 西ダルフール州、シルバ(Sirba)区のアブルマイル(Aburumail)村の学校にて

2014年6月20日

みなさま、初めまして。2012年から国連開発計画(UNDP)スーダン事務所で働いています児玉千佳子です。 スーダンでは様々な業務に従事してきましたが、この1年ほど「ダルフール・コミュニティベース平和と安定化基金(Darfur Community Peace and Stability Fund :DCPSF)*」のプログラムマネジメントをしています。今回はダルフールおよびDCPSFの簡単な紹介をさせていただき、平和構築の一面を一緒に考えていけたらと思います。

ダルフール
2002年にアフガニスタンに赴任して以来、これまでパレスチナ、ラオス、スーダンで平和構築・復興事業に携わってきました。すべての紛争はユニーク(比類がない)と言われますが、ダルフールにおける紛争も関係者、要因、タイプなどすべての面で1つではありません。ダルフールはスーダンの1番西に位置する地域で現在5州から成り立っています。チャド、中央アフリカ共和国、南スーダン、リビアと国境を接しています。ダルフールは人口約800万人で、40から90にも及ぶ多様な民族で構成されると言われています。** 私が担当しているDCPSFは様々な紛争の中でも地域的なもの(communal conflict) を主な対象としています。ダルフールでは多様な民族が農業、遊牧等異なった生計様式に基づき限られた自然資源(土地、水、農業牧草地、鉱物)を共有しています。しかし長年の紛争により、伝統的に問題を解決する制度が崩れ、資源も更に限られたものなったことに加え、武器の蔓延も加わり、個別の問題(例えば家畜の盗難)が異なる部族間の武力紛争に簡単に発展してしまいます。紛争を数量的に見るのは難しいのですが、ACLED***のデータを見ると、ダルフールの紛争数は2011年に1度底をついたのですがそれ以降急激に増加しました。2013年にはそもそもの紛争件数、死亡者数が増えているだけでなくこうした地域紛争が占める割合が大きくなっています。地域紛争が人命喪失、難民・国内避難民(IDPs)の増加、 特に女性や子どもに対する暴力、生計手段の喪失、社会インフラ・サービスの更なる荒廃等、人間の安全保障・開発に大きな問題になっていることが分かります。

平和構築

DCPSFは多国間ドナー信託基金の1つでUNDPだけでなく他の国連機関および非政府組織(NGOs)と共にコミュニティが自分達で武力紛争に発展する前に解決出来る能力の拡大、様々な部族・民族が共同で資源管理する能力の拡大、そして平和の配当として自律的な社会サービスの向上につながる支援をしています。ダルフールを含む紛争経験国で直面する課題のうち、ここでは3つのポイントに焦点を当てたいと思います。

・和解(Reconciliation)
ダルフールでは武力紛争勃発、和平合意、復興が直線的ではありません。また紛争もDCPSFが対象としている地域的紛争だけでなく、政府、反政府武装グループ間の紛争等、様々な紛争が混在しています。このような中、せっかく地域紛争の要因を解決しても、他の理由からまた紛争が勃発する所、もしくは巻き込まれるコミュニティもあります。しかし中には周りのコミュニティが武力紛争に見舞われても、 武力紛争に巻き込まれないコミュニティもあります。更なる検証が必要ですが、1つには地域の中での結束・共存・共同 意識が違いを生んでいると思われます。せっかくの平和構築の成果を持続させるためには紛争要因を解決するだけでなく紛争解決、もっとコミュニティ内での意識変化(和解)やその「コミュニティ」の範囲を拡大する支援が必要と見ています。

・支援対象
平和構築では人道支援・開発と異なり、脆弱者を対象とするのではなく紛争当事者も一緒にも入れて支援を考えないと長期的解決にはつながりません。それ自体が「政治的」な行為としてさけられることが多いだけでなく、例えば全体として貧困が蔓延し雇用基盤の少ない中脆弱者だけでなく、紛争当事者にも持続的な生計手段を与えることは非常に難しくなります。平和の分配などで緊急に成果が要求される反面(そのため,訓練、農業器具・食料配給と目に見える一時的なものに支援が流れる反面)最終的には持続的な生計手段を送出することは経済システムそのものが崩壊している所で政策、運輸インフラ、マーケット等システム全体を見た上で臨む必要があり長期的な課題となります。

・現地社会に害を及ぼさない援助活動(Do No Harm)
平和構築は技術的な面もありますが極めて政治的な環境で行われます。「現地社会に害を及ぼさない援助活動(Do No Harm)」が叫ばれて長いですが、政治的力学が蔓延する中、また様々な制約の中で(政府のキャパシティ、社会・経済インフラ・サービスの欠如、 情報・統計の欠如)平和構築支援を実施するのは実は簡単ではありません。例えばダルフールでは土地所有が文書化されておらず伝統的な土地所有制度が紛争要因の1つになっています。長年の避難も加わりどの土地が誰に所属するのか、土地計画の権限を誰が、どの組織が持っているのかを見極めるのは容易ではなりません。このような中、直接的な結果だけを期待して例えばある土地に学校建設を進めることですら、 その国、地域の全体的な制度・機能、支援の因果関係を把握しないままでは逆に次の紛争要因を作ってしまうことになりかねません。Do No Harmがお題目ではなく、支援が本当に長期的な観点から平和構築につながるのかどうか、1つひとつの支援が及ぼす影響を全体のシステムの中で因果関係を見据えて実施する必要があります。

最後に
平和構築、開発への関わり方はいろいろあると思います。私がUNDPの中で目指しているのは専門家(Practitioner)です。私の場合は現場で一緒に働いている人たちの顔が見えるところにいて一緒に学ぶことで少しでも開発専門家に近づけるのではないかと思っています。開発途上国の最初の勤務地・アフガニスタンに勤務した際に気付いたのは、平和構築を含めた開発は実は人の人生を左右する影響を多々持っているということです。コンセプト上良い案件も国のコンテクスト、実施の仕方で成果も変わります。自分が携わっている支援の先には1人ひとりの人生、生活があることを認識した上で、彼女、彼らの長期的な可能性拡大につながることが出来ればと願いこの仕事を続けています。

* 出典はこちらこちら
** 出典はこちら
*** 出典はこちら

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児玉千佳子(こだま・ちかこ)

UNDP スーダン事務所平和構復興チーム、プログラムスペシャリスト。外務省勤務を経て、2005年にJPO(Junior Professional Officer)としてパレスチナ人支援プログラム(PAPP/UNDP)で勤務。UNDPニューヨーク本部開発政策部、ラオス事務所を経て、2012年より現職に至る。筑波大学卒。カールトン大学ノーマンパターソン国際関係スクール国際関係学修士。

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