第26回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 UNDPカンボジア事務所 斎藤紋衣子さん

 カンボジア、REED+パイロットプロジェクトサイトの現地視察をする斎藤さん=写真右端= 2013年7月撮影

2014年8月26日

みなさん、初めまして。国連開発計画(UNDP)カンボジア事務所に勤務するJPO2年目の斎藤紋衣子と申します。同事務所では、気候変動緩和政策の1つである、REDD+(レッドプラス)*というプロジェクトにプログラムアナリストとして従事しています。今回は、REDD+および日々の業務についてご紹介いたします。

気候変動とREDD+
近年、地球環境問題は、国や地域をまたぐ国際問題となっています。特に地球温暖化の影響は、多くの国や地域で多発する大規模なハリケーンや台風、洪水や砂漠化などの災害に見られるように 年々その深刻さを増し、一刻も早い緩和策が国際社会の急務となっています。

しかしながら、これまでの京都議定書会議や締約国会議などの国際交渉にも見られるように、 いかに具体的な目標を立て緩和対策を取っていくべきかについて、各国間の意見対立が続き、 行き詰まりの様相を見せています。一方、交渉項目に上がっている主要セクターの中で、比較的進展を見せているのが、REDD+です。REDD+とは、近年、地球温暖化の緩和対策として新しく導入された森林政策で、先進国からの資金支援をベースに発展途上国の森林減少・荒廃を少しでも抑えることによって、温室効果ガス排出量の削減を図ることを目的としています。

カンボジアでのREDD+の仕事
私は、2013年4月から現職に就き、UN-REDDForest Carbon Partnership Facility(FCPF) というREDD+を支援するプロジェクトを担当しています。UN-REDDはUNDP、国連環境計画(UNEP)、国連食糧農業機関(FAO)の共同REDD+イニシアティブ、FCPF は世界銀行のREDD+イニシアティブです。どちらのイニシアティブへも、日本政府は資金拠出をしています。カンボジアでは、世界銀行の代行機関としてUNDPが選ばれたため、UNDPがFCPFプロジェクトを実施しています。

カンボジアは、全国土の約57%が森林で、緑の豊かな国として知られています。しかしながら、近年の高度経済成長に伴い、森林資源(木材)への需要が増している上、森林の農地転換が進み、森林面積が急激に減少しています。カンボジア政府は、近年、REDD+イニシアティブを主要な政策として掲げ、これ以上の森林減少を食い止め、森林や森林に生息する生物の多様性を保全していくことを明言しています。

プログラムアナリストである私の主な任務は、これらのREDD+プロジェクトが計画通りに進むよう随時モニタリングを行い、プロジェクトの目的である、「REDD+を実施する際に必要となる政策の枠組み作り」を2016年までに最終的に達成することです。その目的を達成するには国家レベルのREDD+政策を実現しなければなりません。そのためには、まず、政策を決定する組織、政策提言を行う有識者グループ、それから市民の声を反映するためのメカニズムなど政策的な枠組み作りが必要です。カンボジアでは、2014年の1月にはこの枠組み作りができました。

次の重要なステップとして、政策を実施する際に必要となる具体的な政策案とモニタリングシステムの整備が挙げられます。例えば、森林減少、荒廃の原因を特定し、その原因に対処するための効果的な政策を提案しなければなりません。また、森林部門における現存の温室効果ガス排出量と比較して、どれだけ温室効果ガスを削減できたかを算出するために、国際標準に合ったモニタリング、情報システムのインフラ整備をする必要もあります。更に、カンボジアが温室効果ガス削減量に従って、資金を受け取った場合に、その資金をどのように各関係者に配分するのかについて、政策決定をしなければなりません。また、REDD+政策の実施によって、森林資源に依存している現地の人たちの生活、既存の生物の多様性に悪影響が出ないように、セーフガードを確立する必要もあります。それは長年森林資源に依存して生活をしてきた先住民や貧しい人々の多くは森林所有権を持たず、REDD+の導入による森林保全のために、これらの人々が森林地域から排除されてしまう恐れがあるからです。REDD+下で自然林が人工的な植林に転換した場合、自然林に生存していた、動物や植物の多くが失われてしまう懸念もあります。

カンボジアでは、上記に挙げた政策とモニタリングシステムの整備が進行中で、同国政府は、2016年までREDD+政策を実現することを目標にしています。私はこの中で、自身の博士課程およびポスドク時代に得たREDD+および森林政策に関する専門知識と、インド、ネパール、インドネシアで行ったフィールド経験を元に、資金分配メカニズムおよび、セーフガードの設立に関して技術支援、政策提言を行っています。

また、カンボジアのREDD+イニシアティブには、 カンボジアの農林水産省、環境省などの政府機関だけでなく、UNDP、UNEP、FAO、世界銀行、および日本政府や国際協力機構(JICA)、アメリカ合衆国国際開発庁(USAIDS)などの援助機関が資金援助や技術提供をしています。また、多くのNGOなど市民団体も政策提言やパイロットプロジェクトに関わっており、多様なステークホルダーが存在します。日々の業務では、10人以上のカンボジア人のREDD+チームと政策整備へ向けて一緒に働きながら、これらの各省庁、援助機関や市民団体との緊密な連携を保持、促進するためのコーディネートも務めています。

一方、前述したように、REDD+政策を打ち出し、効果的に実施するためには、多くの課題が残されているのも事実です。更に、カンボジアは、経済発展と自然保全の政策目的をどのように調和させ、持続的な発展を遂げることができるのか、大きな課題に直面しています。JPO任期中に、これらの難題を乗り越え、地域住民の生活を向上させられるような、持続的な森林保全に少しでも貢献をしたいと願っています。

カンボジアにお越しの際は、どうぞお声をおかけください。

*REDD: Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation

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斎藤紋衣子Moeko Saito-Jensen

2003年から2005年まで世界銀行の森林チーム勤務。2007年から2008年まで、JICAの客員研究員として、インドの参加型森林政策の効果を分析。2009年から2013年まで、デンマーク政府の奨学金を得て、インドネシア、ネパールでREDD+ に関するポスドク研究を実施。住民参加型の自然管理政策の課題と可能性についての学術論文を6本、World Developmentなどの国際ジャーナルに掲載中。

慶應義塾大経済学部卒(2001年)。アメリカのDUKE大学、環境政策修士号(2003年)。デンマーク、コペンハーゲン大学、森林政策博士号(2009年)。

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