第28回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 エチオピア事務所 野口義明さん

 エチオピア国ハラール州でプログラムスタッフと共に伝統的家屋を訪れる野口さん


2014年10月29日

はじめまして。2013年4月から、国連開発計画(UNDP)エチオピア事務所でJPOとして勤務する野口義明と申します。今回のリレーエッセイではエチオピアでの担当プロジェクトや自身の役割、またこれまでのキャリアについて紹介させていただきます。

起業家開発プログラム
私はエチオピア事務所内では経済開発・貧困削減ユニットに所属し、起業家開発プログラム(Entrepreneurship Development Programme, EDP)と呼ばれるプログラムを担当しています。同プログラムは、エチオピア国内の起業家精神を高め、中小企業の設立と成長を促す為に同国政府がUNDPの支援を受け開始したもので、2012年から2016年まで実施予定です。プログラムの主な要素は、起業に関する関連機関の能力を強化する事、研修によって起業家を育てる事、研修を受けた起業家が設立した企業に支援サービスをする事、そして政策や企業の資金調達環境を改善する事などです。プログラム予算は全体で約2600万ドルで、UNDPとカナダ政府がそれぞれ約600万ドルの拠出を確約しており、残りの1400万ドルは資金調達の調整中です。またプログラム実施の担い手として起業家開発センター(Entrepreneurship Development Center, EDC)が設立されています。対象地域は、企業がほとんど存在しない一部州を除く、ほぼエチオピア全土で、既に現在までに8000人以上の起業家が研修を受け、1000社以上が支援サービスを受けています。

私の役割は、UNDPおよび他の開発パートナーが拠出するプログラム予算を管理し、プログラムによって得られる結果の質を監督する事です。プログラムの直接的な活動はエチオピアの政府機関が行います。前述のように予算規模が大きく活動の内容も多岐に渡る為、私がやるべき事も多く日々忙しく過ごしておりますが、プログラムの目的である起業家と中小企業の支援は非常に意義が大きいと思っています。

エチオピアの民間セクター
私は民間セクターの発展がどの国においても経済成長の主役であるという信念があり、特にエチオピアの民間セクターは立ち遅れているが故に世界でも有数の伸びしろがあると感じています。エチオピアは近年、世界でも有数の急速な経済成長を遂げている国として注目されていますが、それでもまだ経済レベルは低く、1人当たりの国内総生産(GDP)はアフリカでも最も低い国の一つです。この国の貧しさには様々な要因がありますが、その一つとして民間セクターが弱い事が挙げられます。民間企業の健全な競争の中で社会全体の生産性が向上し、また雇用創出という民間セクターの役割が十分に機能していません。実際、現在の大企業のほとんどが国営企業や国営から民営化された企業、またエチオピア特有の政党が運営する企業などで、中小企業が成長して大企業になったという例はほとんどありません。このように中小企業が活発でない理由の一つとして、成長志向の企業を作ろうとする国民の起業家精神が低い点が挙げられます。そこを開発する手段として、現在担当している起業家開発プログラムは意義深いものと感じます。

これまでのキャリア
民間セクターが国の経済発展の主役になるという私の確信は、自分のキャリアの中で積み重なってきたものです。私はかつて日本のメーカーに勤務し、海外駐在や工場勤務等を経験しました。この会社員生活の中で理屈を超えて理解した事は、生き残っていく会社はどこも利益を出していく為に日進月歩の努力を続けており、そうでなければ存続できないという事でした。競争において生じるそれらの企業努力が社会全体の生産性を高めて国全体の経済成長を導きます。政府など公的セクターの役割は、諸制度や社会インフラおよび教育や起業家精神を含めた知的インフラなどの公共財を提供して、競争環境を整える事にあるという考えにいたりました。

エチオピアは私にとって縁の深い国で、前述のメーカーを退職した後に、国際協力関係の職を初めて得たのもこの国でした。初めての職において担当した業務のひとつが、日本流の品質・生産性向上手法、いわゆる「カイゼン」をエチオピアに導入させる為のパイロット事業の立ち上げでした。その後、カイゼンはこの国の中で流行語のように有名になり、エチオピア政府は日本政府の協力の下にエチオピアカイゼン機構(Ethiopian KAIZEN Institute:EKI)を設立し、2014年1月の安倍首相のエチオピア訪問の際には、この機構がアフリカ初の「産業人材育成センター」として拡充される旨が首相から宣言されました。

日本とUNDPの連携
現在、私が担当している起業家支援と、前職で担当したカイゼンとは、異なる活動ではあるものの、民間セクターの発展を目指して中小企業を支援するという点では共通しています。その為、両者間に何らかの連携を持たせる事で双方の活動にとって前向きな効果が出るのではないかと考え、関係者と調整を現在行っています。またカイゼンに限らず、エチオピアは近年、日本企業の投資先としても関心が高まってきている為、私も微力ながら企業との協働や連携の機会等を作る手助けを出来たらと思っています。

―――――――――――――――――
野口義明(のぐち・よしあき)
UNDPエチオピア事務所 経済開発・貧困削減ユニット、プログラム・アナリスト。トヨタ自動車株式会社勤務、国際協力機構(JICA)エチオピア事務所勤務、JICAガーナ事務所勤務を経て、2013年より現職。早稲田大学政治経済学部卒。ボンド大学経営学修士(MBA)。政策研究大学院大学・国際開発学修士。

UNDP Around the world

You are at UNDP Tokyo 代表事務所
Go to UNDPグローバル