第3回UNDP邦人職員リレーエッセイ 「開発現場から」 UNDP本部政策局環境エネルギー部 隈元美穂子さん

 隈元美穂子さん


2012年1月31日

国連開発計画(UNDP)本部政策局環境エネルギー部の隈元です。2001年から2012年の現在まで、UNDPで勤務をしております。最初の2年はハノイに在住し、UNDPのベトナム国事務所の環境ユニットのプログラムオフィサーとして、エネルギー、気候変動、オゾン層破壊物質、森林保存、有機性化学物質管理といった、様々な環境問題のプロジェクトを担当しました。2003年からはニューヨークにあるUNDP本部の政策局に勤務し、主に気候変動の適応の仕事に従事しています。2011年には3か月太平洋のサモアに出向し、UNDPサモア事務所の環境・災害ユニット長として勤務しました。

気候変動と開発
気候変動は、人類がかかえる緊急かつ複雑な問題として脚光を浴びています。気候変動の原因である温暖化ガスは発電、交通、農業といった様々な経済活動から生み出されるもので、その大半は先進国から発生したものです。しかし、地球はひとつ、大気もひとつ。温暖化ガスは発生元に関係なく、地球全体に影響を及ぼします。温暖化の具体的影響として挙げられるのが、気温の上昇、降水量の変化(増加もしくは減少)、海面上昇、台風・サイクローン・旱魃といった異常気象の頻度とスケールの変化等があげられます。

気候変動の対策としては大きく2つあり、ひとつが気候変動の原因である温暖化ガスを削減する「緩和策」と、もうひとつが既に変化する気候に対してどのように適切に対応していったらよいかを見る「適応策」があります。気候変動を最小限に食い止めるために緩和策は必要不可欠です。その一方、既に大気に出てしまっている温暖化ガスにより気候は変化しており、緩和策もどこまで有効に実施されるか不透明といった現状で、適応策を進めていくことも必要です。よって、国は緩和策と適応策の双方を進めていく必要性があるのですが、発展途上国、特に後進国の場合、先進国に比べると経済活動が小さく、温暖化ガスの発生量が小さいため、適応策が中心となっています。

適応は新しい観念という意識がありますが、実際は新しいものではありません。というのは、気候というのは、長い歴史の中で一定ということはなく、常に変化しており、人類は今まで変化し続ける気候に、様々な方法を使って対応してきました。例えば、日本は台風といった異常気象と常に向き合い、災害対策を通して対応してきました。では気候変動により今までと何が変わるかというと、気温、降水量の平均値が変化していくのと、異常気象の頻度、スケールが従来のパターンとは変わっていくので、今までどおりの方法では対応しきれない可能性がでてくるという点です。

気候変動と開発はあらゆる意味で密接につながっています。一つの具体例が農業です。気候変動の影響により、今までのパターンと異なった気候がやってくることになります。変化する気候の中で、農家の人々は従来と違う手法を導入し適応していかないと、収穫が難しくなるという事態が生まれてきます。新しい手法の導入の為には、情報へのアクセス、知識、金銭的余裕といったプラス要因が必要になるのですが、発展途上国の農家、特に貧困層の農家の人々にとっては、なかなか手に入らないものです。発展途上国の多くの人口、特に貧困層は、農業や森林源に依存しながら生活をしています。そういった人々は気候変動によって更に厳しい生活を強いられる。つまり気候変動は現在社会の格差を広げる要素を持っているのです。

日本とUNDPのパートナーシップ
日本とUNDPは、アフリカでの適応策を助成する為に、「アフリカ適応プログラム(AAP)」を発足しました。このプログラムは第4回アフリカ開発会議の下で作られた「日本・UNDPアフリカ気候変動パートナーシップ」から生まれ、9200万米ドルの予算でアフリカ20か国を対象に様々な技術支援を実施しています。

アフリカは貧困層が多く、農業、森林、漁業といった気候に影響を受けやすい産業に依存しており、気候変動の影響を大きく受けると想定されている地域のひとつです。アフリカ適応プログラムでは、対象国20か国に対して、主に6分野にて支援を行っています。

  • データ(気象過去データ、将来予測、リスク想定、災害情報ネットワーク等)の質とアクセスの向上

  • 行政(行動計画書、体制、職員の能力向上)の準備態勢の向上

  • 現場での様々な適応策の実施(例:品種向上、雨水収穫システム、水質管理システム、植林による沿岸対策強化等)

  • 気候変動に対するファイナンスメカニズムの導入(例:小規模保険)

  • ジャーナリスト(テレビ、新聞、ラジオ等)を対象にした気候変動研修による啓発活動

  • 20か国間でのワークショップ、インターネット等を通じての情報、知識の共有


COP17(南アフリカ・ダーバン)
気候変動枠組み条約の下で、加盟国が毎年一回集まり、気候変動の様々な問題に関して議論を行うCOP(Conference of Parties)会議があります。2011年12月には、第17回COP会議が南アフリカのダーバンで行われました。アフリカ適応プログラムはCOPにて様々な活動を実施しましたが、その目玉がNGOや市民団体と協力して行った「Youth Caravan(次世代のリーダーによる啓発活動)」です。150名の次世代のリーダーが参加したこの活動は、バスツアーにて、ケニアからタンザニア、マラウィ、ザンビア、ボツワナを周り、各国にて積極的な啓発活動を実施し、最終地点の第17回COP会場の南アフリカ・ダーバンに到着しました。アフリカ適応プログラムは5名の若手ジャーナリストのこの活動への参加を支援しました。このツアーを通じて、気候変動に対して4万人以上の署名が集まり、若手ジャーナリストは経験を生かし、様々な記事やラジオ・テレビインタビューを作り上げました。

今後の対策
世界各国でアフリカ適応プログラムを含む様々な適応活動、又緩和活動が実施されています。しかし、気候変動は広範囲に広がっており、多様な影響を与えており、更なる活動が必要とされています。気候変動の影響を直に受けるのは、発展途上国、特に貧困層であり、彼らへの支援はこれからも今まで以上に必要とされています。UNDPはこれからも維持可能な開発と為に、発展途上国の支援をこれまで以上に継続していく予定です。

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隈元美穂子(くまもと みほこ)

1969年生まれ。福岡筑紫丘高校卒業。米国ウェストバージニア大学にて心理学学士取得。コロンビア大学にて開発経済の修士号取得。現在京都大学地球環境学堂にて博士課程中。1993年-1999年九州電力株式会社勤務。2001年-2003年UNDPベトナム事務所勤務。2003年から現在までUNDP本部政策局環境エネルギー部にて適応テクニカルアドバイザーとして勤務。

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