UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」第31回 UNDPウガンダ事務所 長友留奈さん

 プロジェクトのフィールドモニタリングの一環で、農業協同組合を視察する筆者


2015年4月23日


国連開発計画(UNDP)ウガンダ事務所の長友留奈と申します。2013年4月にJPOとして勤務を開始し、経済開発・貧困削減ユニットでプログラムアナリストを務めています。

学生の頃より市場ベースの開発アプローチに関心があり、大学院卒業後はマイクロファイナンスを専門とする国際NGOにて、アジア各国のマイクロファイナンス事業に従事しました。UNDPに転職後は、マイクロファイナンスに代表されるソーシャルビジネスより少しコンセプトの枠の大きい、インクルーシブビジネス事業に取り組んでいます。

インクルーシブビジネスとは、UNDPの民間連携の取り組みの一つで、 民間セクターと共に、貧困層を、従業員・生産者・経営者としてバリュー・ チェーンに取り込む試みのことです 。私の所属するユニットでは、農業と観光セクターでインクルーシブビジネスを促進しています。

ウガンダは気候に恵まれ土地も肥沃で農業に大変適していると言われています。南スーダン、コンゴ民主共和国、ルワンダ、タンザニア、ケニアと国境を共有しているため、東アフリカの食糧バスケットとしての可能性も期待されています。人口の約80%が農業に従事していることもあり、農業はウガンダにとって大変重要な産業です。しかし、農業生産性は世界平均の半分から3分の1ほどで、課題が多いのも現状です。

例えば、農業投入物市場の規制が弱いことから、偽物の肥料や種が出回っており、零細農家は肥料や高収量品種に投資をしたがりません。また、投入物を購入したくとも、購入する資本がないという問題にも直面します。農業の技術もまだまだ低く、日本では農業の経験がなくとも均等間隔に種を植えるくらいの知識はありますが、ウガンダではそれでさえ一般的な知識ではありません。従って、高品質の農作物を量産することが難しく、より大きな市場へのアクセスが阻まれ、地元の小さな市場や道端で農作物を売って生計をたてているのが現状です。これでは、なかなか貧困から抜け出すことが難しいのがお分かりいただけると思います。

UNDPでは、零細農家が主体的に参加できるような包摂的な市場を開発するために、農業のバリュー・チェーンの強化を支援しています。農業投入物、金融サービス、農業技術、協同組合の強化、市場の情報、市場へのアクセス等、バリュー・チェーンを総合的に支援することによって、零細農家の生活水準の向上に貢献しています。支援の結果、裨益者の農業生産性が2〜3倍に増え 、協同組合の機能を通して地元の市場での農作物販売からより大きな市場へ農作物を販売できるようになりました。零細農家の生活状況にも変化がみられ、農家からは子どもの学費が払えるようになった、食事を三食取れるようになり肉類を食べる頻度が増えた、等の声が聞かれるようになりました。

さて、話はウガンダの観光産業に移ります。ウガンダは、野生のゴリラトレッキング、サファリ、野鳥観察、ナイル川のラフティング、世界でも稀な植物生態系を有するルウェンゾリ山等、ケニアやタンザニアに引けをとらない観光資源があります。観光産業の国家経済への貢献度も大きく、2014年には国内総生産(GDP)の8%を占めました。しかし、ウガンダの観光地としての知名度は低く、観光客を受け入れる体制も完全であるとは言えません。

そこで、UNDPでは、観光セクターの開発にむけ、観光政策の改定や基本計画作成の支援を行いました。また、観光省の職員の能力強化や民間組織が一つの声をもって政策提言ができるよう、民間セクターを統括する団体の立ち上げも支援しました。赴任当初は、政府と民間セクター間に留まらず政府内でも意見がぶつかりあい、観光セクターとしての意見がまとまらないといった状況でしたが、現在では観光セクターの主要な主体がそれぞれの組織の役割を互いに認識しあい、観光セクターが一体となって観光産業の開発に取り組み始めました。このような成果を受け、2014年には政府の観光セクターへの予算が増加され、世界銀行等他のドナーも観光セクターの支援をはじめました。

UNDPで働くことの醍醐味は、国連の中立性と招集力を活かして発展途上国の国づくりに貢献できることだと実感しています。国家の能力強化支援は時間のかかる地道な取り組みではありますが、カウンターパート政府の姿勢や方向性に変化の兆しが見え、当該セクターの展望が開けることに大変やりがいを感じています。

UNDPウガンダでは、2016年から始まる国家開発計画作成の支援も行っています。今年は新しい国家開発計画にあわせてUNDPウガンダの5か年計画を作成する重要な時期でもあります。 環境と持続可能な開発及び民主的ガバナンスの二つの重点分野で、新たな民間連携の形を提案するべく意気込んでいます。

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長友留奈(ながとも・るな)
UNDPウガンダ事務所 経済開発・貧困削減ユニット、プログラムアナリスト

慶應義塾大学経済学部卒業後、オハイオ大学大学院にて経済学修士号と国際関係学修士号を取得。国際NGO勤務を経て、2013年より現職。