第6回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 UNDPハイチ事務所 平川敦子さん

 UNDPハイチ事務所、ガバナンス・ユニットの同僚と平川さん(左)

2012年4月27日

こんにちは。国連開発計画(UNDP)ハイチ事務所の平川敦子です。私は2010年1月12日にハイチ地震が発生した際から、ハイチの復興支援に携わることを望んでいました。その当時はアフガニスタンに選挙支援アドバイザーとして復帰する辞令を受けていましたが、その任務完了後、NGOによる緊急・復興支援の研修、仏語習得のためのフランス留学等を経て、2011年8月からUNDPハイチ事務所で勤務しています。

UNDPハイチ事務所では300人以上の職員が、5つの重点分野―1)復興・生計・貧困削減 2)民主的ガバナンス・法の支配 3)環境保護 4)危機・災害軽減 5)HIV/エイズ・結核の対策―を軸に働いています。私はガバナンス・ユニットに所属し、着任後は日本政府が拠出するUNDPのバスケットファンドで実施された選挙支援プロジェクトの終結作業を、2011年12月から現在まではハイチ総理府内部での再建・住宅部署の設立を支援するプロジェクト管理を担当しています。

ハイチの再建・住宅の現状
ハイチ地震では20万人の死者、150万人の避難民、そして30万の建物損傷・完全破壊という被害をもたらしました。地震直後の素早い人道支援介入にも関わらず、2年経ったいまでも、55万人がテント生活をしています。本来あるべき建設技術や耐震規定を欠いていたハイチの住宅セクターは、この震災で大きな打撃を受け、住宅の脆弱性はさらに重大な問題となりました。震災を機に、長期的な住宅に関する国家政策の必要性が明らかになり、ハイチ政府は総理府内部に住宅・公共建物建設部署(UCLBP: Unite de Construction de Logements et des Batiments Publics)を2011年11月に設立し、UNDPはこの部署がうまく機能するように立ち上げ段階から支援をしています。

UCLBPの主な役割は、再建活動を調整・管理し、住宅に関する国家政策を実施する事です。UNDPハイチ事務所の、1)ガバナンス 2)復興・貧困削減 3)危機・災害軽減の3つのユニットがこの支援に携わっています。ガバナンス・ユニットは、組織の管理・キャパシテイビルデイング(能力強化)において、貧困削減・復興ユニットは避難民の復帰・エンパワーメントを目指す活動との連携を通じた技術支援において、危機・災害軽減ユニットは環境保護及び危機・災害防止の要素を政策に取り込む技術支援をしています。

UCLBPの3つの構成要素
UCLBPの1つ目の構成要素は、行政機関の中心であるシャン・ドウ・マース区において省庁・公共機関となる複合建物及び公衆建物の再建をする事です。最高裁判所、省庁、研究室や美術館等44の公共建物が再建の対象となっています。大統領府が地震から2年経った今でも再建されていないのは、国民の住宅再建が優先であるからです。2つ目は住宅の再建及び都市開発計画の活動を調整・管理する事です。3つ目は低所得者層のための住宅の拡大、民営住宅の建設、不動産市場の促進等を優先とした国家政策を考え実行する事です。

UCLBPが優先する住宅プロジェクトの例
ハイチの首都・ポルトープランスの北部にあるゾランジェでは、経済財務省の経済社会支援基金(FAES: Fond d’Assistance Economique et Sociale)の活動により低所得者層の被災者の生活改善を目指し、400戸の住居が建設されました。また、モーナカブリでは政府の基金により被災者を対象とした1200戸の住居が建設されています。これらの住宅の対象者を選択する基準を作り、また、住宅建設だけでなくコミュニテイの発展に必要不可欠な学校、病院、交通機関等を考慮した包括的な戦略を作るのもUCLBPの重要な課題です。

UNDPと他の国連機関(ILO、IOM、UNOPS)の支援によりFAESが実施している16/6というプロジェクトは6つの避難民キャンプ(計5239世帯)を閉鎖し16のコミュニテイを再構築する事を目的としています。私が着任した昨年8月当時はポルトープランスの象徴的なボワイエ広場、サンピエトロ広場は避難民テントで埋まっていましたが、それから半年後、この広場を含む5つの避難民キャンプは完全に閉鎖されました。避難民が帰還したコミュニテイでの課題の1つは収入及び雇用へのアクセスを拡大する事であり、女性のエンパワーメントを目指した所得創出活動の支援も実施されています。また、受益者のプライオリテイーをコミュニテイ開発計画に取り入れる為のプラットホームが設立されました。

UNDPのプロジェクト「カルメン(CARMEN: Centre d’Appui pour le Renforcement de Maisons Endommagees)」は補助金を利用した住居の自己建設(auto-construction)を支援します。5000人を対象とし、家の修復、資材の見分け方、交渉術等の研修を受け、損傷した家をカルメンのエンジニアスタッフが調査した後、1000人の対象者(世帯主)が500米ドルの補助金を自費で補い家を修復します。このプロジェクトは受益者に付き添い、共に再建する事を目的としています。

これからの課題
UNDPはこれまで、UCLBP主要職員の採用、日常業務の管理、優先すべき再建活動の検討、住宅・再建のプロジェクト文書や研究資料の収集を支援し、UNDPの南・南協力のスキームとしてチリ、エルサルバドルの住宅・都市開発計画省へ低所得層住宅の知識を得るためのスタデイー・ミッションを実施しました。今後はカルメンや16/6等のプロジェクトの経験により得た知識、専門性をUCLBPに取り入れていく事がUNDPの課題の1つです。またUCLBPの課題は、任務を明確にし、新しい組織として認識・正当性を得る事、そして住宅・再建活動を引っ張っていく事です。UNDPは世界銀行を始めとする国際機関及びNGOパートナーと連携し、低所得層住宅の対象者を選択する基準、受益者・民間企業を低所得層住宅開発のアクターとして取り込むための戦略、ハイチに適した永続性のある公共政策を作る過程においてUCLBPを支援していきます。

私がハイチに着任して8か月以上経ちますが、雨期が近づき、雨で生じる洪水、ごみの山、大渋滞、インフラの質の低さを目の当たりにし、ハイチの再建は長い道のりだと実感します。また長年続く国内政情不安、国連による介入、度重なる自然災害に対して国民は苦念を隠せません。しかし避難民キャンプの閉鎖、受益者による家の修復等の活動からは希望が湧き、郊外のハイチの美しい自然を発見する度に観光業の大きな可能性も見えてきます。私はアフリカとラテンアメリカが混合された独特の文化を持ち、生活の中に常に音楽が有り、過酷な状況でもエネルギーを持ち続けるハイチ国民が好きです。自分が今までの国際支援活動を通じて常に大事にしてきたものは現地の人々との信頼関係、個人や組織の能力や責任感向上の発見、また素晴らしい国連の上司や同僚との出会いです。ハイチでもこの価値観を大事にし、同じ被災国である日本の国民である事を意識し自分に何ができるかを常に考え、ハイチ国民の生活改善と自立を目指して支援活動を続けたいと思います。


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平川敦子 (ひらかわ あつこ)
Programme Analyst
ガバナンス・ユニット
UNDPハイチ事務所

横浜市生まれ。米国バルーク大学卒業(政治学・国際関係選考)。英国サセックス大学・開発学研究所でガバナンスと開発の修士号を取得。国連本部広報局・平和維持活動局、UNHCRタンザニア事務所(1972年ブルンジ難民保護支援)、UNDPシエラレオネ事務所・アフガニスタン事務所(選挙支援)、UNDP東京事務所(MDGsフォローアップ会合サイドイベント(MDGsとビジネス))での勤務を経て、2011年8月からUNDPハイチ事務所に勤務。ガバナンス・ユニットにおいて選挙支援および再建と住宅のプロジェクトを担当。ポルトープランス在住。 

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