第7回UNDP邦人職員リレーエッセイ「開発現場から」 UNDPアジア太平洋地域事務所 古澤智子さん

 モントリオール議定書第23回締約国会合 の 夕食会。右端が古澤さん。2011年11月、バリ

2012年5月31日

国連開発計画(UNDP)アジア太平洋地域事務所、モントリオール議定書チームの古澤です。現在、同チームのプログラムスペシャリストとして、アジア各国のUNDP国事務所や環境省に対し、オゾン破壊物質(ODS: Ozone Depleting Substances)や残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)関係プロジェクトの管理、案件形成、資金調達などのアドバイスとサポートをしています。

現職の前は、UNDP本部・資金パートナーシップ局で約2年間、日本政府基金プロジェクトの運営、管理のアシスタント、その後、UNDPガーナ事務所の環境チームで3年間、エネルギー、気候変動、災害対策、森林保護等の環境プロジェクトの運営、管理を担当しました。

UNDP本部では、UNDP全体の中長期計画、政策作成をし、かつ国連本部、各国の国連代表部、他の国連機関本部とも近い距離で仕事をします。それ故、本部の意思決定プロセスなどを見る機会もあり、長期的な幅広い視野で仕事をすることができました。

ガーナ事務所では、常にガーナ政府の担当者、プロジェクトの裨益者と話をし、プロジェクトを見る機会があったので、「どういう問題があり、どういうことができるのか」が明確になりました。また、UNDP本部では当然と考えていたこと(電気、水、インターネット、スキャナーなどの利用)が、そうではないということが多々あり、途上国の課題を理解する上でもとても貴重な経験となりました。職員数が限られていたため、環境プロジェクト以外にも、事務所の資産管理、事務所全体の年間計画作成やモニタリング、評価、他の国連事務所との提携会議出席など様々な業務にも携わりました。

現在の地域事務所は、UNDPのアジア太平洋にある24の国事務所をサポートするのが主な任務です。本部と国事務所との間で、中長期的な視野を保ちつつ、現場の進捗を見聞きすることができるので、また違った面白い経験です。バンコクは利便性が良く、多くの会議が開催され、出張者もアジア各国へ行く際にバンコクに立ち寄ることが多いので、情報も得やすく、ネットワークも広がりやすいです。

現在関わるオゾン破壊物質(ODS) は、HCFCs(ハイドロクロロフルオロカーボン)と言う、エアコン、冷蔵庫、カーエアコンなどに使用されている冷媒で、オゾン層を破壊し、地球温暖化にも加担しています。モントリオール議定書の下、先進国では2020年までに、途上国では2030年までに、HCFCsの製造、輸出入の停止が合意されています。HCFCsの代替は、HFC32や プロパン(炭化水素) などがあり、オゾン層を破壊せず、地球温暖化係数(二酸化炭素を基準(=1)とした時の各物質の温暖化をもたらす程度を示す数値)も少なく、それらの代替品によりエネルギー効率も向上することから、地球温暖化軽減へも貢献します。これらには、モントリオール議定書・多数国間基金(日本がアメリカに次ぐ第2のドナー、年間約2,000万-3,000万米ドル拠出)から資金を得て、プロジェクトを運営しています。

ミレニアム開発目標の目標7に、ODS使用の削減が含まれており、モントリオール議定書の下で、着実にODSの削減を実現してきました。また、今年は議定書採択25周年で、9月16日の国際オゾンデーには、各国で多くのイベントが予定されています。

残留性有機汚染物質 (POPs)は、人や生物への毒性が高く、地球上を長距離移動する、農薬やプラスチック難燃剤、非意図的に生成する化学物質などで、PCB, DDT, ダイオキシン、PBDE等、現在22のPOPs が、ストックホルム条約の下、製造、使用、排出が規制されています。モントリオール議定書とは違い、不遵守への対応が策定されておらず、暫定的資金源である地球環境ファシリティ(GEF, 日本がアメリカに次ぐ第2のドナー、年間約1億米ドル拠出)の割当て以上の資金が必要とされており、特に途上国では対策が緊要となっています。

こうした背景から、UNDPは、各国でHCFC 削減計画(HPMP: HCFC Phase-Out Management Plan)や、POPs管理や削減のための政策支援プロジェクトを実施しています。

UNDPと日本政府の連携事例としては、2011年6月にインドネシアHPMPの下、日本政府、インドネシア政府、ダイキン、パナソニックの間で、オゾン層を破壊せず温暖化係数の少ないHCFCの代替の製造、使用を進めていく事に合意しました。これは、インドネシアのHCFC削減の努力に大きく貢献し、また官民連携の良い例だと思います。

官民連携は、民間の資金、技術、リスクへの対処法、雇用創出など、今後の途上国の経済発展に不可欠な要素です。国連持続可能な開発会議(リオ+20) へ向けて、特にエネルギー資源の確保とエネルギーサービス向上には、官民連携を活用し、資金源や資金額を増やす必要がある、と強く言われています。環境や他の分野でも、日本の政府と民間が一体となって、途上国への支援、日本の技術や経験の共有に貢献することは可能であり、今後さらに必要であると思います。また、それが良いモデルとなり、途上国内でも官民連携とそのサービスが広がっていくと思います。

最後に、これまでの経験から、特にアジアは経済発展が進んでおり、現地政府や市民社会パートナーが経験豊富なので、今後は、資源を有効活用しつつ、自国でお金や物を生み出し、管理、増蓄し、国の必要な分野(環境、貧困格差解消など)に活用する仕組みを作ることが必要で、それが、包括的、持続可能な社会につながるであろうと感じています。それらの過程で、自分の仕事を通して貢献できればと思います。


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古澤智子 (ふるさわ ともこ)
プログラムスペシャリスト
モントリオール議定書チーム
UNDPアジア太平洋地域事務所

神戸市生まれ。シカゴ大学ハリス公共政策大学院で公共政策修士号 を取得。在トルコ日本大使館、 UNDP本部・資金パートナーシップ局 、UNDPガーナ事務所・環境チームの勤務を経て、2010年6月から現職。 

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