よくあるご質問:不平等調整済み人間開発指数(IHDI)とは

・不平等調整済み人間開発指数(IHDI)の目的はなにか?
人間開発指数(HDI)は、保健、教育、所得の3つの主要な側面における人間開発の国単位の平均達成度を表す指標である。平均値という性格上、一国内に存在する人間開発達成度の格差は反映されない。国内の人間開発達成度の格差が大きい国と小さい国のHDI値が同じという場合もありうる。不平等調整済み人間開発指数(IHDI)は、保健、教育、所得の3側面における人間開発の国単位の平均達成度だけでなく、国内における達成度の格差をも考慮に入れた指標である。具体的には、国内に存在する不平等の深刻さに応じて、それぞれの側面の指数を「割り引く」のである。

・世界全体、および地域別に見たIHDIの状況はどのようになっているのか?

不平等が原因でHDI値が割り引かれる割合は、世界平均で約23%となっている。この割合が最も小さいのはチェコの5%、最も多いのはナミビアの43.5%である。3側面全体の不平等によるHDI値の落ち込みが最も大きい地域は、サハラ以南アフリカで、その後に南アジア、アラブ諸国と続く。サハラ以南アフリカでは保健面での不平等が世界で最も大きく、南アジアとアラブ諸国では、教育面の不平等による値の落ち込みが甚だしい。ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、所得面の不平等による値の落ち込みが最も大きい地域である(その割合は39.3%)。

・世界で最も不平等な地域や国、最も平等な地域や国は、どこか?
概して、人間開発の達成度が低い国ほど、多次元の不平等が深刻で、それにともない、不平等が原因でHDI値がそこなわれる度合いも大きい。一方、先進国は、人間開発における不平等が最も小さい。東アジア・太平洋諸国は、IHDIに関して、とりわけ保健と教育の側面に関して好ましい成績を上げており、欧州・中央アジアの旧社会主義国は3つの側面全般で比較的平等性が高い。

・不平等が改善したり悪化したりすれば、IHDIに反映されるのか?
本報告書では、HDIの時系列変化を示すために、一貫した時系列データに基づいて過去の年度の値を計算し直しているが、IHDIに関してはそれをおこなっていない。その最大の理由は、IHDIの算出を始めて本年度で2年目になるが、多くの国の場合、教育と所得の不平等の状況を推計するために用いたデータがこの2年とも同一のものだからである。将来的には、IHDIの時系列変化を示すことが可能になるはずである。

・IHDIは、どのようにして算出するのか?
IHDIの算出方法は、Atkinson(1970)の一連の不平等指標をもとにFoster, Lopez-Calva, Szekely(2005)が提案した一連の分配感応的な総合指数を土台にしている。具体的には、不平等の度合いに応じて調整を加えた各側面の指数を相乗平均して算出する。それぞれの側面の不平等の度合いは、アトキンソン不平等指標によって推計する。アトキンソン不平等指標は、不平等に対する嫌悪が社会に一定レベル存在することを前提とする指標である(詳しくは、Alkire and Foster(2010)、および、2011年版人間開発報告書の「テクニカルノート2」を参照)。

・IHDIの算出に当たって用いたデータの出典は、なにか?
IHDI算出の土台となる所得/消費および就学年数のデータは、一般公開されている主要なデータベースから得ている。そのなかには、国際的な標準に合わせて調整を加えた国レベルの世帯調査結果も含まれる。具体的には、欧州連合(EU)統計局の所得・生活状況に関するEU調査、ルクセンブルク所得研究、世界銀行の国際所得分布データベース、国連児童基金(UNICEF)の複数指標クラスター調査(MICS)、米国国際開発局の人口保健調査(DHS)、世界保健機関(WHO)の世界保健調査(WHS)、国連大学の世界所得不平等データベースに依拠している。保健の側面に関しては、国連人口局の簡約版生命表のデータを用いた。

・IHDIの基準年はいつか?
2011年版のIHDIは、2011年を基準年とするHDIの各指数、および2000~2009年の世帯調査に基づく不平等指標、2010~2015年を基準年とする生命表のデータを用いている。その意味において、HDIの基準年をIHDIの基準年とすることが理にかなう。不平等調整済みの諸指数を本報告書の統計表に掲載していることを考えれば、その点はなおさらである。

・IHDIの値はどのように解釈すべきなのか?
HDIは、社会に不平等が存在しない場合に達成可能な人間開発の「潜在的な可能性」を示す指標であり、IHDIは、社会に実際に存在する不平等を考慮に入れた場合の人間開発の「現実の達成度」を示す指標であると言うことができる。社会に不平等がまったく存在しなけば、IHDIの値はHDIの値と等しいが、不平等が深刻であるほど、IHDIの値がHDIの値に比べて小さなっていく。不平等が原因で人間開発の潜在的な可能性がそこなわれている度合いは、HDIとIHDIの値の差(単位はパーセンテージ)で表現される。

・IHDIの限界はなにか?
IHDIは、HDIのさまざまな時限でどの程度の不平等が存在しているかを数値化する指標であるが、個々の次元間の関連性を描き出すことはできない。つまり、複数の次元における不平等がどの程度重なり合っているか、言い換えれば、同じ人がどの程度、異なった複数の貧困に苦しめられているかを明らかにすることができないのである。また、所得などの個別の指数の値がゼロだったり、マイナスだったりする場合は、計算の都合上、ゼロもしくはマイナスでない一律の値に修正せざるをえない。

・IHDIは政策に対してどのような意味をもつのか?
IHDIを参照することにより、人間開発の各側面に存在する不平等を数値の形で見て取ることができる。したがってIHDIは、不平等の改善を目指す政策を立案するうえで参考になるばかりか、不平等の改善を目的とする政策が実際にどのような影響をもたらすかを予測する手立てにもなりうる。

・IHDIのアプローチは、国レベルでも有用なものなのか?
IHDIとその構成指数は、国内にどの程度の不平等が存在するかについて、さらには、国内の不平等がHDI値をどの程度そこなっているかについて、各国政府が理解を深める役に立つ。

・IHDIの構成指数は、国レベルでそのまま活用できるのか?
現在の形のIHDIは、メキシコ人間開発報告書で取り入れられた同様の指数にヒントを得て考案されたものである。適切なデータさえ入手できれば、IHDIのアプローチは、一国内のさまざまな集団の不平等の水準を比較する目的でも利用することができる。国単位でこの手法を用いる場合は、それぞれの構成指数を割り出すに当たり、その国の実情に合った指標を用いてもよい。

・IHDIはグローバルな人間開発報告書で恒久的に掲載され続けるのか?

IHDIは、2010年版の人間開発報告書で、ジェンダー不平等指数(GII)および多次元貧困指数(MPI)とともに試験的に導入された指標である。今後は、寄せられる意見、さらにはデータの入手可能性を考慮して、改定・改善を加えていくことになる。

・出生時平均余命の不平等は、どのように評価するのか?
この指数が最も扱いにくい。平均余命は総計指標だからである。それでも、簡約版生命表のデータ(ほとんどの場合、5歳ごとの年齢層に区分して値を示している)をもとに不平等の度合いを推計しており、そこには、ある人は1歳未満で死ぬが、別のある人は75歳以降に死ぬというような、現在の死亡パターンの不平等が反映されている。言うまでもなく、これらの推計値の厳密性は、データの出典である生命表の値の厳密性を上回ることはありえない。

・IHDIには、どのような重要な特性があるのか?
この指標の重要な特性の1つは、「下位集団との一致性」である。つまり、もし社会の中のある集団で不平等が改善し、それ以外の人たちに関しては不平等の状況が変わらないとしても、その社会全体の不平等がいくらか改善したとみなされる。もう1つの重要な特性は、まずそれぞれの側面における不平等の度合いを計算したうえで、すべての側面を通じた不平等の度合いを割り出すという手順を取っていることである。その結果、この手法を用いることにより、異なる出典のデータを組み合わせてIHDIを算出することが可能となるのである。

・不平等の度合いを測定する方法として、ジニ係数では不十分なのか?ジニ係数とアトキンソン不平等指標の間には、どのような違いがあるのか?
ジニ係数は、所得、消費、ないし富の不平等を測定する手立てとして、広く用いられている。過去には、多次元の不平等を測定するために、ジニ係数を適用しようとした試みもある(Hicks, 1998)。その試みによって得られた指数は、アトキンソン不平等指標を用いたIHDIと異なり、下位集団との一致性に欠けるケースがあった。また、ジニ係数においては、指数の値が低い領域が強調されず、すべての領域に同等の比重が置かれる。

・IHDIは、HDIの各側面における不平等をすべて描き出すことができるのか?

そこまではできない。データに制約があるため、IHDIでは、異なるタイプの不平等がどの程度重なり合っているか、要するに、同じ人が何種類の不平等に直面しているのかを表すことができない。

・IHDIにおいては、所得面における不平等の度合いを測定するために、一部の国では世帯消費を基準に用い、別の一部の国では所得分布を基準に用いている。この両者のデータは比較可能なのか?
所得と消費という活動の性格の違いゆえに、この両者における不平等のレベルには必然的に違いがある。所得のほうが消費よりも不平等のレベルが高いのである。所得は、「資源を利用する能力」という概念に、より自然に対応するように思われる。異論もありうるが、消費のデータは、値が大きくても結果が歪むおそれが小さく、資源の変換を直接的に映し出すという点において、途上国において所得より正確である。また、所得のデータは、ゼロ、もしくはマイナスの値であるケースが消費の値より多いという点で、統計技術的な面で扱いづらい面もある。理想を言えば、不平等の度合いを推計するに当たって用いるデータを所得か消費のいずれかに一本化することが望ましいが、算出対象とする国の数を十分確保するためには、両方のデータを併用せざるをえない。所得のデータを用いるか、消費のデータを用いるかの違いは、最終的な推計値に若干の影響を及ぼす。

・教育における不平等は、どのようにして計算するのか?
教育の側面における不平等は、単純化するために、その国の状況を映し出すことができる世帯調査のデータに基づく、成人の平均就学年数の不平等のみを基準にして測定するものとした。

・成人の平均就学年数に加えて、子どもの就学予測年数も基準に加えると、結果は変わるのか?
子どもの就学予測年数は総計指標であり、その値の不平等は現在の就学率にも映し出されている。ただし、この2つの指標の間にはずれもある。現在の学齢世代の子どもの就学予測年数の不平等のほうが低くなるのである。したがって、子どもの就学予測年数を指標として取り入れれば、HDI値の不平等が全体として小さくなると予想できる。

・教育制度が国によって異なることを考えると、成人の平均就学年数の不平等を国家間で比較することは不可能でないのか?
成人の就学年数は主に、最終学歴を基準に判断する。具体的には、国連教育科学文化機関(UNESCO)の国別データをもとに、それぞれの国で教育の各段階を終えるまでに要求される就学年数を参照して、最終学歴のデータを年数の数字に換算する。初等、中等、および大学の学部レベルの過程を終えるまでに必要とされる年数は、国によって大きな違いがないのに対し、最も高い大学院修士課程と博士課程を終えるために要する年数は国によって違いが大きいが、HDIで不平等の度合いを割り出すために用いているアトキンソン不平等指標においては、きわめて高いレベルの領域が値に及ぼす影響は比較的小さい。

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