アラブ人間開発報告書2016

 


『アラブ人間開発報告書:変わりゆく世界における若者と人間開発の展望』

「アラブの春」と広く知られる2011年の政変から5年を経て発刊された本報告書は、近年アラブ諸国で起こった変革と同地域の若者が担った役割、またアラブ諸国の将来における若者の可能性について考察しており、開発における若者の参画の重要性を改めて訴えている。

2011年にアラブ地域で起こった激しい抗議活動は、アラブ諸国の公共政策が過去数十年に渡っていかに格差を広げてきたか、また、長年に渡り疎外されてきた人々がいかに変革を求めていたか、そして、彼らの社会運動が時のアラブ諸国の政府では抑えられないほどに膨らんでいた事を世界に知らしめた。また、従来の国家主導型の開発モデルによって、政治的・経済的エリートが自らの利益を守る構造を強め、経済的格差や汚職など、開発に対しても負の影響を与えてきたことが明らかになった。

人間開発指数(HDI)は、2010年までは全てのアラブ諸国において上昇傾向にあり、教育や健康という数値で大きな成果が見られた。しかし、2008-2009年の経済危機や2011年の政変が伴い、その成長は大幅に鈍化してしまった。また、アラブ諸国内の格差も拡大している。さらに、増加する武力紛争は市民を犠牲にするとともに、生産資源、資金や労働力を奪い、苦労して手に入れた経済成長を逆行させている。

域内人口3億7000万人を擁するアラブ諸国において若者人口(15-29歳)は約3割に当たり、さらに子供を含めた30歳未満の人口が約6割を占める。人口動態の観点から若者の重要性が増す一方で、彼らは依然として政治、社会、経済的な面で困難に直面している。就労機会や政治参加の弱さ、質の低い公共サービス、社会的多様性やジェンダー平等に対する概念など、旧態依然とした社会環境が若者のエンパワーメントを妨げている。

この様な環境下において、本報告書は開発促進と地域安定に向けた若者の社会参画、政治、社会、経済的な面で若者を中心に据えた政策の必要性を訴えており、それらの実現と若者のエンパワーメントに向けて、「若者志向型」の開発モデルを提唱し、彼らの能力強化と自己実現の機会拡大、平和と安全の達成における若者の役割強化(特に女性のエンパワーメント)の重要性を主張している。若者をアラブ諸国における「問題」としてではなく、課題解決に向けた「鍵」として位置づけ、アラブ諸国一体で開発に向けた取組を加速していく必要性を訴えている。

そして、アラブ諸国は、若者が健康・生産的で自立した善良な市民になれるような政策を早急に整備すれば、持続可能で安定的な成長が可能である、と本報告書は結論づけている。

ヘレン・クラークUNDP総裁(当時)は発刊にあたり、「若者の参画はアラブ諸国の持続可能な発展に不可欠であり、本報告書が若者を含めたステークホルダー間の議論を活発化させる事を期待している。UNDPはアラブ諸国の更なる繁栄にコミットしており、パートナー達との連携を続けていく」と述べている。

・アラブ人間開発報告書(英語)

・アラブ人間開発報告書(日本語)

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