世界で活躍する世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(13)中西宏晃さん(タイ)

 ユニタール広島事務所主催の核軍縮・不拡散に関する東南アジア諸国の若手外交官訓練プログラム(2015年6月8日~12日、広島)の講師を務める筆者


2015年6月22日

国連アジア太平洋平和軍縮センター(UNRCPD)で、2015年3月から国連ボランティアとしてアジア太平洋地域における大量破壊兵器の軍縮・不拡散問題を担当している中西宏晃と申します。

学生の頃より核軍縮の問題に関心があり、大学院ではその法的および政治的側面について専門性を深めました。事実上の〝核兵器国〟であるインドに留学するなどして幅広い知見を深めて参りました。一連の過程を経て感じたことは、軍縮・不拡散問題の複雑さで、困難な国際社会の課題の解決に向けて自分はどのように貢献することができるのかということでした。そういった思いが動機となり、国連ボランティアを志望しました。

UNRCPDは国連軍縮部(UNODA)の下部機関として、アジア太平洋地域における平和と軍縮の実現に向けた施策のためのイニシアティブやその他の活動への実質的な支援を加盟国の要請に応じて提供することを通じて、同地域の地域的な活動を調整する役割を担っています。とりわけ私は、大量破壊兵器の軍縮・不拡散に関する国際諸条約の署名・批准および履行の促進の支援、および大量破壊兵器テロ防止のための国内法の制定とその実効的な実施を求める国連安保理決議1540号の普遍的な履行の確保の支援要請を受けた加盟国に提供する実務を担当しています。実務において、UNRCPDが加盟国の要請やマンデートを受けた上で活動することが許されています。また、活動には加盟国からの任意の拠出金に大部分を依拠しているという事情もあり、それらの見えない壁に遭遇して歯がゆい思いを抱くことも少なくありません。

UNRCPDはアジア太平洋諸国の軍縮・安全保障に関する対話の促進を目的とし、ほぼ毎年日本の地方都市において開催される国連軍縮会議の運営を担っています。当該会議は国際条約や共同声明とった国際文書の採択を目的としたものではありませんが、その運営はUNRCPDが実施する活動の中でもっとも大規模なものであり、私がその担当を務めております。本年は被爆地である広島の地で本年8月26日から28日の3日間、国連軍縮会議が開催される予定です。とりわけ、本年は広島と長崎に原爆が投下されてから70年という国際の平和と安全にとって節目となる年です。

その一方で、今年4月には5年に1度開催される核不拡散条約(NPT)の運用再検討会議がニューヨークの国連本部において開催されましたが、残念ながら条約加盟国間の意見対立のため、次の5か年間の行動計画を記載した最終文書案が採択されませんでした。こういった国際情勢の中で、各国の政府高官や国際機関職員、学者、非政府機関職員といった、異なる利害や意見を持つ多様な主体が集まって核軍縮・不拡散の問題について率直に意見を交換し、今後の取り組みに向けた決意を新たにすることを目的とする国連軍縮会議を開催することは今後の核軍縮・不拡散問題にとって大変重要な機会となります。無論、被爆地である広島を通じて、核兵器を使用することによる非人道的な影響について理解を深めていただける国際的な契機となることも期待されています。

国連軍縮会議は他の政府間の国際会議や専門家を招いての国際ワークショップとは異なり、非政府・非営利組織によるイベントや高校生および大学生を主役とする学生会議を同時に開催するといったように市民目線の活動も重視しています。高齢の被爆者との若者とのふれあいといった点も重要な課題となっており、一連の活動を側面的であれ支援できる場となることも期待されています。責任重大な国際会議の運営を担当することにやりがいを感じながら日々その開催に向けた準備に邁進しています。

UNRCPDは他の国連組織が行う活動にも積極的に協力しています。例えば、6月8日から12日の5日間、広島に事務所を構えるユニタール(UNITAR)広島事務所の主催で開催された核軍縮・不拡散に関する東南アジア諸国の若手外交官訓練プログラムに講師として参画いたしました。ユニタールだけでなく広島県および広島市の被爆70周年事業からのご支援をいただいて、軍縮・不拡散の分野で今後の活躍が大いに期待される発展途上国の能力向上を目的とする訓練プログラムといったUNRCPDの目的や活動とも広く合致する国際的な活動に参画できたことは大変喜ばしいことです。私は偶然にも当センターの所長の代行として、アジア太平洋地域における非核兵器地帯のメカニズムや核兵器保有国による消極的安全保障(核兵器の不使用)の約束のあり方やそれらを巡る今後の課題や解決策についての講師を務めるという重大な役割があたえられましたが、これまでの私の知見を最大限に活かすことでプログラムに貢献することができました。招聘された若手外交官が私の年齢に近いという偶然も重なり、短い期間でありながらも非常に感慨深い交流の機会を持つこともできました。今後もこのような若手外交官を養成するプログラムが核軍縮・不拡散の分野に限らず日本でも盛んに開催されることを切に願っております。

国際機関で働くことの醍醐味は、日本人がほぼいないまさに国際的な環境の中で今まで培ってきた英語力と知識・経験を頼りに道を切り開いて更なる成長を遂げていけるということ、また、すぐには実現困難な国際社会の課題に対して小さいステップでありながらも将来に向けた大きな貢献につながっているという実感を持って日々の業務に邁進できるということではないでしょうか。

最後に、UNRCPDは2008年からネパールの首都カトマンズに拠点を置いて活動を実施してまいりました。本年4月25日に発生した大規模地震災害により同センターの建物も深刻な被害を受け、現在タイの首都バンコクに位置する国連アジア太平洋経済社会委員会にて活動を継続いたしております。ネパール政府のみならず現地の方々の温かいご支援をいただいてきた経緯もあり、この場を借りてご家族やご友人、また住居などを失った方々に深い哀悼の意を捧げるとともに、ネパールの早期復興を祈念いたします。

--------------------------------------
中西宏晃(なかにし・ひろあき)
UNODAアジア太平洋平和軍縮センター 平和、軍縮不拡散オフィサー

龍谷大学法学部卒業後、同大学大学院にて法律学修士号、ジャワハルラール・ネルー大学大学院国際学研究科(インド、デリー)にて国際学修士号を取得し、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科にて博士号(地域研究)を授与。2015年3月より現職。

UNDP Around the world

You are at UNDP Tokyo 代表事務所
Go to UNDPグローバル