世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(14)柏崎知子さん(フィジー)

 Nakera村の女性グループにREACHプロジェクトについて紹介するフィジー女性省のスタッフ(2015年7月2日撮影)。PHOTO:Tomoko Kashiwazaki


2015年10月23日

国連開発計画(UNDP)フィジー、マルチカントリーオフィス(Fiji MCO)で2013年から、国連ボランティアとしてアドボカシー・コミュニケーションの業務に従事しています。Fiji MCOは太平洋の島国10か国とともに、それぞれの重要課題に取り組んでいます。このなかで、災害復興、貧困対策、ガバナンスに関するプロジェクトにおいて、UNDPがどんな活動をし、どんな成果を挙げているかを広報するのが私の主な役割です。具体的には、UNDPのウェブサイトやソーシャルメディア、マスメディアを通じ、プロジェクトの成果やイベント、サクセスストーリー(成功事例)を発信していきます。各プロジェクトが推進するメッセージ、例えば、女性の権利とエンパワメントの促進、災害に備えた農業などを人々により効果的に伝えるために印刷物などの制作もします。

太平洋の10か国、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツは小島嶼開発途上国(SIDS)ならではの利点と課題があります。これを世界の人々に知っていただき、理解を深めていただくことと、類似の課題を持つ世界のほかの国々の取り組みを太平洋の人々に紹介することを特に念頭において発信しています。

フィジーは1970年の独立以来、政治クーデターを4度経験しました。2013年に民主政治へ向けて憲法が制定され、2014年9月の民主的選挙を経て国会が再開されました。フィジー社会は民族、宗教、ジェンダー、世代、居住地域などにおいて多様で、それに基づくガバナンスの仕組み、経済活動、生活様式も多様です。この多様性社会を受け入れ、個人の人権を擁護し、それぞれの集団が互いに尊重し合い、誰も不利益や差別を被ることなく、さらに民主的な社会を築こうという積極的な機運が感じられます。

REACH プロジェクト
日本政府の支援によるガバナンスのプロジェクトが今年6月にフィジーで始まりました。「全てのフィジー人の司法・ジェンダーに関する問題についての社会サービスへのアクセス改善計画(Rights, Empowerment and Cohesion for rural and urban Fijian:REACH)」 プロジェクト の目的は、法律、人権に関する相談、カウンセリング、その他政府の司法、行政サービスを受けるのが困難な状況にある人々がそれを享受できるよう多角的に支援をすることです。

司法、行政サービスへの平等なアクセスを妨げる要因には、貧困、地理的、交通、通信手段の不便さ、ジェンダー、世代、障がいの有無などによる格差、偏見や差別など様々です。幹線道路を外れ、車、馬、徒歩で何時間もかけて学校に通う子どもたち、限られた雇用機会のため収入のない若者、居住のための土地の賃貸条件が不安定な家族、伝統的なジェンダー観の中で差別や暴力について助けを求められない女性、男性、こういった状況にいる人々が権利として支援、サービスをより便利に受けられる必要があります。

なかでも、女性に対する暴力の問題は、フィジーをはじめ、太平洋諸国でその発生率が高く、女性の健康や政治参加を妨げているとの報告があります。あるNGOの調査によると、パートナーを持つ女性の72%が肉体的、性的、あるいは心理的な暴力をパートナーから受けたことがあることが明らかにされました。そのうち半数近くがそのことに関して誰にも話したことがなく、警察や医療機関などに助けを求めたのは24%にとどまります(The Fiji Women Crisis Centre, Somebody’s Life, Everybody’s Business, 2013)。

どのような機関が法的なサービスやカウンセリングを提供し、問題の解決にかかわるかというと、法律扶助委員会、コミュニティの伝統的な問題解決システム、NGOsによるカウンセリングサービス、大学の法学生による法律相談などがあります。

法律扶助委員会は低所得者層に刑法と家族法の分野でサービスを提供しますが、調査によると、刑事被告人で支援を受けたのは約半数にとどまります。伝統的なコミュニティシステムは公式の法的機関ではなく、慣習法が国の法律と矛盾する点があるかどうかの調査はされていないようです。特に、社会的弱者の司法制度や法律扶助の利用のニーズ、そのニーズが満たされているかの研究調査はあまり進んでいないとのことです。

REACH プロジェクトはこの状況に対応する政府とその他の機関や人々を支援するため、主に次の結果を目指します。

・移動法律・行政サービス(バス)の派遣によって中央のサービスから遠い地域の人々が、人権や法律に関する知識・情報を得て、カウンセリングや照会サービスを受けることができる
・女性省、法律扶助委員会、裁判官がジェンダーや人権について意識を高め、サービスの提供が改善される
・研究調査によって課題をより的確に把握し、法律作成に役立てる

現在プロジェクトチームは、フィジーで2番目に大きい島、バヌアレブを中心に、コミュニティを訪れプロジェクトの紹介をし、女性省とともに移動サービスの実現を進めているところです。

言葉、慣習、人々の意識、交通や通信手段、多様な状況に応じて、どのようなアプローチがもっとも有効か、どのようなコミュニケーションが人々に受け入れられ、理解されるかを、他国の成功例や実践から学びつつ、プロジェクトチームの1人として結果に貢献するべく働いています。

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国連開発計画(UNDP)フィジー、マルチカントリーオフィス
Communications and Advocacy Specialist
柏崎知子(かしわざき・ともこ)

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