世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(15) 阿部明子さん(スリランカ)

 UN フォーラムのスリランカ・スタディーツアー(2015年9月) (前列向かって右から2番目が筆者) PHOTO: UNDP Sri Lanka


2015年12月18日

スリランカにある国連常駐代表事務所(RCO)及び国連開発計画(UNDP)事務所にて、国連ボランティア・和解と開発支援担当官として、2015年から平和構築と開発に関する支援に従事しています。UNDPでは、主に和解と開発に資する新プログラム・プロジェクトの企画・調整・マネジメント及び資金調達やパートナーシップの提案について、またRCOでは、和解と開発に関連する政策及びメディア分析を担当しています。

2009年に30年近く続いた内戦が終結したスリランカにおいて、2015年はまさにめまぐるしい変化に富む1年となりました。1月には大統領選挙が実施され、新大統領の就任後、憲法改正案をはじめ、汚職防止や国会等の改革など次々と着手され、続いて8月には全国総選挙が実施されています。同総選挙は過去のどの選挙よりも平和的であったと内外の選挙監視団体も賞賛し、今後も新政権による様々な分野でのさらなる改革が期待されています。

着任早々、元々予定されていた業務内容には無かったものですが、その選挙監視の世界を垣間見ることができました。国連の代表の1人として各関係会議に参加し、各国からの外交官や現地NGO・研究機関の代表及び政務分析官、国連本部政務担当官等、同分野において第一線で活躍する専門家の方々の見解を見聞きし、分析及び報告を行っています。同国の抱える多様な課題と将来への期待について理解する機会を得たことは非常に有意義でした。国連として、同国の選挙監視支援を直接に実施することはありませんでしたが、そのような状況の中でも、現地のNGO関係者が内外の選挙監視団体と徐々に協調し合いながら、選挙の前後に、公平な選挙の実施について多くのボランティアを動員していました。自ら積極的な情報共有や必要な支援の調整を推進しようとする動きが広がり、最終的に現地の人々の手によって選挙が実現されたことに感銘を受けました。選挙中は、選挙法違反や選挙に関する暴力案件及び汚職案件等の地域別頻度について分析をする機会があり、全国にまたがる選挙監視ボランティア及び専門家のネットワークを駆使し平和的な選挙の実施を推進する現地NGOのネットワークとその活性化について見聞きしました。国連事務総長も選挙後に改めて同国の平和的な選挙実施についての見解を述べており、このような歴史的な瞬間に一国連ボランティアとして居合わせることができたことに感謝しています。一方で、選挙法違反や選挙に関わる暴力案件、汚職案件などの防止については全国において少なからず課題が残されており、今後も同国の選挙管理体制の強化については、他国の事例からも積極的に学ぶべきであるとの見解も共有されています。

選挙終了後は、新政権によるマニフェストの分析の他、新たに選出された国会議員の推進する優先課題等の分析を実施する中で、スリランカにおける政治体制の現状と課題について、具体的には「225議席」を占める各ステークホルダーの割合や同国の新連立政権の構築体制等に関する理解を深めることができました。これまで平和構築について主に開発協力の分野から関わってきた私にとって、このような政務面での業務に直接ないし間接的に関わることは新鮮な経験となり、平和構築をさらに大きな視点でとらえるきっかけとなったのではないかと感じています。

従来、平和構築のあり方については多くの研究がなされ、トップダウン、ボトムアップ、ハイブリッド、ドメスティック、グローバル、リージョナル、ローカル等々、様々な視点が重なる過去の経験から学ぶべき事例が多く存在しています。スリランカの平和構築についても同様に、それらのプロセスの結果として、内戦終結にたどり着いたという一つの歴史の見方があります。私が担当する和解と開発分野については、内戦後の国民和解そして復興が大きな課題です。今では一見平和に見えるスリランカですが、数十年にわたる内戦によってつくられた人々の心の傷やトラウマといったものは、すべてが目に見えるものではありません。終結から6年が経った今、「もう6年」と捉えるのか、「まだ6年」と捉えられるのか、スリランカが抱える、このような目に見えない課題についても、スリランカの人々一人ひとりがどのように向き合っていくのか、内戦を体験した人々やコミュニティが抱えている社会の現状と課題の大きさを感じます。新政権発足後、国連人権委員会やスリランカ国内において、内戦の各当事者の説明責任のあり方、今後の国民和解のあり方等、国内外において積極的な議論が交わされています。

UNDPでは、和解と開発を推進するために、帰還民コミュニティの再生及び生計支援プロジェクトを企画し、また国内の人権委員会に対する支援の継続をはかるなど、新政権の優先事項に基づく新たなガバナンスと平和構築に関するプログラムの構築を検討しています。私も同チームの一員として、人々の帰還に資するプロジェクト・マネジメントをはじめ、現地の専門家はじめ事務所のスタッフ、フィールドを駆け巡るコンサルタントや、他国連機関の同僚等と奔走する日々が続いています。平和構築に一つの解答例はないことを確認しつつ、引き続き今後の平和と開発に資する支援のあり方について真摯に模索していきたいと思っています。

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国連開発計画・国連常駐代表事務所(UNDP/RCO)スリランカ 和解と開発支援担当官
阿部 明子

これまで国内外の国際協力機関および開発途上国の現場において、特にアジアにおける平和構築と開発に資する協力・研究活動に従事。現在紛争影響地域における人間の安全保障や平和構築と開発のあり方について研究をし、スリランカの現場にて国連ボランティアとして勤務。紛争影響地域における人間の安全保障の拡充、グローカルな平和構築のあり方に関心を持つ。好きな言葉は、マハトマ・ガンジーの「Be the change you wish to see in the world」

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