アフリカ開発会議 (Tokyo International Conference on African Development: TICAD)は25周年の節目を迎え、2019年8月28日~30日には横浜で第7回目の首脳会議が行われます。これに先駆け、UNDP駐日代表事務所ではアフリカ開発について語る対話シリーズとして、2018年6月末に「AFRI CONVERSE」を立ち上げました。

2019年3月29日(金)に開催した「AFRI CONVERSE」の第9回目では、UNICEF東京事務所の根本⺒欧副所長、公益財団法⼈ジョイセフの⽮⼝真琴氏、メロディ・インターナショナルの尾形優⼦CEO、味の素ファンデーションの⾼橋裕典氏、甲南⼥⼦⼤学教授・⽇本WHO協会理事⻑の中村安秀氏を迎え、アフリカの母子保健の現状と展望について、政府、大学、国際機関、民間企業、NGOから集まった約110名の日本、アフリカ諸国からの参加者と協議しました。

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冒頭外務省・紀谷TICAD担当大使が、母子保健サービスの向上は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成において日本の強みを活かした貢献が必要とされる分野であること、2000年以降、グローバル・ヘルスの状況は、三種混合ワクチン接種率が90%を超えるなど大きな改善が見られる一方、まだ課題が残る地域・人々、特に母子のために更なる取り組みが求められているとの期待を示し、開会しました。

 

母子健康確保のためには家族計画の選択肢が必要

まず、モデレータを務めたUNFPA東京事務所の佐藤摩利子所長よりUHCと母子保健に関する世界の状況の説明がありました。

今日の世界における出生率は地域毎に大きく異なっており、大別すると4つのカテゴリーに分類でき、中でもサハラ以南のアフリカの大多数の国々では、女性1人当たり4人以上の子どもを出産しているのに対し、開発の進んでいるアジアや欧米では出生率が2.1人以下であることを示しました。出生率の高さは家族計画の選択肢の幅が限られていることを示唆しており、多くの母子が健康に生きることが阻害されていると指摘しました。

さらに世界では1日に830人もの妊産婦が命を落としており、中でもサハラ以南アフリカの占める割合は66%と高くなっている点、2.6分に1人の妊産婦が命を落としていることになるという現状を踏まえ、アフリカにおける母子保健サービスの重要性について概観しました。その後、ゲスト・スピーカーそれぞれの視点からの発表を促しました。

 

アフリカの発展の鍵を握る子どもの教育とヘルスワーカー

続いてUNICEF東京事務所の根本⺒欧副代表は、シエラレオネやモザンビーク駐在の経験を踏まえ、アフリカにおける母子保健の大切さを説明しました。

アフリカでは人口増加が著しく2030年には世界の1/3の子どもがサハラ以南のアフリカに占めると予測され、アフリカの成長や発展において子どもの教育、健康が鍵となります。アフリカにおいては5歳未満の死亡率は1990年の1/6から1/14に減少している一方、世界の5歳未満の子どもの死亡の半数以上がサハラ以南のアフリカであり、560万人のヘルスワーカーや衛生的な設備を整えた病院が必要であることを伝えました。UNICEFではUHC達成に向けてセクターを越えた協力、子どもの生まれる前、出生時時、生まれた後のサポート、さらにはコミュニティレベルにおける医療・健康システムの強化に取り組んでいると紹介しました。

 

UNFPA東京事務所佐藤摩利子氏
UNICEF東京事務所根本⺒欧氏

 

コミュニティに根差した活動による保健サービスの向上

昨年50周年を迎えた公益財団法⼈ジョイセフにてタンザニア、スーダン、ガーナのプロジェクトに関わった経験のある開発協⼒グループの⽮⼝真琴氏は、保健サービスへのアクセスを向上させるための草の根の取組みを紹介しました。

ジョイセフは、第二次世界大戦後の日本の経験を活かして途上国にてコミュニティベースのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)に取り組んでいます。ガーナでのプロジェクトを紹介し、医療施設が遠い、経済的負担があるなどの障壁により適切な保健サービスを受けられない人々に対し、医療施設の建設やヘルスワーカーの教育、ガーナの健康保険への加入促進等の支援について発表しました。またそれだけでなく、社会・文化的な理由により母子保健サービスへのアクセスが確保されていない人々に対し、母子保健サービスの重要性を保健ボランティアによる啓発を通して支援しており、こういった活動がなければ、必要なサービスに適切なタイミングでアクセスできない人々もいるため、NGOの活動が重要であると説明しました。また、UHCの達成において、プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)の重点化、NGOの参画、アジェンダ2030のスローガンでもある「誰をも取り残さない」ことを念頭に活動をすることが重要であるというメッセージを会場に投げかけました。 

 

母子保健の確保が難しい地域における遠隔医療システムの貢献

世界中の産科医と妊婦に安心安全な出産を届ける「遠隔胎児モニタリングシステム」を提供するメロディ・インターナショナルのCEO尾形優⼦氏は、妊婦と子どもの死亡率を減らすイノベーティブな取り組みを紹介しました。

アフリカでは、医療従事者の不足が深刻である上に病院までの距離が平均150km という課題があるが、逆にこの課題はイノベーティブなアプローチを活用する機会とであると説明しました胎児の健康状態を測ることができる小型モニターで遠隔医療プラットフォームを構築し、通院が困難な地域の妊婦・胎児のデータを医療機関にて監理し、緊急事態には大手病院にかかるネットワーク構築の取り組みを紹介しました。「女性が病院に行くのではなくて機器が女性に行く」という逆の発想で、日本の地方をはじめ世界における遠隔医療を通じた妊婦へのサポートを続けていきたいと述べました。

 

生後1,000日以内の栄養確保による子どもの発育への貢献

ガーナで10年前から栄養改善プロジェクトを行う味の素ファンデーションのマネージャー・⾼橋裕典氏は、ガーナでは二歳児の30%が発育阻害であるとしたうえで、自社開発の商品”KOKO Plus”の提供を通じた乳幼児の栄養改善の状況について発表しました。

生後1,000日の栄養摂取状態がその後の体・脳の発達に大きな影響を与えるという研究結果から、乳幼児期の適切な栄養摂取が個々人の有する能力を生かした発展を目指すために非常に重要であると述べられました。また、栄養改善を目指す同社事業において商品が「Affordable(1日0.1ドルの負担)」、「Acceptable(現地の食文化や味覚に合う製品)」、「Accessible(物持ちがよく簡単に食事に足すことができる)」である点を大切にしていると述べました。都市部ではキオスクと呼ばれる小売店、地方では女性の起業家を通じて製品を販売し、2023年までにガーナの栄養失調層にリーチし、持続可能なソーシャルビジネスモデルの確立を目指していることを説明しました。また、ガーナの保健庁、国連WFP、日本政府などとの協力により栄養教育等を行うことで栄養失調に関する知識を普及し、行動変容に取り組んでいると述べられ、今後もこうしたパートナーシップを活かして母子保健改善に向けて貢献していくという熱い決意を述べました。

 

母子保健の確保に有効な母子手帳の普及

最後に、インドネシアをはじめとした世界中で母子手帳を活用した母子保健の拡大を行う甲南⼥⼦⼤学教授・⽇本WHO協会理事⻑中村安秀氏が発表をしました。

2012年にケニアにて、2015年にカメルーンにて開催された母子手帳国際会議では多くの閣僚の出席を得るなど母子保健対策への重要性が認知されていること、さらに母子手帳への注目の高さを紹介しました。さらに、プライマリー・ヘルスケアは自立と自決の精神に基づき、すべての人へ保健普及を図るものであり、UHCに通じた概念であると説明しました。そして、母子保健は文化と深く関連しており、地域がもつ伝統を尊重しながら発展していく必要性を紹介しました。

登壇者の発表ののちに、モデレータのUNFPA佐藤所長より、UHCの達成において重要である母子保健については「誰も取り残さない」SDGs達成においても欠かせない要素であり、TICAD7の主要アジェンダとして取り扱う必要があるとコメントがありました。

また、参加されていた駐日ガーナ共和国大使館のアイキンス・アブロクワ公使参事官は、ガーナの母子保健への支援について日本政府や味の素、ジョイセフへ感謝の意を示すとともに、ガーナは母子保健の改善に向けて全力を尽くす用意があり、TICAD等を通じて共にアジェンダの推進・達成を目指しましょうと述べました。

今回のセッションでは、母子保健の向上のためには様々なセクターのパートナーシップが大切であり、母子保健向上はアフリカの人的資源の拡大や企業投資の基盤となること、母子保健分野の“チームJapan”としてTICAD7に向けて関係者の協調をより一層高めていく必要があることが確認されました。

公益財団法⼈ジョイセフ⽮⼝真琴氏
メロディ・インターナショナル尾形優⼦氏
味の素ファンデーション⾼橋裕典氏
甲南⼥⼦⼤学・⽇本WHO協会中村安秀氏

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