ジンバブエの「国連しか出来ない開発援助」

今の仕事の内容を簡単に教えて頂けますか。
 

あまり知られていないことですが、ジンバブエにおける国連の開発援助の規模は、世界中で第4位。ジンバブエに対する政府開発援助(ODA)の60%以上が国連を通した開発援助です。その規模は年間平均4億米ドル以上にも及びます 。世界的に多国間主義の本質が問われる中、ジンバブエでは「国連しか出来ない開発援助」が多々あります。それは、中立かつ公平な立場にある国連に対する政府やその他利害関係者の信頼に基づく援助です。今年7月に行われた総選挙が示したように、ジンバブエは政治的・社会経済的に分極された国です。その中で、例えば、 多様な利害関係者を招集し、国家開発の優先分野や人権・ジェンダー平等など普遍的な価値観に関する政策協議を促進する場を設けることは、大変意義のある国連の役目です。そしてその調整を担う、自称・縁の下の力もちが私の率いるチーム、ジンバブエ国連常駐調整官事務所です。

国連常駐調整官事務所の仕事は、 国連機関及び職員の意識改革をサポートすることによって、(アリストテレス曰く)“全体は部分の総和に勝る”「結果を出す国連」に転身させるお手伝いをする事務所です。その為に大切なのは、高度のコミュニケーション能力、対人関係を築く力、そして戦略的な思考だと思っています。

 

仕事をしていて嬉しかったこと、やりがいを感じたケースを教えて頂けますか。
 

日本からは遠い南部アフリカの中で随一世界のニュースシーンを賑わすジンバブエですが、赴任して以来、仕事上一日として同じことをしている日がないのが現状です。2016年の2月に赴任した当初は、エルニーニョ現象による干ばつの影響で、政府が災害緊急事態を宣言した直後でしたので、 人道支援活動の調整に徹底しました。赴任して数ヶ月後、米ドル現金不足1が悪化し始め、銀行からの現金引き出しが極度に制限され、同時に生活必需品を含む輸入品の価格が高騰しました。2008年のハイパーインフレが記憶に新しい中、国連の開発援助や人道支援活動が維持できるよう、様々な予備対策を導入しました。そして昨年11月には、37年間に及んだムガベ政権が終結し、今年7月には歴史的な総選挙が行われました。選挙前の数週間は24時間体制で、選挙が公正、平等、かつ平和に行われる環境を整えるため、国連カントリーチームが一体となって陰から支援しました。その一方で、緊急時対応計画を改訂し、選挙後の新政権を迅速にサポート出来るよう世銀やアフリカ開発銀行と共にアセスメントを行いました。そして12月の現在、経済状況が悪化する中、再び緊急対策モードです。

 

現地の人々のUNDPに対する印象はどんなものでしょうか? 現地の人々からのコメント等ありましたら教えてください。
 

経済社会情勢が厳しい状況の為、UNDP に限らず国連に対する一般市民の期待は非常に高いと感じます。国連カントリーチームのマンデートは持続可能な開発で、政治的なマンデートはないところが各国による二国間援助とは異なるのですが、その辺りのニュアンスが分かってもらえないこともあります。来年1月からは、国連改革の一環で、国連常駐調整官事務所はUNDPから独立します。


*1 ジンバブエは、2008年のハイパーインフレ後、2009年以来複数外貨制の下、経済はほぼ米ドル化されました。

 

 

国連の仕事は現場(フィールド)で起きている

これまでどのようなキャリアを積まれてきましたか。何で国連またはUNDPに入られたのでしょうか。
 

気が付けば、国連で働き始めて、早十数年になります。高校時代の三年間をイスラエルで過ごして以来中近東の魂に惹かれ、そもそもは中近東の人々に仕えたくて外務省のJPO派遣制度に応募しました。 その後、人とのよい出会いと従来の楽観的な性格が重なり、三つの国連機関において五カ国の任地で働いてきました。

 
今後どのような道に進まれる予定でしょうか。
 

国連職員の「道」は一寸先は闇ではありますが、基本的には自分が貢献出来ると思われ、また家族を連れていける所であれは、どの様な「道」も歩む予定です。最近、国連職員女性職員のためのリーダーシップ・コースを受け、自分のリーダーシップ・スタイルを追求中です。

 
アフリカの魅力、醍醐味を教えて頂けますか。
 

大学生時代に好きだったテレビドラマのキャッチフレーズを借りると、“国連の仕事は現場(フィールド)で起こっているのだ、国連本部の会議室で起こっているのではない。”この仕事のやり甲斐は、仕えている国の歴史的な瞬間に米粒ほどではありますが貢献出来るところにあると思います。毎日が連続ドラマのような時期もあり、現在も色々と厳しい状況のジンバブエですが、どんな逆境に直面しても、We will make a plan と言って立ち上がる、七転び八起きなところに胸を打たれます。国民の教育水準が高く、アフリカの中で最も可能性を秘め国民の底力に期待が出来る国のひとつでもあります。毎日ジンバブエの人々の寛容な優しさとユーモアにエネルギーを頂いて、これからも私の出来ることを追求していきたいと思います。

 


馬渕加奈子 ジンバブエ国連常駐調整官事務所長
東京都生まれ、北半球育ち。オックスフォード大学にて現代中近東研究の修士号を取得。2004年、JPOとして世界食糧計画のローマ本部及びエジプトのカントリー事務所に派遣される。その後、ミャンマー国連常駐調整官事務所、国連人口基金のニューヨーク本部を経て、2016年よりジンバブエ国連常駐調整官事務所のヘッド。

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