UNDPのジェンダー分野における支援事例

2014/09/26

マーケットで果物を売る女性、カンボジア、シアヌークビル特別市 Photo:Yumiko Yamamoto


「ウィメノミクス」「女性のエンパワーメントによる経済効果」など、最近、日本でも海外でも女性の活躍が注目され、それに伴う経済効果の分析もメディアに取り上げられるようになりました。女性の経済活動への参加は女性の権利の点からも歓迎すべきですが、なぜ女性の経済活動への参加が今まで進んでこなかったかという原因の究明とそれを基に解決となる政策や事業の提言・実施は残念ながらあまり進んでいません。例えば、日本では女性の家事や子育て、介護などの無償ケア労働の負担、既婚女性に与えられている税や社会保障制度の優遇策などが女性の有償労働への参画を妨げている原因の一つです。開発途上国ではそれらに加え、農業および家庭で使う水、料理や暖房のために必要な焚き木、家庭での消費や販売のための非木材森林製品を集めて運ぶことも女性の仕事ですが、インフラ事業ではこういった無償労働を減らすための支援は二の次です。

現在の経済政策、事業計画・運営・評価などを女性の視点で見直して提言、実施していく作業には数年を要し、学校や病院の建設などと違って成果の可視化が難しい分野ですが、経済政策全般の見直しなしに女性の経済参画を推進しようとすれば、無償・有償を合わせた労働時間がさらに増えるなど女性の負担増につながりかねません。

日本・UNDPパートーナーシップ基金(39.8万ドル)を基にUNDPアジア太平洋地域事務所では経済政策を女性の視点で見直す調査研究、政策提言のための能力開発の事業を2010年から2012年まで行いました。23か国からの80人を超える参加者の多くは、国の5か年計画や貿易政策に携わる政府職員、経済学やビジネスを教える大学教授や研究者で、ジェンダー予算の取り組みや大学の授業にジェンダー経済学の手法を取り入れるなどの効果がありました。

昨年からはアジアの国、地方自治体で同様の能力開発事業推進を支援すると同時に、地域事業では経済政策の中でもアジアの地域貿易における非関税障壁の削減に向けた政策および事業提言を女性の生産者、貿易業者の視点から行う取り組みを始めました(オーストラリア政府からの支援で72万ドルの予算)。自由貿易の流れを受けて関税は削減されましたが、非関税障壁の削減は進まず、最貧国はグローバル化、あるいは南アジア自由貿易地域やASEAN経済共同体設立などの恩恵を受けにくいままです。インフラの構築や貿易に従事する政府職員、民間業者の能力開発、インフラの整備といった支援が必要ですが、女性の生産者や貿易従事者は零細、中小企業が多いことから、彼女たちの視点で零細、中小企業も恩恵を受ける貿易、地域経済の構築を目指しています。

例えば、女性の多くが生産し、輸出可能な製品に農作物加工品、民芸品などがあります。質の良い製品をつくっているにもかかわらず、無償労働の負担が大きい女性達は家を離れることができず、研修の機会も限られ、市場の情報を得にくいために生産拡大、雇用拡大の機会を失っています。また製品の出荷をするためにかかる輸送費や原産地証明書など通関手続きの書類を作成するための費用も大企業に比べて高くなります。貿易業者や国境警備に従ずる男性、通関職員らからセクハラを受けたり、男性よりも高い手数料を不当に請求されたりといった女性に特化した課題も挙げられます。

日本でも経済、雇用の要は中小企業ですが、開発途上国でも同様です。現地調査で女性の声を集約し、貿易、ビジネスの障壁を取り除いていく政策提言も女性が輝く社会を実現するための開発途上国支援の一つと考えています。事業提言においては携帯電話での情報集約・共有や、社会起業家やBOPビジネスへの関心が高い企業と連携をすることで、解決を図っていく予定です。

(文責:UNDP アジア太平洋地域事務所政策スペシャリスト 山本由美子)

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