第1回 NY発 UNDPの援助最前線レポート: 中央アジアにおける国境を越えた「新たな」取り組み

2015/02/26

タジキスタン南部ハトロン州、アフガ二スタンと国境を接する村落。UNDPによるプロジェクトで修復された小中学校と地元の生徒たちと筆者(右) Photo:UNDP

国連開発計画(UNDP)本部の対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。2014年12月3日から10日間、日本とUNDPが協力して実施しているプロジェクトの進捗を視察するため、中央アジアのキルギス共和国とタジキスタンを訪問しました。

中央アジア地域とは、もしかすると皆様にとって馴染みの少ない地域かもしれません。この地域区分が世界地図に登場したのは、1989年のベルリンの壁崩壊を受けて、旧ソ連が崩壊し、冷戦が終結した直後の1991年です。

中央アジア地域は5つの「スタン」国が存在します。ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタンです。ソ連邦が存在した時代は、これら5つの国はソ連邦を構成する内部に存在する共和国として存在しました。

日本は新たに独立した中央アジア諸国と早期に外交関係を樹立し、2004年には「中央アジア+日本」対話 という中央アジア諸国との対話と協力を進める外交的な枠組みを発足させました。日本は、中央アジアが開かれた地域として安定・発展していくこと、域内国が共通の課題に共同で対処することが同地域の発展にとって不可欠とし、同地域の開発における重要な役割を担ってきました。

日本の政府開発援助(ODA)における同地域への支援は、2013年度で二国間援助全体のわずか3.4%(2億1913万ドル、コーカサス含む)です。限られた資金のもと、日本による中央アジア諸国支援の重点は1)インフラ整備(運輸、エネルギー等)、2)民主化・市場経済化支援、3)日本企業の活動の環境整備に置かれ、「中央アジア+日本」対話の枠組みを通じつつ効果的な支援をしています。

中央アジアは、同じ「スタン」を国名に持つアフガニスタンやパキスタンの北に位置しており、特にウズベキスタンとタジキスタンは国境の南側をアフガニスタンと接しております。ご存知のとおり、アフガニスタンの安定と平和に国際社会が注目する中、周辺に位置する国々の安定と発展は欠かせない要素となっております。つまりは、中央アジア地域の開発は、アフガニスタンの平和にも資するといっても過言ではありません。

日本はアフガニスタンの経済開発を視野に入れて、2012年にUNDPと連携し、「タジク-アフガニスタン貧困削減イニシアティブ(TAPRI)」という国境を越えた2か国にまたがる新しいプロジェクトを約5億円の規模で実施しました。このプロジェクトがなぜ「新しい」のかといいますと、タジキスタンとアフガニスタンで国境を接するコミュニティ開発を同じアプローチ、同じ内容で支援し、両国それぞれのプロジェクト実施から得られた経験や知見を相互に活用して、効果的な支援をする試みであるためです。

TAPRIでの経験を踏まえて、日本とUNDPは2014年に「タジキスタン-アフガニスタン国境地域生活改善計画(LITACA)」を3年間約11億円の規模で開始しました。本プロジェクトでは、タジキスタン-アフガニスタン国境地域の10県において、地方行政の能力強化をしつつ、地域コミュニティの基礎インフラ整備(教育、保健、給水、潅漑)を進め、農村地域における経済活動の促進を目指すものです。TAPRIプロジェクトと異なる点は、これまで以上に、国境をまたぐ2か国間の交流が強化されている点です。国境沿いの村落に、両国のコミュニティからアクセス可能な共同市場の設置も計画されております。

冒頭で触れました昨年12月のタジキスタン出張では、半年に1度開催されるLITACAのプロジェクト運営委員会に参加しました。今回はタジキスタンの首都ドゥシャンベにあるUNDPタジキスタン事務所にて開催されたため、プロジェクトの主要関係者、タジキスタン側からは経済開発・貿易省副大臣、ハトロン州知事をはじめとする関係者が参加し、アフガ二スタン側からは、農村復興・開発省副大臣補佐官及びアフガ二スタン側プロジェクト関係者がカブールより来訪しました。2014年のタジキスタン側及びアフガニスタン側の活動進捗状況の確認を行うと共に、2015年の活動計画についての議論をしました。

運営委員会に引き続き、タジキスタン側及びアフガ二スタン側の関係者によるタジキスタン側のプロジェクトサイト視察、アフガ二スタンと国境を接するハトロン州のハマドニ地域及びシュラバッド地域のコミュニティを視察し、障がいを持つ女性向けの職業訓練センター、コミュニティ給水施設、アフガン国境沿いに新設中の国境沿いの共同市場等を訪れました。

視察中の興味深かった点としては、プロジェクトによるコミュニティ開発事業が順調に進んで、地域住民による給水や教育等の社会サービスへのアクセスが改善されていることもさながら、アフガ二スタン側からの参加者がタジキスタン側の事業を視察して、現場における事業の効果発現に大きな関心を抱いていたことです。また、アフガ二スタン側関係者とタジキスタン側関係者の意思疎通が99%、お互いの母語で可能です。アフガン人は主にダリ語を話し、タジク人は主にタジク語を話しますが、相互に意思疎通が可能なのです。これは〝クロスボーダー〟における取り組みにおいては、非常に大きな要素です。例えば、同じくアフガ二スタンと国境を接するウズベキスタンの言語であるウズベク語とアフガン人のダリ語では、そのような意思疎通は難しいです。

LITACAによる国境をまたぐコミュニティ支援、即ち〝クロスボーダー〟の取り組みは、中央アジア地域における開発プロジェクトの中でも、まさに新しい取り組みです。国境を接する隣国のアフガン二スタンを同時に対象としており、実験的な取り組みといえます。LITACAについていえば、タジキスタン政府及びアフガ二スタン政府による関与の度合いも非常に高く、両国が手と手を取り合って協力しあう姿勢を日本とUNDPが支援している点は特筆に価します。

実験ともいえるLITACAプロジェクトが2年後のプロジェクト終了までに、大きな成果を両国の地方開発にもたらすよう、これからも進展を見守り続けたいと思っております。

二瓶直樹

UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザー--------------------------------------------------
2003年、国際協力機構(JICA)入構。以降、政府開発援助(ODA)業務に従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDP本部にて勤務。早稲田大学社会科学研究科修士卒。