第2回 NY発 UNDPの援助最前線レポート:自然災害後の復興支援を東北にて考える

2015/04/01

3月16日シンポジウムの開催会場となった陸前高田市のコミュニティーホール。シンガポールの支援にて工事完成。

国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。今回は防災に関する記事を執筆します。2015年3月14日から18日の間、仙台市にて第3回国連世界防災会議に参加しました。10年に1回開催される同会議は今回、東日本大震災を経験した東北の中核都市・仙台が舞台となりました。

会議期間中は、最終的に「仙台防災枠組み2015-2030」として合意された新しい枠組みの交渉が国連加盟国間にて行われました。過去10年の間に発生した世界中の自然災害の経験をもとに、どのように防災対策に各国が取り組んでいくべきかを参加国、国際機関、援助機関、非政府組織(NGOs)、市民社会が参画して、大臣級会合、特別イベント、パブリックフォーラムといった様々な形で議論されました。

私は会議期間中に、大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪問する機会がありました。陸前高田市までは仙台市から陸路車で片道約3時間半かかります。4年前の大震災直後、同市の大津波の映像が配信され、世界中の人々をテレビに釘付けにしました(私自身は当時赴任先であるウズベキスタンの首都タシケントにある日本センターのテレビで偶然その映像を目にしました。津波に町全体がのみ込まれた光景が今でも脳裏に焼き付いています)。

陸前高田市は人口約2万4千人で、死者数1550人(2014年6月時点)と大きな人的被害を受けました。災害後「陸前高田市震災復興計画(平成30年までの8か年)」に基づき、災害に強い街づくりに取り組んでいます。4年経った今でも災害の傷跡は街の随所に見られました、また、かつて居住区域だった沿岸部は現在嵩上げ工事が続いており、復興に向けて市は姿かたちを大きく変えています。

2015年3月16日に陸前高田市は「高齢者・障がい者と防災シンポジウム-復興の力:ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくりに向けて」を開催しました。同市の呼びかけによりUNDPと日本障害フォーラム(JDF)が共同で開催したものです。

会場は、震災後にシンガポール政府から約7億円の支援を受けて完成した新しいコミュニティーホール(総工費約14億円)でした。当日はシャンムガム・シンガポール外相、戸羽太・陸前高田市長、嵐谷 安雄・日本障害フォーラム代表、中満泉UNDP総裁補兼危機対応局長が出席し、被災者への追悼の意を表すると共に、陸前高田市による災害に強い街づくりへの賛辞やエールを送りました。

シンポジウムのテーマは、「高齢者」と「障がい者」でした。東日本大震災における障がい者の犠牲者率は、被災地域住民全体の犠牲者率の約2倍だったと報告されています(陸前高田市の場合は市被災者住民全体の約1.3倍でした)。更に、社会的弱者(要配慮者)の避難を支援した結果、支援者が犠牲になるなど、犠牲者は要配慮者と同行していた割合が高い傾向がありました。これは、UNDPが自然災害を受けて支援した世界中の国々と同じ傾向を表しています。社会的弱者への対応が自然災害時の大きなポイントとなることを物語っています。開発途上国における社会的弱者は社会状況により様々ですが、女性や子ども、障がい者であり、自然災害で被害を受ける可能性が通常より高くなっています。

災害に強い街づくりにおいては、障がい者を含む社会的弱者の視点が重要であることがシンポジウムのメッセージでした。シンポジウムの後半は、市の特別チームによるアクションプラン(ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり)の発表がありました。5つの柱と56の活動からなるアクションプランは、「誰にでもやさしいまち」や「誰にでもわかる避難路の整備」といった言葉からにじみ出る、「誰にでも」がキーワードでした。開発援助において重要な概念である包摂性(inclusiveness)がまさに体現されたアクションプランだと思います。

陸前高田市の取り組みはまさに、第3回国連防災世界会議にて採択された「仙台防災枠組み2015-2030」に基本原則として含まれるビルド・バック・ベター(Build Back Better)*の考えを実行しています。市の関係者が発表したアクションプランは、まさにUNDPが自然災害を受けた国々で支援している国レベルやコミュニティレベルにおける自然災害後の防災復旧・復興支援そのものであり、陸前高田市は、その優秀なお手本のひとつとなるものです。私は今回の陸前高田訪問を終えて、日本の地域社会におけるたくましさ、強靭な社会の姿を垣間見て、災害後の復旧や復興はまさに日本が世界に誇れるものだと再認識しました。

また、シンガポールによる陸前高田市のコミュニティーホール建設支援は、これまで日本が世界にて政府開発援助(ODA)等を通して国際貢献したことに対する恩返しであるととともに、国際協力の1つのシンボルともいえます。

日本は東日本大震災の惨禍を経験し、今回の防災会議を成功裏に開催したことで、これまで以上に世界における防災分野のリーダーであることを証明しました。UNDPは日本にとっての最良のパートナーとして、開発途上国における災害後の支援は言うまでもなく、災害に強い国づくり、地域づくりをこれまで以上に推進していくことが期待されます。

*ビルド・バック・ベター(Build Back Better): 災害以前の状態に復旧するだけではなく、被災地をより良い状態に再建すること

二瓶直樹
UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザー
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2003年、国際協力機構(JICA)入構。以降、政府開発援助(ODA)業務に従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDPニューヨーク本部にて勤務。早稲田大学社会科学研究科修士卒。

 

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