第4回NY発 UNDPの援助最前線レポート: ネパールの被災地における復旧活動

2015/06/02

チョウタラ市中心部。ほぼ全ての家屋が倒壊し、至るところに瓦礫の山ができている。Photo: Naoki Nihei/UNDP

国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。ネパール大地震の復興計画づくりのために、5月21日から約1か月の予定で同国に滞在しています。前回の第3回最前線レポートでは、被災国がより良い復興ができるよう、国連機関、世界銀行、欧州連合がネパール政府や国際社会と協力しながら実施する「災害後復興ニーズ評価調査(Post Disaster Needs Assessment: PDNA)」の仕組み、概要をご紹介させていただきました。今回はUNDPアジア大洋州局副局長とともに、ニーズ調査の参考として現場視察を行った被災地の様子をお伝えします。

ネパール政府は先週、6月末に支援国会議を開催する旨発表しました。復興計画の概要もその会議までに策定する必要があり、UNDPをはじめとする国連機関、世界銀行、アジア開発銀行など総勢約200名以上の援助関係者により構成されるニーズ評価調査チームは寝る間も惜しんで政府機関との面談を行い、また被災現場に足を運び、各セクターにおける被害状況の情報・データ収集を進めています。ニーズ調査は当然のことながら首都カトマンズだけではなく、地方都市や農村部も含め被災地域全体を網羅しなくてはいけません。私も今回のUNDPアジア大洋州局副局長による現場視察の機会を利用して被災地の情報収集を行いました。

5月26日は、カトマンズから東北へいくつもの山を越えて車で5時間要するシンドゥルパルチョク郡チョウタラ市まで足を運びました。朝7時にカトマンズを出発、途中の幹線道路は過去に日本の無償資金協力による部分もあり大部分の箇所はきれいに舗装されたままでしたが、残念ながらいつかの箇所で地崩れやひび割れを目の当たりにしました。ただ、被害の中心は道路等の経済インフラよりも農村部の住居の崩壊が激しく、地方に行けば行くほど、家屋倒壊による瓦礫の山々を多く目にしました。山間部に行くと、地元の人々が崩壊した家屋の木材や煉瓦でできた山の上に登り、手作業で片付けている様子が頻繁に見られました。

人口約2650万人のネパール国内には75の郡が存在します。人口約29万人のシンドゥルパルチョク郡は最も被害が深刻で、同地域の死者数は約3500人。今回の大地震の死者数全体の4割を占めます。約6万6千世帯が家屋の被害を受けました。チョウタラ市中心部では、町中の建物がほぼ全て全壊している無残な姿を目にしました。家屋、商業施設、街中に存在する9割以上の建物が崩壊し、木材やレンガ等の瓦礫がいたるところで山積みとなっています。カトマンズ同様、多くの住人が仮設住宅やテント生活を強いられており、経済活動がほぼストップしている状況です。また、同市役所も建物が破損し、仮設のテント事務所で業務をせざるを得ず、市の行政サービス機能も大幅に縮小しています。チョウタラ市には、国際機関や非政府組織(NGOs)が運営する避難民キャンプ村が中心部に設置され、その中には緊急援助で支給されたテント、給水施設、国際赤十字による臨時医療施設が整備されております。約400人がここに緊急避難を行い、住む場所を失った人々の生活拠点となっております。

シンドゥルパルチョク郡の現場視察では、UNDPによる復旧活動現場にも足を運びました。UNDPは同地域で地震後速やかに復旧支援活動を開始し、雇用創出・現金報酬(Cash for Work)プロジェクトによる瓦礫処理とその業務に現地の人を労働者として雇う緊急雇用創出を行っています。カトマンズのトリプバン大学工学部関係者が崩壊した家屋の評価をし、住民へ瓦礫が崩れ落ちる危険性について助言をしています。地域住民の労働で、建物の取り壊し、一時的な避難住居の設置も次々と行われています。

被災地視察を通じて、農村部の被災状況は、首都カトマンズとは比べ物にならないことを実際に現地に足を運んで肌見で知りました。カトマンズでの住居崩壊は、農村部と比べれば被害は限定的で、主に古くからの建造物、特に寺院等の文化遺産の倒壊が主な被害です。他方、農村部はチョウタラ市での状況が示すように、被害は多岐に渡り、多くの一般住民が家を失い、都市機能や経済活動も停止してしまった状態です。加えて、陸路、車で何時間もかかる立地条件もあり、緊急人道支援も届きにくい状態です。実際の復興活動が始まる場合も資材の運び込み、生活インフラ整備などは都市以上の労を要するでしょう。

視察を終え、地方農村部の復旧ニーズが非常に大きく、特に住居整備、生活インフラ整備が最も重要かつ緊急性の高いものであると認識しました。住居に加えて、学校及び病院等の社会サービスインフラ、郡や市による行政社会サービスに復旧も重要な課題です。しかしながら、目の前に立ちはだかるニーズへの対応に加えて、復興には、中長期的な計画づくりも重要です。特に、約200万人以上を要するカトマンズ首都圏を中心とした将来の地震等の災害に備えた対応を検討することも復興ニーズ評価調査の大事な要素です。

ネパールは6月から9月がモンスーン(雨季)の時期です。雨季になると、洪水、地すべり等の自然災害が起きるリスクも高く、復旧・復興活動は大きな足止めを受けることが予想されます。多くの援助関係者は、6月以降の活動を不安視し、少しでも早いうちに復旧を進めたいと躍起になっております。

復興計画づくり後の活動は、天候により大きく左右されますが、中長期的な視点でどのように復興を行うか、ネパール政府と援助機関による緊密な連携がこれまで以上に重要となっていきます。UNDPは、「災害後復興ニーズ評価調査(PDNA)」が期限どおりに策定され、ニーズ評価調査の結果をもとに、ネパール政府が支援国会合を開催し、国際社会と強く連携して復興活動をスムーズに進めることを後押しすることを期待しています。私はこのプロセスが順調に進むようUNDP及びニーズ調査の一員として、貢献できるよう日々業務に励んでおります。

二瓶直樹
UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザー

---------------------------------------------------
2003年、国際協力機構(JICA)入構。以降、政府開発援助(ODA)業務に従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDPニューヨーク本部にて勤務。早稲田大学社会科学研究科修士卒。

UNDP Around the world

You are at UNDP Tokyo 代表事務所
Go to UNDPグローバル