日本政府拠出、バングラデシュのチッタゴン丘陵地帯における平和構築プロジェクト

2015/06/04

訪問先で現地NGOの紛争予防についての経験に耳を傾ける紛争調停ボランティア


国連開発計画(UNDP)バングラデシュ事務所では、日本政府からの資金拠出を受け、チッタゴン丘陵地帯において平和構築のプロジェクトを実施しています。長期に亘り不安定な状態が続く同地で、平和を構築するために様々な取り組みがなされています。

バングラデシュ南東部に位置するチッタゴン丘陵地帯では、土地、資源問題、人権をめぐる闘争が先住民と政府軍との間で25年以上続きました。その後、1997年に先住民によって組織されたチッタゴン丘陵人民連帯連合協会(Parbattya Chattagram Jana Sambati Samiti, PCJSS)と現在の政府与党・アワミ連盟の間で和平協定が調印され、正式に紛争が終結しました。

しかし、和平協定調印後17年以上たった今なお、協定の主要部分ともいえる土地問題の解決、難民と国内避難民(IDPs)の生活再建、同地域における軍の撤退(非軍事化)、丘陵県評議会*選挙などが実施に至っていません。これに不満を募らせる先住民の間では、さまざまな意見を巡り、分裂が起こっています。また丘陵地帯に入植者として移住してきたベンガル人の人口増加と共に、ベンガル人と先住民の間で、地域の対極化が加速しています。近年立て続けに起こっている先住民に対する土地略奪や焼き討ち事件などの暴力行為はこの対極化を反映しています。今年1月にも、政府が同地域に公立の医学学校を設置する際、設置に反対する先住民と支持派入植者の間で暴力行為が起こり、同地域において1週間以上戒厳令が課されました。

紛争を再発させないため、また持続的平和が達成されるために、同地域における支援がどのように行われていくべきかという議論がバングラデシュ政府と開発関係者の間で続いています。他のバングラデシュとは全く異なった地形、文化、言語、民族の複雑な構成があるからこそ、また和平協定の実施が停滞している状況だからこそ、その背景を十分に考慮した支援が必要になっています。

UNDPは政府の和平協定実施を支援する目的で同地域において2003年から11年間、支援を続けてきました。日本政府はその取り組みをサポートしてきた重要なパートナー です。現在日本政府が日・UNDPパートナーシップ基金より拠出している平和構築プロジェクトもその一環で(計30万ドル拠出)、とくに近年深刻化する民族間の紛争調停や交流を通して、対極化する同地域の現状緩和を計ってきました。

例えば、このプロジェクトでは101人の現地ベンガル人や先住民からなる紛争調停ボランティアが育成され、現在彼らは自らのコミュニティーで起こる様々な事件や紛争を調停しています。紛争調停に必要なトレーニングを提供することはもちろん、現地の政府関係者との関係構築を手助けし、対立住民間の暴力行為などの緊急事態に、現地政府とコミュニティーが一丸となって、迅速に対応できる体制を構築することもプロジェクトの狙いの一つです。実際、このプロジェクトにより紛争調停ボランティアは550件ほどの案件を今まで調停してきました。

また現地の若者に平和のためのスポーツ交流の機会を提供することもプロジェクトとの狙いです。民族間の問題を越えた交流と育成を通じ、若者が同地域において変化の立役者となることが望まれています。今年350人ほどの若者(主に10代から20代前半)が選ばれ、サッカーのトレーニングとキャンプを通じてスポーツの技術を磨き、同時に民族間のステレオタイプを壊す活動に参加しました。

今なお17年前に調印された和平協定が思うように実施に至らない中、同地域への支援の課題は山積みです。今までの支援を自ら批判的に問い直し、学びを紡ぎだすのはUNDPバングラデシュ事務所内の重要な取り組みです。また情報交換を通じ、他開発関係者が紛争を助長しない開発・支援ツールを選択する手助けをしていくことも、UNDPの同地域における重要な役割です。日本政府の支援は、厳しい現実の中、一歩一歩現地で出来ることを体現しています。


*丘陵県評議会(Hill District Council)とは、和平協定に則り、自治制度を実現すべく丘陵地帯に設置された地方政府で、3県からなる各丘陵地帯県に設置されている。和平協定には、丘陵県評議会のメンバーは選挙によって選ばれるとあるが、現在のところ公正な選挙は実現に至っていない。

(特別寄稿:UNDPバングラデシュ事務所 チャカール亜依子)

 

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