第8回NY発 UNDPの援助最前線レポート: 未来を担う若者と新たな開発目標を考える

Fri Sep 04 00:00:00 EDT 2015

2015年7月、日本青年会議所(JCI)による「少年少女国連大使事業」でニューヨークを訪問した11~14歳の小中学生30人に対して、「開発途上国の問題と国際協力を考える」をテーマに講義(写真左側筆者)


国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。2012年8月に現職をスタートした後、ニューヨークや出張先の日本で、学生向けにUNDPや世界の開発問題について講義する機会をたくさん頂きました。今回のレポートは、将来を担う日本の若い世代にお話してきた、2016年から15年間で実現を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」について、ニューヨークからお届けいたします。

私がニューヨークに赴任してから3年の間に、日本から大学生や小中学生たちがUNDP本部を訪問する度に講義をしてきました。特に文部科学省が日本の大学の国際競争力向上を促進し、世界を舞台に活躍できる人材を育成することを目的に「スーパーグローバル大学」や「スーパーグローバルハイスクール」制度を設けた2014年以降、その数は急増しています。長期休暇の時期には、多くの学校が国連スタディツアーのようなプログラムを組織し、学生、生徒たちを率いてニューヨークを訪れるようになりました。よくあるパターンは、ニューヨーク国連本部のガイドツアーに参加し、国連邦人職員が勤務する国連本部、UNDP本部、UNICEF本部などを約1週間の滞在中にまわられます。併せてワシントンDCにある世界銀行や国際通貨基金の本部を訪問することもあるようです。

私の講義では通常、UNDP組織概要、優先課題、日本政府との関係からスタートし、2000年~2015年にかけての「ミレニアム開発目標(MDGs)」、最近のホットイッシューであるシリア情勢、ネパールの復興支援や世界中で起こる紛争や自然災害などについて話しています。中でも学校側からの要請が多い話題は「持続可能な開発目標(SDGs)」、2016以降の開発目標、課題に関する内容です。講義を聞く生徒や学生たちはまさに2016年以降の世界づくりの担い手であり、人材でもあります。世界の将来を考えることが大事であると思っていることが彼らの視線、質問からもよく伝わってきます。

国際社会は2000年の国連総会で「ミレニアム開発目標(MDGs)」を採択しました。MDGsで設定された8つの目標を達成するため、この15年間、国際社会は国連のプロジェクトや政府開発援助(ODA)、民間企業、市民社会等とのパートナーシップによる国際協力を続けてきました。7月にMDGs進捗状況に関する最終報告書『ミレニアム開発目標2015』が発行されました。同レポートは、過去15年の間に、世界の貧困は半分以下に減少し、教育や保健分野に関する指標が大きく改善していると指摘しています。ただし、サブサハラ・アフリカや南アジア等の一部の地域では(開発が)進捗しながらも達成状況が総じて低い状況にもあります。

2015年は国連および国際社会にとって非常に重要な年です。MDGsの達成期限であると同時に、9月にニューヨークで開かれる国連総会で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されるからです。また、国連が主催する大きな国際会合が複数あります。3月には第3回世界防災会議が仙台で、7月には3回開発資金国際会議がエチオピアのアディスアベバで開催されました。国連総会の後、12月には気候変動枠組条約第21回締約国会議:COP21がパリで開催されます。地球規模の開発課題を協議し、今後の指針を決める大きな会議がこの1年間で4つもあるのです。

「持続可能な開発目標(SDGs)」については、約3年に渡り、国連を舞台に政府間交渉が続き、7月下旬にニューヨーク国連にて、加盟国間で最終交渉が行われました。最終交渉は、8月1日に終わりました。成果文書『私たちの世界を変える:2030年までに達成すべき持続可能な開発課題(TRANSFORMING OUR WORLD: THE 2030 AGENDA FOR SUSTAINABLE DEVELOPMENT)』には、17の開発目標と169の具体的な達成基準が盛り込まれています。MDGsと比べて目標数が多いことに加え、先進国が取り組むべき目標も多く含まれています。格差是正などMDGsに含まれなかった分野もカバーされています。

MDGsが採択された2000年頃は、1990年代の開発課題であった教育、保健医療、環境といった基礎的な社会サービスが主に国際社会や人々の関心でもありました。しかし、この15年の間に、世界はテロリズムや国内紛争による治安の不安定化、気候変動による自然災害の増加、都市化、生態系の破壊、国境を越える感染症の脅威、格差拡大といった数多くの新たな課題に直面しました。これらは互いに絡み合い開発問題を複雑にしています。私は「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標がこれほどまでに増えた背景は、世界が経験した問題を国際社会はこれまで以上に、真摯に受け止め、そして取り組んでいこうとする姿勢の表れだと考えています。

私は学生たちへの講義でUNDPが過去15年間、MDGs達成に向けて取り組んできた開発途上国支援や、国連の中でMDGs達成のための進捗状況を把握する中心的役割を果たしてきたことに常に触れるようにしています。また「持続可能な開発目標(SDGs)」を策定するにあたり、UNDPが他の国連機関と協働で実施したグローバルな調査MY Worldプロジェクトで各国市民による開発ニーズのアンケート結果を紹介し、国連組織が市民ニーズをどのように反映しているのかを説明しています。

「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択後、2016年からはいよいよその目標達成に向けての取り組みがスタートします。目標合意にはかなりの交渉時間と労力をかけたわけですが、これからが本番です。UNDPは、MDGs達成に向けた支援の中で得た知識、経験をもとに、次の15年でも多くの国々が新しい目標を達成するため、良きパートナーとして、協力を継続していきます。講義の中では、いつも学生の皆さんが事前に周到な準備をして、活発に質問される姿に感心します。質問は、政府開発援助の制度にはじまり、開発途上国でのプロジェクト現場の話、それから「どうしたら安全な水の供給が改善されるか」、「自然災害の後は何が一番課題か」など様々です。私は講義の最後にいつも学生の皆さんにこう質問をします。「あなたは次の15年間、何が地球で一番大事な問題だと思いますか。それは、どのように解決できるでしょうか。そのとき、あなたには何ができますか」と。

講義の聴講者から1人でも多く、開発途上国や地球規模の課題に向き合い、一緒に汗を流すグローバル人材の〝仲間〟が生まれることを願っております。

二瓶直樹
UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザー

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2003年、国際協力機構(JICA)入構。以降、政府開発援助(ODA)業務に従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDPニューヨーク本部にて勤務。早稲田大学大学院社会科学研究科修士卒。

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