東ティモールにおける司法支援事業~第3回 移動裁判所

2016/12/09


概要

国連開発計画(UNDP)は、2010年から、東ティモールにおける移動裁判所事業(Mobile Courts)を開始しました。移動裁判所は、裁判所が置かれていない田舎(地方)に専門家を派遣して裁判などの司法サービスを提供する事業で、国民の司法アクセスを改善するために行われています。

移動裁判所事業が行われることになった背景

東ティモールには1999年時点で一つも裁判所がなく、弁護士も存在しませんでした。その後、13の司法管轄区の内4つの管轄区において、フルタイムで働く裁判官や弁護士が勤務する裁判所が設置されたものの、田舎に居住する申立人や証人、被告人らは裁判所に行くことが地理的に困難であり、また、経済的・教育的・言語的な制約があったため、裁判所の活用は進みませんでした。

事業内容
(1) 事業内容と目的

以上のような状況を改善するために、UNDPと東ティモール政府は、2010年から、Suai司法管轄区において移動裁判所事業を試験的に開始しました。移動裁判所事業は、裁判所がない地域に出向き、裁判や調査に対する不服申立て等の司法サービスを提供する事業であり、①公式的な司法制度を東ティモールの全ての人々に身近なものとすること、②遠隔地における犯罪被害者の司法へのアクセスを改善すること、③司法制度や国法、人権に対する人々の関心を高めること、④棚上げとなっている事件を解決し、未処理の事件を減らすことを目的としています。

(2) 成果及び事業の広がり

移動裁判所の試験的な導入により、司法へのアクセスの改善や未済件数の減少等の成果があがったため、移動裁判所は2014年以降、Oecusse司法管轄区以外の全ての司法管轄区に広がりました。その結果、移動裁判所事業がはじまった2010年から2015年末まで、あわせて1143件の審理がされ、2200人以上の人々が移動裁判所を利用することができました。中でも、2015年には553件の審理が実施され、その内の82%が解決に向かうなど、移動裁判所の利用は拡大を続けています。特に、2015年に処理された刑事事件のうちの46%をジェンダーに起因する暴力(GBV)や家庭内暴力(DV)に関する事件が占め、移動裁判所がGBVやDVへの有効な対応策となっていることが示されています。

おわりに

移動裁判所の判事として活動するSuai地方裁判所のFlorencia Freitas裁判官は、「地域の構成員が法廷に参加して、どのように裁判所が機能するかを見れば、公式な司法作用に対する国民の信頼は上がる。」と話しています。移動裁判所の活用によって身の回りの問題を解決する経験を積み重ね、国民の司法への信頼が高まり、司法システムの利用が拡大していくことで、より良い「法の支配」が進んでいくことが期待されます。

まとめ:UNDP駐日代表事務所広報ユニット研修生 第69期司法修習生 水谷翔


 

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