社会的金融:インドネシア開発の新たな領域

2017/02/21


「国連開発計画(UNDP)にとって金融業界は重要なパートナー」
-UNDPインドネシア事務所のフランチィン・ピックアップ副代表と宇野智之職員がLSE Business Reviewに寄稿―

序論/はじめに
アジア太平洋諸国は、年間約440億ドルの開発資金不足に直面していると推定されており、この不足分を民間資金で補てんする必要性が高まっています。これは、本来利益優先の市場メカニズムに社会的利益を反映させるモチベーションとなりえます。

「社会的金融」は比較的新しい概念であり、金融上の利益以外に、社会・環境的便益を生む企業への投資を行う金融スキームのことを言います。

このアプローチの魅力は、従来のように寄付を通じた格差是正ではなく、富裕層が投資によって貧困層を支援することで、皆が利益を享受しうる点です。社会的金融は草の根レベルの小さな取り組みを拡張・発展させる可能性があり、また社会的企業は女性リーダーが多いため、男女格差是正にも役立つことが期待されています。

国連開発計画(UNDP)は社会的金融という新しい分野に進出する中で、新たな見識やパートナーを広く求めています。

融資モデル
市場規模や運営方針、途上国での資金調達の手段など、様々な分野で新しい融資モデルが台頭してきています。

これらモデルは、エクイティベース・クラウドファンディング、P2P(ピア・ツー・ピア)、代替通貨、スマート送金、社会インパクト投資、成果報酬型契約、モバイルマネーなど幅広く、多くの政府が直面している、公共サービス提供の資金不足の一部を解決し得ます。例えば、世界銀行は2025年までにクラウドファンディングは960億ドル市場に成長すると推計しています。

アジア太平洋地域において顕著な現象は民間資金の増加です。アジア開発銀行によれば、アジア太平洋地域全体での資金の大部分は、送金、外国直接投資、資金流入や民間貯蓄といった個人資産の形で保持されています。また、2030年までにはアジア株式市場は世界時価総額の42%を占め、さらに2050年までには最大72%を占めると予測されています。

また、J.P.モルガンやグローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)の調査によると、2015年には主要なインパクト投資機関157社が7551件ものインパクト投資150億ドルを拠出しており、2016年にはアジア市場を含み大幅な成長が見込まれています。

インドネシアと社会的金融
インドネシアは、様々な面において世界有数の国家であると言えます。インドネシアは世界4番目の人口を誇り、GDP(PPP)世界8位、さらにはG20の一員である経済大国です。しかし、近年の著しい経済発展にもかかわらず、絶対的貧困や格差、環境問題などの重要な開発課題を抱えています。

ではインドネシアはどのようにして、この経済力を開発課題に向けられるのでしょうか。

昨年、エチオピアのアディス・アベバで開催された 第3回開発資金国際会議では、海外開発援助の削減が、インドネシアのような中所得国の国内開発資源の相対的な重要性を高めていることを確認しました。そして政府が予算を割り当て、実施するだけでは不十分ということも認識されつつあります。

例えばインドネシアは、2007年に有限責任会社法第40号を公布、企業の社会的責任を義務化する最初の国となりました。そして現在は多くの企業がより厳しい社会および環境基準を遵守しています。また、最近UNDPが提携を結んだヌサ・トゥンガラ・ティムール銀行という地方銀行は、貧困者への担保無償貸し付けや、浄水へのアクセスなどのインフラ事業を支援しています。

インドネシアには近年、社会的金融のエコシステムが誕生し、UNDPはその発展を支援したいと考えています。ボストン・コンサルティング グループの報告書『The Art of Sustainable Giving』によれば、インドネシアの社会的企業セクターは、現在の社会的企業450社以上に加え、さらに1000社以上が社会的企業になることを目指しています。

このようなスタート・アップ型社会的企業は、金銭的利益のみならず、社会への良い影響ももたらそうとしています。

インドネシアでは社会貢献投資家が増えてきました。彼らは慈善活動と利益獲得の二つを追求し、社会的企業を投資資金に結びける役割を担っています。しかしどのような社会貢献投資形態がインドネシアにとって適切かは、いまだ答えが出ていません。

UNDPの3年間に渡るパプア州での地域経済開発プロジェクトの経験からは、地元住民と一緒に養蜂、ココナッツオイル、オーガニック肥料、ナツメグシロップなどの新規事業を誕生させ、所得向上へ繋げることは可能だが、これら事業をプロジェクト後も拡大・維持していくためには、一層の能力強化や市場へのアクセス拡大を通じた投資案件としての成長が重要であることが分かっています。

UNDPインドネシアは、政府やNGOなど従来の開発パートナーだけでなく、民間や金融との連携も強め、パートナーシップ基盤の多様化に努めています。2016年初め、UNDPはインドネシア金融当局である金融サービス庁(OJK: Otoritas Jasa Keuangan)とファイナンシャル・インクルージョン (貧困層などに正規の金融取サービスを提供すること) を共同で推し進めるために協定を結んでいます。

UNDPの次なる行程
社会的金融はUNDPにとって新しい領域であるため、様々な有識者と話し合うことで、UNDPの適切な役割を探り出すよう努力をしています。UNDPが社会的金融と社会的企業を支えるために有用であると予想される分野は、以下のものが含まれています:

1. 国や地方レベルにおいて政府を含む様々なアクター間のパートナーシップの連携、中立な仲介者として、アクター間の情報共有を促進

2.社会的インパクト投資や社会的金融を育む法整備など、政府への政策的アドバイスを提供

3.投資家に対して、環境社会セーフガードに関するツールや知見を提供、プロジェクトの質を保障

4. 貧困地域における有用な環境・社会的プロジェクトの発掘と開発

5. イノベーションとプロジェクト拡張戦略を起業家に提供、より質の高いプロジェクト構想を促進

UNDPは社会的金融を通じて、インドネシアの社会的企業を後押しし、その結果、貧困や不平等の緩和、インドネシアの豊かな生物多様性と環境の改善に貢献できることを望んでいます。

どうぞお気軽にコメントやフィードバックをお寄せください。