第2回 キルギス発「平和と開発」の現場レポート

2017/04/04

国連平和構築基金(PBF)を通じてUNDPキルギスのプロジェクトによりキルギス南部のタジキスタン国境近くのバザールが修復された。バザール近く住民の様子(左がキルギス系住民、右がタジク系住民)。 photo:UNDPキルギス


国連開発計画(UNDP)キルギス共和国事務所の二瓶直樹です。キルギスに赴任してから2か月半が過ぎました。キルギス政府との面談、現地に駐在する各国の大使館関係者、NGO、国連機関関係者との会議等を行い、徐々に活動を開始しております。

今回は、私がキルギスで担当するPDAというポストについて紹介します。日本語では平和・開発担当顧問ですが、英語ではPeace and Development Advisorで略称PDAと呼ばれています。PDAは、UNDPと国連本部の政務局(Department of Political Affairs:DPA)による共同事業(正式名称:Joint UNDP-DPA Programme on Building National Capacities for Conflict Prevention)で、2004年に新設されたポストです。現在は平和構築・紛争予防を推進するための専門家として、PDAの肩書を持つ職員が世界約40か国の国連常駐調整官事務所(各国に駐在する全国連機関の連携やとりまとめを行う統括事務、RC事務所と呼ばれます)へ派遣され業務をしています。

おそらくご存知の方も多い、国連PKOミッションは、内戦や紛争がある国・地域で治安維持のために派遣されます。内戦や紛争を経験した国・地域の中には、ある程度の治安が維持され、開発の段階に移行期にありながら紛争のリスクを抱えながら、開発課題に取り組む必要があります。PDAはこれら内戦や紛争の終結を経て、紛争の再発を防ぎつつ、開発を進める段階にある国々に派遣されています。PDAの業務は、紛争当事国における様々なアクター間の関係や政治情報等を収集し、紛争リスクを総合的に分析した上で、平和構築や紛争予防に資する開発プロジェクトの立案を現地国連機関に助言し、開発プロジェクトを受益国政府と連携して実施することを通じて、最終的には紛争当事国政府(中央政府及び地方政府)による能力向上を行うことにあります。

PDAには、国内政治、民族問題の分析そして、それらを元に事業の企画を行う両面での資質が求められます。私は過去中央アジアのODAに長くかかわり、地域事情にも精通していたこと、バルカン半島の民族紛争を研究した経験や過去JICA時代にインドネシアやイラクにおけるODAによる紛争後の平和構築プロジェクト支援に関与した経験、そして、国連やJICAで、多くの国際機関との連携事業に関わったことが現在のキルギスにおけるPDA業務に繋がったものと思っています。

私と同じ欧州CIS地域では、キルギスの他に、タジキスタン、ウクライナ、ジョージア(アゼルバイジャンとアルメニア含めコーカサス3カ国を担当)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ベラルーシ、モルドバの7か国に派遣されています。その他の地域ではアフリカ16人、アジア大洋州9人、中南米と中東が各4人となっています。2月にはトルコのイスタンブールにて開催された、欧州CIS地域のPDAが一堂に会する定期会合に参加し、各国における取り組みや課題について把握する機会となりました。また、ニューヨークの国連本部で1週間ほど最近PDAとして各国に配置された8人に対する新任者研修に参加する機会もありました。新任者研修といえども、他の参加者の顔ぶれは、既にベテラン級の方が多く、既に複数か国でのPDA経験者、紛争を経験した国々で民族・宗教グループ間の和解・調停を進めるための交渉や調整を経験した者も多いです。

アントニオ・グテーレス新国連事務総長は、就任直後の1月10日の安保理公開討論にて「何十年もの間、紛争への対応が優先となってきました。私たちは今後、紛争の予防と持続的な平和への取り組みを大幅に強化する必要があります」と述べ、持続可能な開発を進めるために、予防(prevention)と平和の持続(sustaining peace)の重要性を強調しています。

紛争を計量経済学で研究するCollierとHoefflerという2人の学者が、世界中の紛争当事国のデータを分析した結果、「内戦の終結を迎えた国は44%の確率で5年以内に紛争が再発するリスクにある」という指摘を今回キルギスに赴任して改めて思い出しました。キルギスでは特に少数民族が人口の大半を占める南部地域では、民族間の緊張や対立感情を感じることが多くあります。平和を持続させることが国家の開発において如何に重要であるかを頭に置きつつ、1990年そして2010年に大きな民族衝突を経験してきたキルギスで如何に活動を進めていくかを日々考えて業務を続けています。

二瓶直樹
UNDPキルギス共和国事務所、キルギス国連常駐調整官事務所 平和・開発担当顧問
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2003年に国際協力機構(JICA)入構以降、開発途上国における政府開発援助(ODA)に従事。2006-2009年JICA本部基礎教育グループ、2009-2012年JICAウズベキスタン事務所駐在員、2012-2015年UNDPニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局日本連携アドバイザー、2016年JICA本部中央アジア・コーカサス課主任調査役を経て2017年1月より現職。早稲田大学大学院社会科学研究科修士卒。

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