人間開発報告書2016刊行記念シンポジウム 「すべての人のための人間開発」の実現へ向けて-取り残された人々に光を当てる 開催報告

2017/06/22

Photo: UNDP Tokyo/Yukiko Abe


国連開発計画(UNDP)とJICA研究所は5月18日(木)、都内のJICA市ヶ谷ビルで人間開発報告書2016 『すべての人のための人間開発』 刊行記念シンポジウムを開催しました。このシンポジウムには企業、NGO、研究者、放送関係者をはじめ約100人が参加しました。

人間開発報告書(Human Development Report:HDR)
は1990年の創刊以後、毎年、「ジェンダー」や「防災」など異なるテーマの下、人間開発のあり方を時代背景に沿って検証し、実証データ分析を用いて政策提言をする国連の主要出版物です。2016年版は格差や人間開発を扱いました。

近藤哲生UNDP駐日代表が開会挨拶をし、続いてセリム・ジャハンUNDP人間開発報告書室長が基調講演を行いました。ジャハン室長は冒頭、今回の日本での刊行記念シンポジウム開催への感謝の意を述べた上で、「人間開発の核に『すべての人に平等な価値がある』普遍主義があり、それが人間開発報告書2016作成の原動力になった」と述べました。また今回の人間開発報告書2016の基本メッセ―ジ5つに関連し、以下のように述べました。

・第1に、過去25年に渡って人間開発の多くの面で目覚ましい発展があったものの、その恩恵は均一ではなく、未だ多くの人が取り残されている。

・第2に、世界を見ると、未だ特定の地域、集団で人間開発から取り残されている人々がいる。その取り残された人々が誰で、なぜ取り残されているのかを検証することが重要である。

・第3に、取り残されている人の数を特定するだけでは不十分で、人間開発のフレームワークと評価基準を変える必要がある。

・第4に、国家戦略の中に「すべての人のための人間開発」が組み込まれることが大切である。例えば、4つの複合的な国家政策、1)包括的な成長戦略のような普遍的な政策、2)アファーマティブ・アクションのような特別な措置、3)開発の強靭性、4)人々のエンパワーメントである。

・第5に、人間開発の枠組みは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と相互補完し、影響し合う存在である。

基調講演後は、ロバート・ワトキンス バングラデシュ国連常駐調整官兼UNDP常駐代表、UNDP本部で人間開発報告書諮問委員を務める勝間靖 早稲田大学教授、米良彰子NGOハンガー・フリー・ワールド 海外事業マネージャー、ゴメズ・オスカルJICA研究所研究員がパネリストとして登壇し、各々の立場から「すべての人のための人間開発」をテーマに発表をしました。

ワトキンス国連常駐調整官はバングラデシュ内において、開発から取り残された地域の人々が恩恵を受けていないことを例に挙げました。勝間教授は保健分野における持続可能な開発目標(SDGs)達成のために、エボラ出血熱を事例にグローバルヘルス・ガバナンスについて発表しました。そして緊急時のシステムについての課題に取り組むべきと提言をしました。

米良マネージャーは人間開発報告書2016の中で、社会不安、失業、安全な水の確保などについての言及がないことに触れました。その上で、すべての人のための人間開発を実現するためには政府とNGOとの役割を明確化することが必要だと述べました。ゴメズ研究員は「人間の安全保障」の面からコメントをし、その上で、いかなる状況においても見過ごされがちな取り残された人たちに焦点を当てること、また、来る脅威に備えることの重要性を強調しました。


客席からも、取り残された人の特定方法についてやアフリカでの医療格差など様々な質問やコメントが寄せられました。

最後に閉会の挨拶として萱島信子JICA研究所副所長が登壇し、反グローバリズム、普遍主義の中の異なる2つの流れがある中で、今回すべての人のための人間開発実現に向けて議論ができたことは価値のあることだと述べ、締めくくりました。

(まとめ:UNDP駐日代表事務所インターン 田中龍之介)

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