将来を変えるきっかけを。難民居住区で暮らす、南スーダン女性の夢

2018/03/08

「子どもたちの将来のためにできるだけ貯金していきたい」。夕方の市場で販売するサンブサを作りながら。ウガンダのビディビディ難民居住区で暮らす南スーダン出身のマグレット・ポニさん(32歳)

「自分ができること、やりたいことは最初から分かっていたわ。でも、ここでどうやって実現したらいいのかがわからなかった」。南スーダン出身の3人の子どもの母、マグレット・ポニさん(32歳)は、サンブサ(サモサ)を包む手を休めることなく、つぶやくように言いました。「『キャッシュ・フォー・ワーク』で受け取った賃金が、難民居住区で自分のお店をもう一度開くという夢をかなえてくれたんです」。

マグレットさんは2016年11月、子どもたちと一緒にウガンダ北部ユンベ県にあるビディビディ難民居住区に逃れてきました。故郷南スーダンでの戦闘が激しくなり、国にいられなくなったためです。2013年の戦闘勃発以来、多くの南スーダン人が隣国のウガンダに避難してきています。2018年1月時点で、ウガンダ全体で受け入れている難民の74.4%を南スーダン出身者が占め、その数は登録されているだけで1,037,898人にのぼります(2018年1月時点)。そのうち82%が女性か子どもです。

ウガンダは、難民の権利に関する法整備が最も進んでいる国の一つと言われています。難民や庇護申請者は、ウガンダ政府により土地の権利と労働許可を与えられ、移動の自由や社会福祉も保証されます。しかしこうした政策があっても、難民を大量に受け入れている地域が受ける影響は甚大です。難民と地元住民の間での水や労働機会の取り合い、住居づくりや燃料に不可欠な木材の不足。地域全体のごみやトイレのずさんな管理は、病気の蔓延にもつながっています。

ビディビディ難民居住区で暮らす難民は、2018年2月時点で287,087人。地域住民もあわせると、ウガンダのほとんどの街の人口を上回ります。ここでUNDPは2017年4月から日本政府の資金拠出を得て、難民と地域の住民に対し、一時的な雇用機会を提供する「キャッシュ・フォー・ワーク」事業を、NGOセーブ・ザ・チルドレンとともに実施しています。本事業では、難民と受け入れ地域住民両方の代表者、地元行政などの関係者などと議論を重ねて内容を決定した公共事業を実施し、参加者に賃金を支払います。30日間の労働の対価として参加者が受け取るのは約120ドルに相当する434,691ウガンダシリング。事業内容は難民居住区の道路整備、植林、ごみ収集所の整備、公共の場所の掃除などさまざまですが、いずれも現地の生活環境向上に貢献するものです。500人の参加者のうち60%は女性で、この中には戦闘で夫を亡くした未亡人や、ジェンダーに基づく暴力の被害者も含まれます。

マグレットさんも、南スーダンの戦闘で夫を亡くした女性の一人です。夫の死後、子どもたちを女手ひとつで育てるために、故郷の村でサンブサを販売する小さなお店をはじめました。しかしウガンダに避難してきてからは、生計を立てる術は何もなくなってしまいました。「このプロジェクトのことを聞いたとき、大きなチャンスだと思いました。自分の仕事をまた始められるかもしれない。参加できると決まったときは、とてもうれしかったです」。最初の賃金を手にした彼女は、すぐに準備をはじめ、ビディビディ難民居住区の自分の小屋の前で、2017年12月からサンブサの製造と販売を始めました。サンブサは朝食やおやつにぴったりの、ウガンダでも南スーダンでも人気の軽食です。マグレットさんは毎日朝晩2回サンブサを揚げ、自宅前や市場で、1つ100ウガンダシリングで販売しています。難民からもウガンダ人の地元住民からも人気が出て、最近はウガンダ人のお客さんと会話をするために、地元の言葉の勉強もはじめたと言います。「一日の売り上げは約14,000ウガンダシリング(約4ドル)。この売り上げから、翌日の材料費や、家族の食費、子どもたちの学費などを捻出しています。それでも、毎月180,000ウガンダシリング(約48ドル)を貯金できるようになりました。子どもたちの将来のために、なるべくお金を貯めたいのです」。

ビディビディ難民居住区近くで生まれたウガンダ人のシバ・サウダさん(22歳)も、「キャッシュ・フォー・ワーク」に参加した女性のひとりです。30日の植林活動は、地元住民である彼女にとって、南スーダン出身の難民たちと親しくなる良い機会でもあった、とシバさんは振り返ります。シバさんは活動で得た賃金を、元々運営していた仕立て屋の材料費に充てました。「いまは借り物のミシンを使っていますが、いつか自分のミシンがほしいです。新しいミシンは280,000ウガンダシリング(約75ドル)くらい。自分には高価ですが、いまの目標です」。

キャッシュ・フォー・ワークの活動後、参加者はセーブ・ザ・チルドレンが保管していた賃金の残り3分の1を受け取って事業への参加を終了するか、小規模起業を目標にしたビジネススキルの研修を受け、その3倍の金額を元手に起業するかを選択します。マグレットさん、シバさんも研修を受け、そこで得た知識を自分たちの経営に生かしていく予定です。UNDPはビディビディ難民居住区やその周辺で、ジェンダーに基づく暴力を経験した女性の生活再建のサポートを行ってきました。キャッシュ・フォー・ワークで得た収入や小規模起業支援により、女性たちはより持続可能な生活の手段を見つけ、新たな希望をもって将来に向けて歩き出しています。

本事業は難民や国内避難民の支援としてヨルダン、イエメン、コンゴ民主共和国などで実施されてきたUNDP独自のアプローチにもとづき実施しています。

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松本 夏季(まつもと・なつき)
UNDPウガンダ事務所/UNVコミュニケーション・メディアスペシャリスト

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