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学生・若手社会人など約150人が集まり、大盛況となりました。  写真: ©️toboji

 

2030年、どんな世界に暮らしていたいですか。

どんなことがあたりまえになっていてほしいですか

6月16日(土)、UNDPはアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京にて、持続可能な社会をデザインするイベントを開催しました。学生・若手社会人など約150人が集まり熱気が溢れる中、開会の挨拶として、外務省で持続可能な開発目標(SDGs)推進の中心となっている甲木浩太郎地球規模課題総括課長より、「2030年には、若い皆さんが社会の前線に立っていることになります。柔軟に変化できる若い皆さんにとても期待しています」と、エールが送られました。

第1部では4つのトークショーを行い、独自の方法で社会課題に取り組む社会起業家や学生12名が取り組みについて語りました。

 

セッションA「デザインのチカラ」

デザイン関連分野で活躍する若手3名の発表をもとに、デザインが持つ可能性、重要性について議論が行われました。モデレーターを務めたのは小田部巧さん(博報堂 ストラテジックプラニングディレクター)です。

  • ナカタマキさん(Maki & Mpho LLC 共同創業者・代表)はアフリカの柄と日本のモノづくりの要素を融合した、インテリア・ファッション雑貨のデザインブランド「MAKI MPHO(マキムポ)」の企画・販売および「アフリカの視点」に重点をおいた取材・執筆・発信活動を行っています。課題解決において、複雑性の受容および理解が重要と強調しました。

  • 大田雄之介さん(MUKUセールスプロモーター)は福祉とアートの融合に取り組んでいます。知的障害者のアート作品を日本の熟練した職人とコラボレーションし、ネクタイ、洋傘、ブックカバー、ボールペンなどのプロダクトに落とし込み、企画・編集のチカラを通して障害者と健常者をつなぐネットワークハブとして、持続可能な共生社会を目指した活動を行なっています。

  • 加藤翼さん(100BANCH コミュニティ・マネージャー)は現在、株式会社ロフトワークにて、Panasonicと共同運営するインキュベーションスペース「100BANCH」にてコミュニティ・マネージャーを務めながら、様々な社会課題の解決に対してプロジェクト型のアプローチで取り組んでいます。
デザインがキッカケになれば

それぞれの分野で活躍する三名のスピーカーですが、デザインが持つ最大のチカラとは「キッカケ」を作り出すことだと言います。

  • マキさん「たとえばデザイナーである南アフリカ人のムポが手がけるマキムポの柄にはそれぞれにストーリーがあり、柄というアートの力で消費者とつながることで、新しい対話が生まれ、理解や行動が生まれるきっかけになります」
  • 大田さん「まだまだ知的障害者アートは日本では聞きなれない分野ですが、アートを通して障害者の人たちのことを知るきっかけになると思います」
  • 加藤さん「複雑性を扱うことができるのがアート。社会課題を解決しようとするときに、色々な場面で言語など壁にぶつかってきました。デザインやアートは一つの言語であり、社会課題に取り組む時に一つのツールになります」
多様性を認め、受け入れること

キーワードとして挙がったのは相手をそのまま受け入れることです。

  • 大田さん「一方的なコミュニケーションではなく、当事者と会うことが大切」
  • 加藤さん「複雑性、多様性を認め、受け入れることが必要。フラットに人や物事を見て、相手に拍手を送るべきです」
  • そこで、気をつけなければいけないのは人にラベルを貼ること。「その瞬間に人がモノ化されてしまう気がする。例えばある個人や集団を『貧困』というラベルで見てしまうのは、非常に危険です」とマキさんは語ります。
明日から「知る」ことから始める

では明日からどうすればよいのでしょうか。

  • 大田さん「相手のことを知らずに判断することを避けなければいけません。たとえば、知的障害者について、コミュニケーションしたことがないのに、判断しないことが大切です。MUKUでは出会う場所を提供し続けたい」
  • 加藤さん「生活をしている上で感じる社会の違和感を共有することを始めてほしい。それが変化につながる」
  • マキさん「会議や講演会などで、『最初に質問』すること。それを意識すると、アクティブリスニングをせざるを得ず、結果的に自分自身が当事者として行動することにつながると思います」
キッカケを探す

「デザインやアートは、「問い」を立てることから始まるので、普段気になったことや違和感、それについて調べることを大事にするということから行動を始めてみては?」とモデレーターの小田部さんは締めくくりました。

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Session A「デザインのチカラ」の登壇者とモデレーター ©️toboji

 

セッションB 「自分を発揮できる社会」

セッションBでは、どんな個性を持っている人であれ、それぞれが自分らしく生き、自分を発揮できる社会とはどんなものか、それには何が必要かということについて話しました。東由紀さん (アクセンチュア 人事部 シニア・マネジャー)がモデレーターを務めました。

スピーカーは以下の3名です。

  • 日本に逃れてきた難民が個性やスキルを発揮し、自らの未来をデザインできる社会をつくりたいという山本菜奈さん (NPO法人WELgee 就労事業統括)
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  • LGBTに関する情報発信や制度構築を通じて、どんなジェンダーやセクシュアリティでもフェアに生きられる社会を目指す松岡宗嗣さん(一般社団法人fair 代表理事)
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  • 医療人として幅広い視野を持ち、社会に行動を起こし貢献したいという笠井俊佑さん (国際医学生連盟 (IFMSA) JAPAN 代表)
最初から専門家だったわけでない

3人とも、自分の身近な出来事がきっかけとなり活動を始めたと言います。

  • 山本さん「出会ったコンゴ難民の青年が強い想いと様々な才能にあふれとってもかっこよかったので、彼らの才能を活かせる就労機会をつくりたいと思いました」
  • 松岡さん「ゲイの当事者である自分の周囲には、様々な困難に直面しているLGBTがいました。自分が当事者としてオープンに社会に出て行くことで偏見やステレオタイプをなくしたいと思いました」
  • 笠井さん「災害時の医療体制や性感染症の問題など、医療と社会は密接に関わっていると思います。自分の最大の関心事である感染症が起きる背景にはどのような社会課題があるのか勉強したくて、活動に参加しました」
今この場所からできること

3人は、誰でも今いる立場からできることがあると言います。

  • 松岡さん「LGBTを理解・支援したい人を『アライ』(英語で「同盟」や「味方」を意味する「アライアンス」と語源を同じくする言葉)と呼び、増やしたいと思っています。人間は一人ひとりが違い、その違いを全て理解することはできないけれども、味方になることはできる。誰もが誰かの『アライ』になれるんです」
  • 笠井さん「医療・保健の問題は、高齢化社会で生きていくうえで切っても切り離せない問題。親や先生、そして企業人として、子どもや生徒、従業員などの健康を守り予防に取り組むなど、各自にできることがあります」
  • 山本さん「WELgeeでは難民について話すのではなく、難民と共に話そうということを大切しています。まずは彼らに直接会って、メディアなどでは届かない声、見えないものに触れてみてください」
見えない問題を可視化する、そのための第一歩

3人の共通項は、見えない問題を可視化していることだと、モデレーターの東さん。「社会の課題はたくさんありすべてに関わることはできないけれども、自分の興味関心から第一歩を踏み出し、それを軸に広げていってほしい」と締めくくりました。

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Session B「自分を発揮できる社会」の登壇者とモデレーター

 

セッションC「環境とビジネス」

環境や社会問題への取り組みと課題、そしてビジネスとの共存について議論が繰り広げられました。セッションAに続き、小田部巧さんがモデレーターを務めました。

  • 萩生田愛さん (AFRIKA ROSE 代表)はケニアで栽培されているバラを日本に直輸入しています。2012年に150人の従業員で始めた当ビジネスは、2016年には1,830人になりました。従業員には24時間体制の病院無料、昼食無料、奨学金制度など福利厚生も提供しています。

  • 新荘直明さん (Climate Youth Japan 国内政策事業統括 / NPO法人アラジ 理事)は、環境省・経済産業省への政策提言や、西アフリカのシエラレオネ共和国で就労支援を行うNPO法人アラジの理事として、国内イベントの責任者を務めています。

  • 松尾 沙織さん (SDGsライター/ダイベストメントコミュニケーター)は、フリーランスのライターとして、「SDGs」や「サステナビリティ」「エシカル消費・金融」を紹介する記事を執筆。国際環境 NGO 350.org Japanのダイベストメントコミュニケーターとして企業の脱炭素化に取り組んでいます。
犠牲にしないこと
  • 萩生田さんは、「アフリカローズ」事業の成功理由として現地のバラの圧倒的な品質があると言います。そして、ある意味、一方的である募金などではなく、「消費サイクルの中にビジネスがあるのが大切」と語りました。新荘さんは「環境のために生活の楽しみを犠牲にするのではなく、楽しみながらできるということが大事」、松尾さんはSDGsが持つ重要性として、「SDGs自体が環境とビジネスのつなぎになる」と強調しました。
日本からでもできることがある
  • 途上国でのソーシャルビジネスなど、現地に行かなければできないこともありますが、日本にいてもできることがあると3人は言います。萩生田さん「エシカル消費を実践すること。たとえばオーガニックコットンを買ったり、プラスチックを買わないなど身近なことから始めることが大切」。そして「気になったら自分で検索してみる(新荘さん)」、「自分から発信してみる(松尾さん)」ことが変化のきっかけになると訴えました。
環境を良くするビジネス

小田部さんは3名の活動に対して、「環境とビジネス」ではなく、「環境を良くするビジネス」なのでは話し、「買い物という日常的な行動で、生産と消費という、ビジネスと生活をともに持続可能にしていける機会をつくっていくことが重要」と締めくくりました。

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Session C「環境とビジネス」の登壇者とモデレーター  写真:©︎toboji

 

セッションD 「ITが変える世界」

IT技術がどう世界を変えられるかについて議論が交わされました。スピーカーは、以下の3名です。

  • ITと途上国への旅行が好きで、技術をどう国際開発に使うかをテーマにJICAで活躍する狩野 剛さん (国際協力機構[JICA]職員/ICT4D.JP代表)

  • Fintech系ベンチャーで事業開発を行い、金融インフラの整備やブロックチェーンの利用を通じて、人々の可能性を切り開くことに貢献したいという上坂 明日香 さん(Omise Japan ビジネスデベロッパー)

  • ソーシャルビジネスに取り組みたい人に資金が流れるよう、インパクト投資の普及や市場構築にまい進する伏見崇宏 さん(C4 ディレクター)
Purposeとの出会い方

モデレーターの加治慶光さん(アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーター)からは、3人の目標や夢(Purpose)は何か、そしてそれにどのようにして出会ったかという問いかけがありました。

  • 狩野さん「IT技術だけが発達しても目標がないと有効活用できない。目標があればIT技術でできることが広がる。Leapfrogといって、日本で何段階も経てようやく実現されてきたことが、途上国では一足飛びにできることがあり、可能性を感じています」
  • 上坂さん「大学では国際開発学を学んでいましたが、先進国がやってきたことをお手本に途上国が成長するというモデルに疑問を感じていました。多くの人にリーチするために、金融のインフラを創るスタートアップの立場からアプローチしてみようと思いました」
  • 伏見さん「日本に対しての危機感を強く感じていました。全ての資本(金資本、人的資本、社会資本、自然資本)のすべてにプラスを生み出す『四方良し』の枠組みで、社会課題解決に向けた投資ができる世界をつくりたいです」
日本で取り組むプラスマイナス

3人とも、世界の課題を見てきてそれを解決する方法を日本で考えているのが共通項、と加治さん。では日本で取り組むことのメリット、デメリットは?

  • 伏見さん「これまで、永年勤続型の日本企業では違う『知』と『知』が出会う機会は少なく、イノベーションは起きにくい風土でした。でも、今、日本は変革が進み転換期を迎えている。そんな転換期に新しいことに取り組めることは価値が高いです」
  • 上坂さん「日本人は助け合いが得意だという良さがあリます。それを活かしつつ、慣習などをよりクリティカルに見られるようになれば、人や組織の連携が進んで大きな効果が生まれると思います」
  • 狩野さん「日本では昔から現金文化が続く一方で、世界は劇的に変化しています(例:ケニアのM-PESA)。日本がそれらの変化に取り残されていると感じているのだが、日々接する情報の大半が日本語のためか、世界の変化に多くの日本人が気づいていないことに対して危機感を感じています」
ミレニアル世代への期待

「モノの所有に興味がない・技術に親和性が高い・世界の課題を知っている」というのが特徴のミレニアル世代に非常に期待している、と加治さん。「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」という名言を引用してセッションを締めくくりました。

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Session D 「ITが変える世界」の登壇者とモデレーター

 

「My SDGs」と「未来のあたりまえ行動宣言」

第2部のワークショップは、博報堂コンサルティングで人材教育事業に携わる柏木望さんがファシリテーターを務めました。まず、参加者一人一人が取り組んでみたい目標や、2030年に「あたりまえ」になっていてほしいこと、それに向かって自分が明日から始める行動を具体的に考え、「My SDGs」として記入しました。参加者が掲げるMy SDGsの写真ページはこちらのリンクから。

SDGs x Youth 2 - MySDGs

参加者が記入した「My SDGs」。写真はスライドしてご覧いただけます。   |     写真:©︎toboji

続いては、6人1組のグループをつくり、輪になってディスカッション。ここで登場したのが、「えんたくん」。段ボールでできたちゃぶ台サイズの円形の板です。これを輪になったグループ全員の膝に置き、上にのせた用紙に次々にアイディアを書き込み、考えを深めていきます。膝と膝をつきあわせると、初対面の参加者同士でも場が暖まります。22のグループがそれぞれ「えんたくん」を囲む姿は壮観でした。

ファシリテーターの柏木さんからは、「オープンマインドでどんどん自由に発言」「半分楽しく、半分真剣に。活発な議論で盛り上がって、でも時には真剣に」「意見を聞くだけではなく互いにコメントし、対話から新しいモノを生み出していく」とワークショップで意識をする3つの約束事を説明しました。

理想とする「あたりまえ」の世界を実現するために、乗り換えるべき壁と、そのための行動とは?

各グループが自由に語り、自由にボードに書き込んでいきます。2030年に向けて明日から自分が、ワークショップに参加した仲間達がはじめることができる行動宣言としてまとめ、発表しました。「未来のあたりまえ行動宣言」の写真ページへのリンクはこちら

SDGs x Youth 2 - My SDGs

未来のあたりまえ行動宣言。写真はスライドしてご覧いただけます。 |     写真:©︎toboji

 

最後に、日本でSDGsの推進をリードしている各界の方々からコメントをいただきました。

稲場 雅紀さん (SDGs 市民社会ネットワーク専務理事): 素晴らしい行動宣言をありがとうございました。どの宣言にも「誰一人取り残さない」という、SDGsの一番大事な精神を感じることができました。一方、人間は善悪が半々で出来ているもので、しかも、善と悪は画然とは分けられません。貧困や暴力といった「悪」の壁にぶつかったときに、くじけずにSDGsの実践を続けていくため大事なのが、「人権」と「想像力」だと思います。「人権」があってこそ「悪」とも共存でき、「想像力」があってこそ、壁を乗り越えられるのだと思います。

春日 文子さん (フューチャー・アース日本事務局長): 人も社会も単純ではありません。自分とは違う立場や異なる考え方を持つ人を複雑さを含めてそのまま受け入れ、自分もそのままの姿で発信していくことが大切です。でも、他者とコミュニケーションを取る上で、共通点を探ることは有用です。アートやスポーツ、ITは言葉を超えるひとつの言語になりえますが、そこに科学も加えたい。12年後はすぐ目の前であり、今日という日の連続した先にあります。

加治慶光さん(アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーター): SDGsが達成できなかったらどうなる?人類は滅びてしまいます。人類を救えるにはあと12年しかない。SDGsはバラバラに存在していた人々の中にある良心を紡いで人類の大きな課題に挑むうねりを創る人類最初最後の取り組みです。正義の逆はなんでしょうか?それはもうひとつの正義。この気持ちをもって人と出会い、つないでいければ素晴らしい未来になるはずです。

川廷昌弘さん(博報堂DYホールディングス CSR推進担当部長): 今日の参加者に対して、柔軟な発想力に感銘を受けました。若いからこそある柔軟力や瞬発力があります。今、地球は危機に瀕しており、共通の目標が必要です。SDGsは現在の日常で考えるべきあたりまえのことだけど、2030年にはSDGsが必要ないことがあたりまえになっていないといけない。SDGsがない社会をみんなで目指していきましょう。

最後に、UNDP駐日代表の近藤哲生が「今回のイベントでは生活に根付いた、若者が考えた行動のアイディアがたくさん出てきました。SDGsの精神ではだれも置き去りにしないということが重要ですが、一番よい方法は一番置き去りにされそうな人のところにいくことです。一番後ろにいる人たちを救うことでSDGsも達成に近づけると思う」と挨拶し、会を締めくくりました。

このイベントを通じて多くの人と人が出会ったことから、また新たなアイディアやエネルギーが生まれたのではないでしょうか。ここから生まれたたくさんのアイディアの種が2030年に向けて育っていくことを期待しています!

イベントの様子は以下のUNDP Flickr pageからご覧いただけます。

2nd SDGs x Youth

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