UNDP人間開発報告書2007/2008刊行記念シンポジウム 「気候変動の危機に挑む」 (UNDP主催、北海道新聞共催)

2010/05/13

基調講演を行う紺野美沙子UNDP親善大使


開催報告

国連開発計画(UNDP)は、気候変動が開発途上国の人々に与える影響と、さらなる気候変動を防ぐために必要な施策を、地方自治体や市民レベルで検討す るために、日本政府の支援を受けて日本各地でシンポジウムをシリーズで実施しています。2010年2月26日(金)、シリーズの第4回目にあたる「気候変 動の危機に挑む~地域から考える持続可能な開発」(UNDP主催、北海道新聞共催)が、北海道新聞帯広支社2階大会議室にて開催され、100名を超える参加者が集まりました。

2008年に環境モデル都市に制定された帯広市では、官学民それぞれの立場で環境への関心が高まっています。シンポジウムは、「気候変動問題を解決する ためには、”Think Globally, act locally”という言葉のとおり、帯広市のような知見と意欲を持つ地方都市からの情報発信が大事なのです」という村田俊一UNDP駐日代表による挨拶 で始まりました。

紺野美沙子UNDP親善大使による基調講演
紺野美沙子UNDP親善大使は、タンザニア、モンゴルや東ティモールなど、これまでの海外視察で訪問した国で実施されているUNDPの気候変動対策プロ ジェクトを各地のエピソードを交えて紹介しながら「難しいかもしれないけれど、途上国では深刻な気候変動の影響を受けている人々がいることを知ってほし い」と訴えました。「2002年に視察に訪れた東ティモールの1人当たりのCO2排出量は年間0.2トン、それに対し日本では年間9.9トンです。化石燃 料の恩恵にあずかることのできない貧しい人々が、先進国の招いた気候変動の被害に真っ先に直面するという矛盾を知ってほしい。少ないもので豊かに暮らす、 環境に配慮する意識を持つ人々を増やすことが、この危機的な地球環境を改善するためには必要なのです」と呼び掛けました。

最後に「母が北海道出身で、子どものころから食や文化を通じて北海道の豊かな自然と触れ合ってきました。今朝は十勝川に集まる白鳥たちに感動し、いつまでも白鳥が飛来し続けてこられるような環境を守っていかなければならないと強く感じます」と結びました。

パネルディスカッション
続いて、村田俊一UNDP駐日代表、八重柏泰志 帯広市市民環境部環境モデル都市推進室次長、梅津一孝 帯広畜産大学教授、菅井貴子 フリーキャスター・気象予報士・防災士がパネリストとして登壇し、コーディネーターは高田正基 北海道新聞帯広支社報道部長が務めました。

冒頭に高田コーディネーターが「まず、本日のシンポジウムにおいて、気候変動は私たちだけの問題ではないこと、私たちが便利な生活を営む一方で被害を受 けている人がいること、そして私たちの努力が気候変動を食い止めることにつながるということを共通理解としたいと思います。」と述べ、各パネリストから発 表が行われました。

村田俊一UNDP駐日代表は、気候変動は中長期にわたり途上国の人間開発に影響を及ぼすことを『人間開発報告書2007/2008』に記されている事例を 取り上げて説明しました。そしてグローバル化の進む中で人間開発の実現なくして、日本の豊かな生活を維持することは難しくなるだろうと説明し、「私たちは 国内で排出量を抑える努力をしながら、同時に途上国が気候変動に適応できるように支援する必要があるのです」と訴えました。

さらに、2009年12月に開催された第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では途上国と先進国の意見が分かれたが、途上国開発において も、より持続可能な社会を構築する必要があると指摘しました。「第二次世界大戦後に経済を急速に成長させた日本は、環境問題に関する豊富な知見を有してい ます。その知見を生かした技術移転を通じて、途上国支援にあたることが国益にもつながるでしょう。そして、日本政府がリーダーシップを取ることができるよ うに地方行政もサポートしなければなりません。自然と共生する帯広市の暮らしは非常に先進的であり、皆様の力が必要なのです。」と環境モデル都市である帯 広の可能性について言及しました。

八重柏泰志 帯広市市民環境部環境モデル都市推進室次長は、帯広市の持続可能な環境管理と低炭素社会へシフトするための取り組み事例について発表しました。帯広市の CO2排出量は1人あたり年間8.44トンと全国平均の9.9トンを下回っていること、ゴミのリサイクル率が年間30%と全国の平均を上回っていることを 紹介しました。そして、課題となっているのは家庭部門・産業部門で、CO2排出量を2030年までに30%、2050年までに50%の削減目標を掲げる帯 広市のアクションプランとそのために実施するグリーンベルト育成、リサイクルの強化、バイオマスなどの新エネルギー施設の建設計画などを紹介しました。

さらに来場者に対し、「家庭内での水の使い方や調理時の工夫など、生活スタイルから無駄を省くことで、日本全体で3-5%の削減が可能になります。楽しみながら、無駄を省く生活スタイルを進めてほしい」と語りかけました。

梅津一孝 帯広畜産大学教授は、農畜分野における排出削減および新エネルギーの取り組みについて発表を行いました。世界で排出される温室効果ガスの内訳のうち農業部 門が13.5%、林業部門が17.4%と、一次産業が温暖化に与える影響は少なくないこと、そして世界の農業部門の排出量のうち、先進国が35%、途上国 が65%を占めていることを示し、排出削減における農畜分野の重要性を示しました。さらに、「COP15以後、EUや25%の削減目標を掲げた日本の政策 が米国や途上国の排出削減に対しても大きな役割を果たすのです」と述べました。

続いて北海道で取り入れられている風力、地熱、水力および太陽光を利用したエネルギーのほかに、帯広畜産大学が力を入れている木材ペレットや家畜の排せ つ物を利用したバイオマスエネルギーについての紹介を行いました。北海道は、日本最大級のバイオガスプラントを含めたカーボンニュートラル*という特性を 持つバイオマスを利用する11の施設を有しており、農業部門、運輸部門でこれらの施設でで得られたエネルギーを有効利用する構想を紹介しました。

*生成時、使用時において排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であること。

菅井貴子 フリーキャスター・気象予報士・防災士は、 気象予報士の立場から、北海道の気候の現状について解説を行いました。特に、近年は「観測史上初、もしくは一番」と記録される気象データが非常に多く、こ れは気候が変化している証拠だと指摘し、帯広はここ5年間で20回ほど「観測史上一番」を記録するなど、確実に気候の変化が確認されていると報告しました。そして、気候変動の影響によって低気圧が生じ、あまり降雪のない十勝・帯広でも雪が増える傾向にあり、農作物の生態に変化が見られたり、雪対策が必要 になっていくのではないかと懸念を示しました。

同氏はさらに、「エネルギーは太陽の恵みです。北海道有数の日照時間を持つ帯広は、太陽光エネルギーやバイオマスエネルギーなどの再生可能なエネルギーを地域ぐるみで生かしてほしい」と締めくくりました。

パネリストの発表後に行われたディスカッションでは、高田コーディネーターがCOP15 で見られた途上国と先進国の意見の対立、それに対してどのように行動すべきかについてパネリストに意見を求めました。八重柏次長からは、「帯広市では、リ サイクル率をさらに40%までにあげたいと考えています。環境家計簿を作成するべく市民と取り組んでいますが、エコロジーを楽しんで豊かな生活を追及して ほしいと思います」、菅谷キャスターからは「気候変動がこのまま進むと、強い台風の被害やゲリラ豪雨による農業への影響が心配です。さらに、警報システム の発達していない途上国での台風の被害が懸念されます。地球は子どもたちから借りているもの、自分たちの排出量を把握して、子どもたちとともに削減に取り 組んでほしい」とのコメントを得ました。

続いて、「25%の削減目標を掲げた日本政府のイニシアティブに対し、市民に負担をかけることなく行政や民間部門が目標達成することについて」、さらに 「国際協力では、何が必要とされているか」という高田コーディネーターからの問いかけがありました。これに対し、村田代表からは、「国民の意識を高めるた めには、環境保護を含めた現代社会の問題を受験の必須科目に取り入れるなど、教育の構造改革が必要です。また、民間部門では、消費者とともに持続可能な社 会をつくるための企業の戦略と社会貢献が問われる時代です。途上国開発と環境保護を両立するにはバランスの良い経済成長を実施するべく、日本企業の知見を 生かした技術移転が必要でしょう」との発言がありました。また梅津教授は、「十勝で得られたバイオマスエネルギーを生産現場だけでなく、家庭に生かすため の取り組みが必要です」と述べ、「国際協力について、帯広畜産大学ではJICAと協力してキルギス共和国でのバイオガスプラントの普及などの技術支援を 行っています」と協力事例の紹介がなされました。

最後に高田コーディネーターは、「本日は私たちの社会、そして地球がどんな危機的な状況にあるのかをあらためて認識できたと思います。CO2排出削減は 自分たちの暮らす地球環境を守るだけでなく、途上国の人々の生活を守ることになることを、ぜひ、ご家庭や職場の方々にも伝えて、協力し合う人々の輪を広げ てほしい」と結び、シンポジウムは閉会しました。

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