MDGsフォローアップ会合・サイドイベント「ミレニアム開発目標(MDGs)の達成とビジネスの可能性」 開催報告

2011/06/03

パネルディスカッションの模様 PHOTO:UNDP TOKYO


日時 : 2011年6月3日(金)
場所 : 国際連合大学本部(UNハウス)3階 ウ・タント国際会議場
主催 : 国連開発計画(UNDP) 共催:世界銀行、国際金融公社
後援 : 外務省、経済産業省、日本貿易振興機構

開催趣旨
2010年9月、国連本部で開催されたミレニアム開発目標(MDGs)首脳会合では、目標達成のために政府のみならず市民社会、民間セクターなどによる取り組みを加速するよう求められました。民間セクターでは既に貧困層が直面する社会課題にビジネスを通じて解決する取り組みが進む中、貧困層を消費者としてだけでなく、生産者や労働力として取り込むインクルーシブ(包括的)ビジネスが、貧困層と企業の双方にメリットをもたらすモデルとして注目を集めています。国連開発計画(UNDP)、世界銀行、国際金融公社(IFC)は、6月2、3日に東京でのMDGsフォローアップ会合開催を機に、そのサイドイベントとして民間企業、途上国、日本政府関係者を招いてシンポジウムを開きました。MDGs達成に対する日本の民間セクターによる貢献の可能性を明らかにし、インクルーシブ(包括的)・ビジネスを展開するための実践的なパートナーシップ構築について議論を行いました。

当日の概要
MDGsフォローアップ会合・サイドイベント「ミレニアム開発目標(MDGs)の達成とビジネスの可能性」には企業、政府機関、大使館、マスコミ、大学関係者、学生ら約300人の参加がありました。外務省の伴野豊・副大臣からの冒頭あいさつに続き、第1部では、UNDPのヘレン・クラーク総裁と世界銀行のマフムド・モヒルディン専務理事が基調講演を行いました。第2部では、上智大学の岡田仁孝・国際教養学部長のファシリテーションのもとパネル・ディスカッションが行われました。また、シンポジウムの会場外では、ヤマハ発動機やオリンパス、ソニーなど約20の企業・団体が、各々のMDGs達成に向けての取り組みを紹介するパネル展示や資料配布を行い、大変賑わいました。当日のプログラムはこちらからご覧いただけます。

冒頭あいさつ
6月2、3日にMDGsフォローアップ会合を主催した日本政府を代表して、伴野豊・外務副大臣が冒頭あいさつに立たれました。日本政府がこれまで、UNDPなど国際機関とも連携してMDGs達成に向けて取り組んできた経緯を紹介した後、今後、民間部門との連携の重要性についても強調されました。また、3月11日の東日本大震災を受け、政府、国際機関、民間、市民団体が一体となって試練に立ち向かう必要性を再認識された点について触れ、民間企業が、途上国向けに開発した製品が、日本の被災地で役に立った事例紹介もされました。最後に、外務省が官民連携を強化していくための「MDGs官民連携ネットワーク」発足を発表されました。

※伴野副大臣のスピーチ(日本語)はこちらから全文読んでいただくことができます。

基調講演
UNDPのヘレン・クラーク総裁と世界銀行のマフムド・モヒルディン専務理事が基調講演を行いました。発言要旨は下記の通りです。

ヘレン・クラークUNDP総裁
MDGsを達成する上で政府の役割は非常に重要ですが、政府だけで必要とされる開発を行うことはできません。民間セクターも含む幅広い機関とのパートナーシップが必要です。経済成長は開発において不可欠であり、その大部分を民間セクターが担っています。零細企業から大企業、多国籍企業までそれぞれが、MDGs達成につながる、成長を生み出すことができます。

ビジネスがMDGs達成に貢献するには、いくつかの方法があります。第1に企業は貧しい人々を自分たちの企業活動の中核に取り込む(生産者やビジネス・パートナーとしての取引、労働者としての雇用、市場での顧客としてなど)ことで、貧しい人々に利益をあたえることができます。多くの成功事例がありますが、例えば、タンザニアのA to Z Textile Millsは、殺虫剤を織りこんだ蚊帳生産で、マラリアの感染を防ぐとともに、女性3000人の雇用を生み出しました。これは日本の住友化学が(A to Z Textile Mills にマラリア感染を防ぐ蚊帳の生産技術を提供し、合弁会社をつくるなど貢献して)成し得たことです。

2番目に企業が開発する、低価格で革新的な技術もMDGs達成に向けて、大きな貢献をしています。低価格の通信技術で遠隔医療を可能に、LEDランプのおかげで貧しい子どもたちも夜に宿題ができるようになりました。携帯電話やインターネットで、農業従事者や漁師たちが、市場の適正価格も見られるようになりました。

3番目は、企業の社会的責任、CSR活動です。より幅広いインパクトを与えるようにそのスケールを広げていく必要があります。

UNDPのビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA) は、民間セクター、政府、国連のグローバルなパートナーシップで、開発の利益を広げるインクルーシブ(包括的な)・ビジネス・モデルを企業が採用するように支援しています。BCtAに参加している企業は、貧困層への利益は、地元コミュニティの利益であると認識し、雇用創出、農家の生産性と所得向上に貢献し、人々が技術にアクセスできるように支援しています。

UNDPは今年、トルコ政府の支援を受け、トルコのイスタンブールに「開発のための民間セクター国際センター」を開設しました。ここからインクルーシブ(包括的な)・ビジネスの成功事例を示し、民間セクターとの戦略的な対話を促進していきます。

MDGs達成に向けての取り組みは、企業のフィランソロピーだけではなく、新しい市場の開拓、バリューチェーンで新たなプレーヤーを取り込みます。途上国でのビジネスは各企業の利益にも、途上国で暮らす人々の開発(生活向上)にもつながるものです。

※ヘレン・クラーク総裁のスピーチ(英語)はこちらから全文読んでいただくことができます。

マフムド・モヒルディン世界銀行専務理事は、開発とMDGs達成における官民の取り組み機会について説明しました。最初に人口増加や一人当たりの所得向上により途上国では市場が革新的に成長していること、またアフリカで消費者市場として成長する潜在能力があることが、貧困削減、教育水準や保健サービスの向上にもつながると強調しました。続いて、多くの途上国では政府が質的、量的に十分なサービスを提供できないため、保健と教育分野に民間が入りサービスを提供する機会があると説明し、保健分野で民間が80%以上のサービス提供者となっているインドの事例を紹介しました。最後に民間セクターが新しい技術を使いさまざまな機会を提供し、繁栄の共有を実現していると説明し、ケニアで1300人が携帯電話を使いモバイル・バンキングを行っている事例を紹介しました。最後に、公的機関と民間セクターが互いにとって最善のパフォーマンスができるようにいかに補完し合うかが今後の課題であることに触れ、世界のほとんどのニーズが集中している場所は、最も経済が成長する場であることから、将来の経済のために民間セクターが開発へ参画するのは現実主義でもあると強調しました。

※マフムド・モヒルディン専務理事のスピーチ(英語)はこちらから全文読んでいただくことができます。

[ パネル・ディスカッション ]

パネリスト
 : 
後安孝彦 ヤマハ発動機株式会社執行役員 海外市場開拓事業部長,
マルコス・テクレ 駐日エチオピア国大使,
小山智 経済産業省貿易経済協力局通商金融・経済協力課長,
増岡俊哉 国際金融公社(IFC)インクルーシブ・ビジネス・モデルグループ局長

コメンテーター : オラフ・ショーベン 国連開発計画(UNDP)総裁補・開発政策局長

ファシリテーター : 岡田仁孝 上智大学国際教養学部長

パネル・ディスカッションでは、パネリスト4人がそれぞれの立場から、MDGs達成と民間セクターとの連携についてプレゼンテーションをしました。

ヤマハ発動機株式会社・執行役員 海外市場開拓事業部長の後安孝彦氏は、UNDPなど開発機関と連携しながら、同社が途上国で展開している「クリーン・ウオータープロジェクト」を紹介しました。「特別な技術がなくてもメンテナンスができる浄水装置の活用で、試験的に導入した地域では、病気の発生が減るなどの効果もでています。モーターバイクのような収益とまではいかなくても、最低限の利益を生み出す、ビジネスとして展開していくことを目指している」と話しました。同国のビジネスはMDG1(極度の貧困と飢餓の撲滅)、MDG7(環境の持続可能性を確保)に達成につながっている点も言及しました。

駐日エチオピア国大使のマルコス・テクレ氏は同国が過去7年の間2桁台の経済成長を遂げ、民間セクターが貧困削減への大きな役割を果たしている現状を説明しました。また、政府、民間セクター、官民連携による取り組みおよび日本のJICAによる支援が、保健や教育部門の向上に貢献している事例も紹介しました。一方で、低所得や農業生産性の低さ、実施能力の低さ、失業など課題についても触れ、民間セクターの役割の更なる重要性を訴え、「民間企業(外資)の参入で、雇用の創出、通貨不足の補てん、技術習得などにつながり、国全体の発展にもつながります」とコメントしました。

経済産業省・通商金融・経済協力課長の小山智氏は、産業政策と経済協力の2つの側面から、日本政府がBOPビジネスを支援する背景と重要性を説明しました。途上国には市場拡大の大きな潜在性があり、政府・国際機関・民間セクター・NGOが一体となってインクルーシブ(包括的な)・ビジネスを実施する「日本モデル」の構築を提案しました。また、経済産業省が2010年に発足させた、会員会社に途上国でビジネスを展開するためのサポートを提供する、BOPビジネスセンターを紹介しました。

国際金融公社(IFC)・インクルーシブ・ビジネス・モデルグループ局長の増岡俊哉氏は、IFCが2010年には全世界で実施した約9億ドル(約720億円)のインクルーシブ(包括的な)・ビジネス案件への投融資の傾向や各国での事例などを紹介しました。インクルーシブ(包括的な)・ビジネスの成功要因として、1)各国やセグメントによって異なるニーズへの精通 2)コスト削減 3)広範囲に存在するBOP層に浸透するための販売網の構築 4)信頼できる地元のパートナーを見つける 5)新興国における新案件に対する、財政面、実行面のリスクを軽減すること、などを挙げました。

発表に対し、国連開発計画(UNDP)開発政策局長のオラフ・ショーベン氏が「途上国には支援を待っている、生活力の無い人がいるという誤解を持たれがちですが、実際は、貧困層の圧倒的多数は民間セクターで働き、生活をし、中には小規模ながら起業する人もいます。そのことを理解したうえで、貧困層が市場や資本へのアクセスをしやすくし、彼らをバリューチェーンの中に入れ込んでいくことが大切です」とコメントをしました。

続いて二つのテーマについてパネル・ディスカッションが行われました。一つ目の「MDGs達成における日本企業の可能性と課題」をテーマにした議論では、テクレ氏はエチオピアで日本製品は品質と効率性が高く評価されている一方、日本企業は欧米企業に比べると決定の過程に時間がかかるという印象を否定できないと語りました。増岡氏は戦後の荒廃から現在の経済力まで駆け上がった日本の経験に触れ、そのノウハウを途上国で役立てることを提案しました。後安氏は日本が壊れにくく、修理がしやすい、また地元で調達できるような製品という持続性を考慮したパッケージを提供できると提案しました。小山氏は機動性と広範囲の分野で取り組めることを強みとする中小企業の潜在性について触れ、さらに公的機関の支援により拡大する事ができる、と呼びかけました。ショーベン氏は日本の官民連携の強みに触れ、途上国のモデルと成り得ることを強調しました。また、1980年代にアフリカで成功を遂げたソニーのウォークマンについても触れ、途上国でのビジネス構築の潜在性についてコメントしました。

二つ目の「MDGs達成のために日本の強みをいかに発展させていくか」をテーマとした議論では増岡氏は品質を下げずにコストを削減することの重要性について触れ、さまざまな世界にあるネットワークやIFCの事務所を有効に活用して欲しいと訴えました。テクレ氏はアフリカを一つの国としてではなく、個々の国をそれぞれ見て、理解する事が、良いパートナーを見つける為の戦略になると強調しました。また、日本企業は技術を持っている一方、エチオピアの企業は国内での法的立場や潜在能力を持っていて、その架け橋が重要であると語り、在京の大使館の活用も呼び掛けました。後安氏は市場を理解し、個々の国のニーズに合ったサービスや製品を提供する事が必要不可欠であると強調しました。小山氏は途上国でビジネスをする上でのリスクへの恐怖を無くすよう訴えるとともに、公的機関や国際機関の支援を利用するように呼びかけました。

最後に、ファシリテーターで、上智大学国際教養学部長の岡田仁孝氏が、今まではリスクやコストという面で考えられなかった新しいビジネスが、21世紀に発展してきていると語りました。これは産業革命の意味を持ち、この波に乗れないことは国際競争力に欠けるということになる、と言及しました。そして、MDGs達成にもつながるインクルーシブ(包括的)・ビジネスにより多くの日本企業が参画することを期待したい、と締めくくりました。

展示会
シンポジウムの会場外では20以上の企業・団体によるMDGs達成に向けての途上国での取り組み事例や連携を紹介する展示会が行われました。ヤマハ発動機株式会社、オリンパス株式会社、ソニー株式会社などが参加し、写真パネル、広報資料、テレビ映像、またソーラー・ランタンや水浄化装置などの商品を展示し、事業紹介を行いました。シンポジウムで行われた議論の具体的な例を知る機会として、大きく賑わいました。

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