公開シンポジウム「お互い様だよ!国際協力」(2011年12月22日、UNDP、UNV主催) 開催報告

2012/01/27

PHOTO:UNDP TOKYO


2011年12月22日(木)、国連開発計画(UNDP)は国連ボランティア計画(UNV)とともに、名古屋国際センターにおいて、公開シンポジウム「お互い様だよ!国際協力」を開催しました。このシンポジウムは、12月5日の国連総会で発表された国連初の「世界ボランティア白書」を紹介し、途上国の開発課題解決に地方政府・市民・ボランティアが果たす役割や、震災後の国際協力について考える場として開催されました。愛知県出身で、元外務副大臣の伴野豊衆議院議員によるご挨拶の後、UNVによる「世界ボランティア白書」の発表、紺野美沙子UNDP親善大使による基調講演に続き、日本政府、名古屋市、市民社会、若者、UNDPの代表が参加して、パネルディスカッションが行われました。
 約150名の参加者のうち、7割以上から得たアンケートには、実際に国際協力に携わる様々な立場の人から生の声がきけて良かった、国際協力もボランティア活動も「お互い様(相互扶助)」だという意味が良く分かった、というような回答が多くありました。

「世界ボランティア白書」の発表
「世界ボランティア白書(State of the World’s Volunteerism Report)」の編纂・発行は、UNDPの下部組織であるUNVが2011年を通して世界的に推進した「ボランティア国際年」10周年の主要な活動の一つで、「国際ボランティアデー」の2011年12月5日の国連総会本会議で世界に向けて発表されたものです。日本では、今回のシンポジウムで初めて一般市民に向けてUNV東京事務所の長瀬慎治駐在調整官から紹介されました。長瀬調整官からは、「白書」の紹介に先立って、上記の国連総会で採択された、「ボランティア国際年」10周年を記念する国連総会決議の提案を主導した日本政府に対して、感謝の意が表明されました。

長瀬調整官は、「世界ボランティア白書」発行の目的として、世界の平和と開発を推進していく上で必要不可欠な市民の参加の一形態として、潜在的な可能性があるにも関わらず、未だ十分な認知を受けていないボランティア活動に関する誤解を取り除き、その特質や価値についてより良く理解してもらうために編纂されたと説明しました。また、ボランティア活動が持つ「連帯」、「信頼」、「相互扶助(お互い様)」という価値が、社会の絆を強固にする役割を果たし、特に最近注目されている、人々と社会の「幸福」を促進するものとして、今後の地球規模での持続可能な開発を推進する上で、ボランティア活動はより重要な役割を担うはずだという「白書」の結論を紹介しました。

基調講演
紺野美沙子親善大使は、UNDPの業務紹介の他、自身の中学時代のボランティア活動との出会いや、親善大使を引き受けたときのエピソードを交えて、基調講演を行いました。紺野親善大使は、UNDPの行なっている「開発支援」は子育てに似ており、地味で忍耐力が必要、けれど何よりも大切な仕事である、と説明しました。また、過去13年間の親善大使としての途上国訪問を通じて強く感じたこととして、日本で当たり前のことが途上国で当たり前ではないこと、そして我々はときに想像力、思いやり、お互い様という気持ちが欠落してしまうが、衣服、資源、食材など、日本は他の国々に支えられている、ひとつの国は沢山のほかの国々に支えられていると実感したこと、などを挙げました。

震災であらためて気付かされたこととして、みんな限りある時間を生きている、ということを挙げ、聴衆にむけ、私たちはそれをどう使うか自由に決められる国に住んでいる、と語りかけました。さらに、その限りある時間の「ほんの一部でもいいから見知らぬ誰かのために使ってみる。それがごく当たり前の日本になれば、ものすごく大きな力になる」と話しました。「今は助ける側であっても、いつか助けられる側になるかもしれない。そのお互い様という気持ちが、もっともっと日本を本当に豊かにすると思う。その気持ちが世界に通じていく。みなさんにしかできないことを、ぜひ行動に移していただきたい」と呼びかけました。

パネルディスカッション
愛・地球博ボランティアセンターの理事長であり、愛知淑徳大学交流文化学部の榎田勝利教授がモデレーター兼コメンテーターを務め、「震災から見えた国際協力の新しい視点」というテーマでパネルディスカッションが行われました。榎田教授はパネルディスカッションに先立ち、日本にボランティア文化を広めるため、本年第三回目を迎えたMake a Change Day(1日ボランティアディ)について紹介し、震災の被災地450か所も含め、全国1500か所、約12万人を超える人々が一斉にボランティアをした旨報告しました。また、本パネルディスカッションの背景として、震災以降、途上国への予算を減らすべきだという声がある一方、震災に際して160か国以上が日本に対し支援の手を差し伸べてきたのは、これまで日本が行った国際協力活動のたまものであり、やめるべきではない、という議論があること、そして国際協力に興味はあるが、名古屋にいる自分が何をしたらいいかわからない、という人へのメッセージも含め、国際協力を担う様々な主体が考える「国際協力」や「ボランティアリズム」について議論を進めていく、と説明がありました。

まず、外務省国際協力局の山田彰審議官は、スライドを用いて震災後世界から届いた支援、世界各地での日本に対する支援の事例を紹介しました。次に、日本ならではの国際協力の事例や特徴について、現地の政府や人々と対話をし、日本のやりかたを押し付けるのではなく、先方のニーズを踏まえた形であること、日本の経験、技術を活かし、ソフトとハードを組み合わせるということなどを、インドネシアやモルディブの例を挙げて紹介しました。また、震災後の大変な時期になぜ国際協力を続ける必要があるのかという質問に対しては、日本のODA実績は過去15年減少し続け、各国のODA対GNI比では日本は下から4番目と、必ずしも国力に見合ったものとはなっていない実情につき、説明がありました。また、経済、安全保障、テロ、病気といった問題でも世界はひとつになっており、そうした問題を解決し、平和と安全を確保することは日本の利益でもあるという、国際協力の意義を紹介しました。

続いて、名古屋市上下水道局施設部の伊佐治知明課長からは、名古屋の姉妹都市メキシコシティにてJICAの資金協力を得て取り組んでいる草の根技術協力事業、水道水質管理プロジェクトについて説明がありました。メキシコシティの水道水の問題点について説明がなされた後、2005年から2007年のフェーズ1と、2008年から2010年のフェーズ2で、それぞれ取り組んだ活動と成果について発表がありました。途上国支援をすることにで、名古屋市上下水道局にとってどのような利点があるのか、という問いに対しては、職員の人材育成を挙げ、具体的には、他国を知ることにより、視野を広げ、名古屋のような、上下水道管理の自動化が進んでいるところでは経験できない課題に直面し、幅広く奥行きが深い人材が育てることができる、という説明がありました。また、名古屋も100年前、イギリスの支援を受けて上下水道の近代化をした旨説明があり、途上国への支援は、その恩返しという意味もあると述べました。

次に、名古屋NGOセンターの西井和裕理事長は、名古屋NGOセンターの役割、活動内容について説明した後、メンバー団体の国際協力NGOの事例を紹介し、これら国際協力NGOが東日本大震災の被災地支援を行った6つの事例を、活動地、活動内容だけでなく、各団体が指摘する今後の課題についても含め、説明がありました。なぜ国際協力NGOが国内の被災地を支援するのか、という問いに対しては、まだ総括の段階ではないものの、困難な状況にある人々への共感は国境を問わずあること、セイフティネットが弱体化している状況や、自然災害といった、困難をもたらしている要因が共通しているということ、そして途上国で行っている社会開発の経験が復興支援で活きること、という3点から取り組んでいるのであろう、という説明がありました。今後の開発課題に対し、今後日本の市民社会がどのように貢献できるか、という質問に対しては、国連とNGOの文化、考え方の違いを指摘し、市民の視点から言うべきことをNGOの立場で言うことも一つの役割として挙げました。

また、ラジオパーソナリティーで、JICA中部なごや地球ひろばのオフィシャルサポーターも務める空木マイカ氏は、震災後被災地の幾つかの避難所を回った際に、元海外青年協力隊員が集まって運営する石巻の避難所が、他と全く異なり、当初から被災者の自立を視野にいれた活動であったことを述べました。残って一緒に活動することができないもどかしさがあったものの、役割分担を実感したことから、名古屋で活動報告をし、支援金を募り石巻に送る、また石巻の被災者の主婦たちが製作したグッズを名古屋で販売し、売上金を送るという「Supporter’s Support」の立ち上げのきっかけと活動を紹介しました。また、ガーナの女性がプリントした布を、石巻の主婦がデザインと縫製を担当して出来たエコバッグを販売する等、今後の予定が述べられました。こういった活動を通じて、国内、国外という隔たりはないと実感したと述べ、国際協力をしたいがチャンスが無い、何をしたらいいか分からないという学生への助言として、まず興味のある分野について知ること、そして途上国との繋がりを意識して生活を今一度見直してみる、ということも国際協力と言えるのでは、と呼びかけました。

最後に、UNDPの丹羽敏之臨時代表は、国連システムの概要を説明し、途上国での開発協力に携わるアクターの多様性を紹介した上で、UNDPの活動の中で、地方自治体、ボランティア等と一緒に取り組んでいる事例を紹介しました。まず、ネパールの事業で、UNDP、 ILO、 UNV、WHO、地方自治体、アメリカのボランティア団体、そして海外青年協力隊がそれぞれの役割を果たした事例を紹介しました。UNDPが果たす調整官としての役割をネパール、イエメン、南スーダンでの事例を使って説明しました。また、2015年に期限を迎えるミレニアム開発目標の達成に向けて、今必要とされていること、そして2015年以降の途上国支援の方向性につき現在なされている議論についての紹介がありました。ミレニアム開発目標の中には、名古屋市上下水道局の取組みが寄与している安全な飲料水と衛生施設を利用できない人々の割合を半減する、というターゲットがあることも紹介し、達成見込みが危ぶまれている国・地域、目標に集中して支援を加速していく必要性、また、他のゴール達成への相乗効果がある分野への投資の重要性、日本の援助支出のGNI比の向上の必要性等を訴えました。

パネルディスカッションに続いて、来場者との質疑応答が行われ、最後に各パネリストから、一言ずつ述べました。それぞれが個人的な経験を披露し、参加者に対し、自分以外の誰かのために働くことの意義、小さなことからでも始めていくことの大切さ、自分の中にある衝動や直感を信じて一歩踏み出すこと、お互いの痛みに対する共感力が、基本的なアクションの原動力となる、等の、メッセージを伝えました。

なお、本シンポジウムは外務省、愛知県、名古屋市、JICA中部、名古屋国際センターのご後援、愛・地球博ボランティアセンター、なんとかしなきゃ!プロジェクト、名古屋NGOセンター、国連地域開発センターのご協力をいただき開催しました。UNDP駐日代表事務所は、2009年から札幌、神戸、金沢、京都、帯広など、東京以外の場所でもセミナーやシンポジウムを開催し、パートナーとともに、地域社会の視点から開発や国際協力を考える場を提供しています。

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