UNDP-経済産業省シンポジウム「アフリカにおけるインクルーシブビジネスと気候変動適応の可能性」を開催

2013/03/07

Photo: UNDP Tokyo/Yukiko Abe


【2013年3月6日〜3月7日】
国連開発計画(UNDP)と経済産業省は「アフリカにおけるインクルーシブビジネスと気候変動適応の可能性」と題するシンポジウムとワークショップを3月6日と7日に東京都内で開催しました。

アフリカの多くの国々では2000年代以降、安定的な経済成長が続いており、新しい成長市場として注目を集めています。近年は民間セクターによるアフリカへの進出が、エネルギー、水、通信などのインフラ分野にも広がっており、ビジネスを通じた開発課題の解決への期待が高まっています。とくにアフリカ各地での洪水や干ばつなどの気象災害への対応が国際的な課題となるなか、災害に強い社会作りや気候変動への適応においても企業の積極的な役割が期待されています。

こうしたことから、UNDPと経済産業省は、アフリカにおける課題とビジネスの可能性を議論するシンポジウムとワークショップを開催しました。両日で300人を超える参加者を迎え、初日のシンポジウムでは、アフリカにおけるインクルーシブビジネス*の現状と成果、気候変動への適応に寄与するビジネス事例を紹介し、2日目のワークショップでは、UNDPのアフリカ現地事務所の専門家や、アフリカでインクルーシブビジネスの開発を進めている民間企業を招き、ケニア、南アフリカ、西アフリカ諸国における開発課題やインクルーシブビジネスの現状について議論しました。

*インクルーシブビジネス:貧困層を生産者・消費者・労働者として取り込み、現地で雇用や商品、サービスを生み出すことにより、貧困層の人々の選択肢の拡大と、企業の事業機会の拡大を図るビジネス

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3月6日 14:00~17:00 【シンポジウム】 (国連大学本部ビル「ウ・タント国際会議場」)

1. 開会挨拶

弓削昭子・UNDP駐日代表・総裁特別顧問は、開会の挨拶で、現在、アフリカはビジネス界から熱い視線を集めており、その経済成長、人口増加による市場の拡大により、民間セクターにとって「魅力的な市場」となっていること、その一方で、アフリカがさらされている気候変動などの新たな脅威に対応することが、アフリカにおける民間セクターの成功には必要不可欠であることを述べました。また、世界中の多くの民間企業がビジネスを通じて気候変動対策やミレニアム開発目標(MDGs)の達成に寄与する取り組みを進めており、日本企業もその技術力を活かして積極的にこれに参画することが、アフリカと日本のみならず、世界にとって重要であると指摘しました。

次いで挨拶に立った、飯田慎一・外務省 国際協力局 地球規模課題総括課長は、今年は、1993年に始まったTICAD(アフリカ開発会議)の20年目となる節目であること、日本はUNDPと協働して、アフリカ開発に対する貢献を積極的に行っていることを紹介しました。また、日本政府はMDGsの達成に尽力しており、ポスト2015年開発目標の策定に向けた取り組みにも積極的に関わっているが、その中で、民間セクターの関与が重要な論点となっていると述べました。さらに、インクルーシブビジネスは日本政府が重視している「人間の安全保障」の概念を実現する重要な手段であるため、外務省は、今後も開発分野における官民連携を推進していきたいと語りました。

最後に挨拶を行った八山幸司・経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 地球環境連携・技術室長は、自身が今年の1月にアフリカを訪問した際にその活力を肌で感じた経験から、アフリカにおいては、環境と調和した経済発展のニーズがあり、そのようなニーズは、日本企業がアフリカに貢献しつつビジネスを拡大できるチャンスとなりえるとの認識を示しました。経済産業省の具体的な取り組みとして、日本が気候変動対策に関する新たな市場メカニズムとして国際社会に提案している「二国間オフセット・クレジット制度」を紹介しました。この制度の導入を進めるため、これまでアフリカにおいて、再生可能エネルギーや工場の省エネなど、日本企業が得意とする技術の導入可能性事業を10件実施してきているほか、すでにこの制度の導入に向けて、政府間での協議を行っている国もあるとの説明がありました。さらに、適応の分野においては、2012年度に「途上国における適応対策への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業」を開始し、アフリカで5件のプロジェクトを実施したことを紹介しました。経済産業省としては、これらの取り組みを通して、アフリカにおける人材育成や雇用の創出、緩和・適応双方の面から、実行性のある気候変動対策を実現し、アフリカとのwin-winの関係を構築してきたいと述べました。

2. 基調講演「アフリカにおける包括的な市場の育成」

つづいて、サバ・ソバーニ UNDP 対外関係・アドボカシー局 GIM (Growing Inclusive Markets)イニシアティブマネージャーが基調講演を行いました。

まず、インクルーシブビジネスは、単にアフリカを企業にとっての経済的機会として捉えるのではなく、貧困層にどのような機会をもたらすことができるのか、また、そこで企業はどう開発に貢献できるのかを具体的に示すことが重要であると述べました。そして、アフリカで満たされていないニーズを満たすことが重要であるとして、とくに、衛生的でない水を原因とする、2600億ドルにも上るとされる経済的損失と健康問題、貧困層のエネルギーへのアクセスの問題を挙げました。エネルギーに関しては、2009年に、電力が使えない人々がアフリカには5億9000万人いるとされていたが、2030年には7億人に増えると予測されていること、貧困層ほど多くのコストをエネルギーに費やしていること、さらに、多くの貧困層が電気の代わりに使用している灯油ランプは火災の危険をはらみ、人々に健康被害を及ぼしていることを強調しました。

そのうえで、インクルーシブビジネスには、変革や貧困層の機会拡大を実現する力があり、途上国の様々な課題を解決するためにこれを活用することにより、民間セクターと貧困層とのwin-winの関係を構築することが重要であると述べました。最後に、UNDPをはじめとした開発機関は、今後、インクルーシブビジネスのインパクトや効果を考慮し、焦点を絞った支援を実施していくことが必要であること、そして、ポスト2015開発アジェンダに向けて、より長期的で戦略的なインクルーシブビジネスを推進していく必要があるとして、講演を締めくくりました。

3.プレゼンテーション「適応ビジネスによるフロンティア市場進出の可能性について」

つづいて、小池純司・株式会社野村総合研究所 新興国・BOP市場グループ グループマネージャーが経済産業省の委託を受けて実施した、気候変動適応に関する調査結果に基づいたプレゼンテーションを行いました。

小池氏は、アフリカの人口増加に伴う市場の拡大、2000年以降の安定的な経済成長、1日4ドル以上の消費を行う中間所得者層の増加による潜在的な購買力の高さにより、アフリカが日本企業にとって魅力的な市場となっていることついて触れながら、気候変動の適応領域におけるアフリカのニーズについて説明しました。アフリカは世界で最も気候変動の影響を受けやすく、非常に脆弱性が高い地域であるため、アフリカ各国は国連等の協力を得ながら適応計画を作成しており、なかでも、水、農業、漁業、健康、海面上昇などの分野のニーズが高いことを紹介しました。

また、すでに多くの日本企業が適応関連のビジネスをアフリカで展開していること、これは政府開発援助(ODA)によって、気候変動の緩和に日本政府が多大な貢献をしてきたために、民間企業が参入しやすい素地ができていたことが背景にあると述べました。そして、日本の民間企業は、単にビジネスを推進しているだけでなく、アフリカの課題にも貢献しているということを示しながら、ビジネスを拡大していくことが必要だと指摘しました。さらに各企業が、MDGsや人間の安全保障への貢献を周知しながら、相手国や日本政府などと密に連携する必要があるとの見解を述べました。

4. パネルディスカッション「アフリカにおける日本企業のインクルーシブビジネス促進にむけて」

[ パネリスト ]

リネット・ルバイ UNDPケニア事務所 プログラムオフィサー
武田真明 シャープ株式会社 渉外部 政策・エネルギーソリューション担当 副参事
堀田隆之 パナソニック株式会社 渉外本部 国際渉外グループ 企画調査チーム 参事
中山陽輔 経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 地球環境対策室 国際係長

[ モデレーター ]
小池純司 株式会社野村総合研究所 新興国・BOP市場グループ グループマネージャー

はじめに、経済産業省の中山氏より、経済産業省の取り組みの紹介がありました。これまで気候変動への適応に関しては、ODAに代表される公的な援助が中心だったが、今後はこれに加えて、民間企業を巻き込み、日本企業と途上国の双方がwin-winとなる関係を構築していくことが重要になってくるとの認識を示しました。このような観点から、経済産業省は、2012年度に新たに「途上国における適応対策への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業」を開始し、この事業では、ビジネスを展開しつつ気候変動への適応ニーズにどう貢献するかという点を含んでいることを重視していることを強調するとともに、事業の具体的な仕組みや採択されたプロジェクトを紹介しました。また、経済産業省としては、今後も同事業を継続し、ひとつでも多くのビジネスの成功事例を排出していきたいと述べました。

次に、シャープの武田氏より、疾病の70%が水起因であるとされ、安全な水へのニーズが急速に高まっているケニアで実施した「地球温暖化起因の水資源枯渇問題解決に向けたソーラーを主電源とする電気分解方式の浄水装置の市場導入調査事業」について紹介がありました。まず武田氏は、同社が開発した浄水装置は、太陽光を主電源として、最低限のメンテナンスで長期間使用できるコンパクトな作りになっていることが特徴であることを紹介しました。また、シャープはこれまでに3回の現地調査を実施した結果、地域によって水質がかなり異なることが明るみになったこと、今後は、地方のコミュニティを対象とした事業化を進め、異なる水質に対応するとともに、コストを抑えるために機能ごとにユニット化した装置の販売を目指すと述べました。さらに、これを足掛かりとして、産業用ニーズにも応えるような製品の展開を視野に入れて事業を進める計画であると述べました。

続いて、パナソニックの堀田氏より、同社がソマリアおよびケニアの無電化地域で実施した調査にもとづいた、灯油ランプの問題と適応対策に関する取り組みについての紹介がありました。パナソニックは、気候変動によって長期化する干ばつによって貧困が拡大していることをアフリカの重大な課題として捉え、ソマリアにおいて、2012年10月より国際移住機関(IOM)と協業して、ソーラーランタンを難民キャンプに提供し、そこで暮らす人々の灯油ランプによる健康被害の削減やキャンプの治安改善などを目指しています。また、ケニアでもマイクロファイナンスを活用したソーラーランタン事業を起すことによって、東アフリカ地域全体へのビジネス拡大を狙っていると述べました。

以上のプレゼンテーションを受けて、UNDPケニア事務所のルバイは、インクルーシブビジネスに必要な3つの要素として、1)事業の持続可能性、2)事業の妥当性、3)関係者・関係機関とのパートナーシップの重要性を挙げました。また、商業的な採算性を維持しながらも、社会的なインパクトを達成することがインクルーシブビジネス事業の持続には必要不可欠であり、地域間の多様性に対応するために、焦点を絞る戦略作りも重要だと述べました。さらに、現地コミュニティを含め、インクルーシブビジネスに関わるすべての関係者が、長期的な視野を持ってインクルーシブビジネスを展開する必要があること指摘しました。そして、日本企業は、インクルーシブビジネスを展開する地域の市場の成長には時間がかかること、企業ブランドの認知にも時間がかかることをしっかりと理解することが、インクルーシブビジネスを成功させるには重要であると強調しました。

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3月7日 10:00~17:30 【ワークショップ】 (「こどもの城」9階 研修室)

ワークショップI:ケニアにおけるインクルーシブビジネス

2日目は、インフラの整備が進むなど、良好なビジネス環境が整っており、日本企業がインクルーシブビジネスを進めるに当たって、とくに注目が高いケニアについて、ワークショップを開催しました。

最初に、初日のパネルディスカッションにも登壇した、UNDPケニア事務所のルバイが、ケニアの経済状況・ビジネス環境を紹介するとともに、UNDPのケニアにおける民間連携の事例や日本企業への期待などについてプレゼンテーションを行いました。そのなかで同氏は、ケニアは順調な経済成長を続けており、ヨーロッパやアジアとアフリカを結ぶハブとなる港湾や空港も持ち、東アフリカ地域の金融・経済の中心としての役割を引き続き果たしていくだろうと述べました。また、ケニア政府の「2030年ビジョン」では、観光、農業、卸・小売業、東・中央アフリカ市場向けの製造業、BPO(Business Process Outsourcing)、金融サービスの6つが経済政策の柱となっていることを紹介しました。

その後、水の緩速ろ過装置と点滴灌漑を活用して、ケニアでの浄水・農業ビジネスの実現に向けて現地での調査やパイロットプロジェクトを進めている株式会社ウェルシィ 海外事業部長の等々力博明氏がその内容について紹介しました。そのなかで、同社は、海外事業の展開に向けて、2000年に東南アジアや中国で自社調査を開始し、その後、外務省、経済産業省、中小企業庁などの支援を受けながら、モロッコ、ケニア、ベトナムなどで実施した事業化調査を経て、現在、UNDPと共同でパイロット事業をケニアで実施していることが紹介されました。その経験から、等々力氏は、インクルーシブビジネスでは、単に技術を提供するだけでなく、現地の人々の収入源を確保すること、技術の現地化を図り、持続性を担保することが重要だと説きました。さらに、現地の公的機関との連携の重要性、リーダーが存在し、団結力のある現地コミュニティを巻き込むことの重要性、また、単に「浄水」だけでなく、「浄水+農業」など、社会を変える新たな付加価値をインクルーシブビジネスで創出していく重要性も指摘しました。

ワークショップ参加者を交えた、その後のディスカッションでは、UNDPと連携することによって民間企業はどのようなメリットを受けることができるのか、ケニアにおいてプレゼンスの高い国はどこなのか、現地でインクルーシブビジネスを進めるにあたって、どのように現地でのネットワークを構築したのか、インクルーシブビジネスを開始するに当たってどのように株主の賛同を得たのかなど、多くの質問が寄せられました。

ワークショップII:南アフリカにおけるインクルーシブビジネス

南アフリカについてとりあげた2つ目のワークショップでは、はじめに、UNDP南アフリカ事務所エコノミストのレショロ・モジャナガが「南アフリカのビジネス環境とインクルーシブビジネスの現状」と題したプレゼンテーションを行いました。モジャナガ氏はまず、国の概要を説明し、現在のビジネス環境の問題点を指摘しました。同国は、約5200万人の人口のうち、現在460万~680万人もの人々が職を持っていないこと、社会福祉を受けている1600万人のうちの半数以上が18歳以下であるなど若年層の雇用が問題になっていること、また、高い教育を受けたにも関わらず職に就いていない人の割合が29%に上っていることを挙げました。

南アフリカのビジネスの国際競争力については、様々な調査結果を示し、概ね改善されている状況であるものの、2008年以降の上昇傾向から、2010年以降は伸び悩んでいるというのが実情であることを紹介しました。また、「人間開発指数」(HDI)についても、1995年以降、下降傾向にあり、GDPについても、2050年頃には、ナイジェリアに追い抜かれるという予測が出ていることを述べました。一方、南アフリカにある鉱床の価値は3兆5000億ドルとも推定され、民間投資の機会は高いことを挙げました。また、同国は9つの自由貿易協定を結んでおり、アフリカのなかでも貿易インフラが整っている国であり、港湾規制が改善されている数少ない国であることを強調しました。さらに、同国では事業に関わる税率が低く、事業開始や輸出入に係る事務手続きが簡素であるなど、ビジネスを起こす条件が整っていることを、データを用いて示しました。最後に、南アフリカの「包括的な成長の促進」のためにも、UNDPはインクルーシブビジネス支援を重視しており、地元の人々をバリューチェーンに組み込んだ雇用促進と地元の経済成長につながるインクルーシブビジネスに期待を寄せました。

続いて、南アフリカで実際にインクルーシブビジネスの展開を図っている東レ株式会社 繊維グリーンイノベーション室長の佐々木康次氏ミツカワ株式会社 専務取締役の松本茂登氏ネタフィムジャパン株式会社 アグロノミストの田川不二夫氏が「砂漠・荒廃地の農地化・緑化ビジネス」を紹介しました。

3社が協働して南アフリカでの実現を目指しているこの事業は、「PLA(ポリ乳酸)ロールプランター」と「点滴灌漑システム」を用いて、砂漠や荒廃地の農地化・緑化を進めるものです。3社は、サハラ以南アフリカの課題である食糧不足と貧困が、気候変動や過耕作・過放牧による砂漠化・土壌劣化による農地不足、さらに人口増と農業生産性の低さが大きな原因であることに注目しました。また南アフリカ特有の課題として、鉱山採掘跡地における砂塵飛散による周辺住民の健康被害に注目し、この事業の計画を始めました。

3社は経済産業省の「途上国における適応対策への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業」の支援を受けて、現地調査と実証実験を行い、その結果、PLAロールプランターと点滴灌漑システムによる農作物育成の効果を確認したことを紹介しました。しかし、現地でのヒアリング結果から、同国の小規模農家の農作物の出荷価格は低く、現状では事業の投資回収は困難であるこが判明しました。3社は、これらの調査結果を受けて、UNDPと共同で、さらに現地でパイロットプロジェクトを実施し、早期の事業開始を目指すとして発表を締めくくりました。このプレゼンテーションを受けて、ワークショップの参加者からは、PLAロールプランターと点滴灌漑システムの使用法や現場での実施状況など、現地での調査実施に関する具体的な質問が寄せられました。

最後に、初日に基調講演も行ったUNDPのソバーニが、「この事業のように、南アフリカのような事業を展開しやすい国から始めて、その後、他の地域へと拡大していくことを企業に勧めている。この事業への期待は非常に大きい」とコメントを述べました。また、UNDP南アフリカ事務所のモジャナガも「この事業には南アフリカ政府も協力的で、小規模農家の生産性を上げることを歓迎している。UNDPとしても、雇用創出や小規模農家育成に貢献するこの事業を大変重要だと考えている」と本事業への期待を語り、パネルディスカッションを締めくくりました。

ワークショップIII:西アフリカ諸国におけるBOPビジネス

最後のワークショップでは、はじめに、国際協力機構(JICA) 民間連携室 連携推進課 主任調査役の川谷暢宏氏が「JICAのBOPビジネスに対する支援 ~西アフリカにおける現状~」と題したプレゼンテーションを行いました。

JICAでは2008年10月に民間連携室を開設し、民間企業が途上国でビジネスを始めるための事業化調査の支援、関係者間のネットワーク構築、民間事業への出融資などを進めてきたこと、また、2010年にはBOPビジネスの支援も開始し、BOPビジネス連携促進のための協力準備調査を実施していることを紹介しました。その中で、これまでに4回の協力準備調査の公募を行ったところ、340件の申請があった中から65件が選定され、うち17件がアフリカを対象とした調査だったが、西アフリカ諸国に関しては、6件に留まっていることが紹介されました。川谷氏は、これは、そもそも地理的に遠いアフリカを対象とした申請が少ないこと、さらに西アフリカに関しては、その多くがフランス語圏で言語の壁があることが主な要因だと指摘しました。一方、採択された案件の傾向として、事前準備がしっかりしていること、JICAの青年海外協力隊との連携などJICAインフラが活用されていること、多様な開発関係者との協働などを含んでいる案件が多いことを紹介しました。

JICAとしては、アフリカの高い経済成長率や、中間層の拡大、労働力の増加、都市比率の高さなどによる市場の成長性に注目しており、とくに西アフリカ諸国は、サハラ以南アフリカを東部・西部・中部・南部で分けた場合に最も人口が多く(2010年:3億人)、平均所得も南部アフリカ地域に続く2番目に高い数字(2010年:約1000ドル)を保持していることに注目していると川谷氏は述べました。また、西アフリカ諸国においては、法律や会計が旧宗主国のフランスにもとづいて制度が整っていることを挙げ、同地域への外国投資も年々増加傾向であることを紹介しました。すでに同地域で調査を行っている企業からも、西アフリカ諸国については、今後のポテンシャルの高さや、地域展開の容易さ、南米・欧米市場への近さなどの利点が挙げられており、課題があるものの、ビジネス機会も多いことを強調しました。

さらに、これまでのJICAの支援実績をもとに、成功しているBOPビジネスに共通しているポイントとして、1)現地パートナーの確保、2)資金調達先の確保、3)現場のニーズに基づいた戦略形成事前調査、4)法規制のクリア、5)最適な価格設定、6)BOP層に対する啓発活動を挙げました。最後に、JICAはより多くのBOPビジネスの成功例を生み出すために、今後も継続的に協力準備調査を実施し、企業がBOPビジネスを事業化するための資金調達方法のオプションを増やすことを視野に入れていること、また、途上国の法制度整備支援などを通したBOPビジネス環境の整備を進める意向を示しました。

続いて、ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 第3開拓部 クリーンウォーターグループの戸塚美穂子氏が「西アフリカにおける売水・売電ビジネス」を紹介しました。

同社は、1974年にインドネシアで二輪車製造工場を設立した際に、現地駐在員の家庭で使用するための家庭用浄水装置を開発したことをきっかけに、1991年に浄水装置の製造販売を開始しました。その後、河川の水を浄化する浄水装置の開発に着手して、2010年4月に小型浄水装置のトライアル販売を開始し、2012年7月より本格販売を行っています。戸塚氏は、この浄水装置は、砂や砂利を利用した緩速ろ過をベースとし、フィルターや凝集剤が不要で、安価な維持管理費用、専門家の必要のない簡単なメンテナンスで利用でき、電気のない地域でも太陽光発電装置と組み合わせて設置することが可能で、インドネシアにおいては、すでに3か所に設置されていることを紹介しました。また、西アフリカ諸国においては、すでにセネガル、モーリタニアにおいて設置を完了し、コートジボワール、ガーナで現地調査を実施したことを紹介しました。

コートジボワールとガーナでの調査結果から、浄水装置の導入はビジネスとして採算を得ながらも、気候変動の影響を受けている地域に貢献し、そして売水・売電を組み合わせることで、現地住民の所得向上につなげることも可能であることを確認し、これを同社は「経済的価値の創造」と「社会的価値の創造」を併せた『社会的価値創出ビジネス』として位置づけて、今後も事業展開を進める計画を表しました。これを受けて参加者からは、「事業として収益を生んでいるのか、事業期間はどのくらいを見込んでいるのか、競合企業はいるのか」「英語が通じないフランス語圏の西アフリカ諸国での現地パートナーシップの見つけ方は」などの質問が多く寄せられました。

アフリカでは都市比率が高いことで都市発ビジネスを生みやすいというJICAの分析に対する、「農村地方との格差を生むのではないか、開発の観点から都市部と農村地方とのバランスはどう取るのか」との質問に対してJICAの川谷氏は、「海外からアフリカに目線を向けたときに、都市からのほうが事業を展開しやすいが、社会性を高める事業を行うなら農村地方を対象とするといった、それぞれに適したビジネスモデルの構築が必要」と応えました。最後に、戸塚氏が「一社単独で事業を開始することは難しい地域ではあるが、国際機関・日本政府・現地政府との多様な協力関係の中でビジネスを行っていくことが重要」との意見を述べ、ワークショップは終了しました。

 

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UNDPでは今後も、MDGs達成に寄与するインクルーシブビジネスの開発の支援を積極的に進めていくとともに、民間セクターとの連携の成果についてもTICAD Vなどの機会を利用して、広く社会に発表していく予定です。 

 

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