日本政府とUNDPアフリカ地域センター(エチオピア)、 TICAD7に向けて「ブルー・エコノミーにおける起業、雇用機会と技術イノベーションに関するワークショップ」を開催

2019年4月26日

2019年4月9日より3日間、エチオピア・アディスアベバ にてUNDPアフリカ地域センターは、エチオピア連邦民主共和国政府、アフリカ連合(AU)委員会、AU日本政府代表部、と共同で「ブルー・エコノミーにおける起業、雇用機会と技術イノベーション」に関するワークショップを開催しました。

本イベントは、今年8月に日本政府がUNDP等と共催する横浜開催の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を視野に入れ、変化の著しい時代においても若くて活気あふれる次世代の起業家やイノベーターが着実に成長できるよう、実践的なノウハウやリーダーシップを養成するためにアフリカ各国で活動する起業家や開発関連のパートナーや企業専門家などを幅広く動員し開催されました。アフリカの経済の多角化において若者はまさに原動力であり、包摂的成長に向けた経済構造転換に係る科学技術イノベーション(STI)等の促進はTICADの中での重要アジェンダと位置付けられています。

アフリカでは、若年人口が急増し、フォーマル雇用の機会が稀少になる中、起業とイノベーションは大陸全体で自力での雇用創出と開発を推進する重要な一要素として、ますます認識されるようになりました。テクノロジーをさらに自在に操り、イノベーションと問題解決の能力に長けた新世代の人材を養成することは、この地域における社会的一体性と安定の定着だけでなく、経済と社会の包摂的な変革にとっても引き続き、中心的な重要性を持っています。起業家精神にあふれる若者の力を活用することで、新しく生産的な雇用やビジネス、さらには新しいサービスの提供方法が生まれることが期待されています。

開会式では、若者に必要なのは環境の整備だけでなく、技能と意識の適切な組み合わせでもあることが明らかにされました。その中には、金融リテラシー能力や経営・ビジネス能力、雇用機会、さらには「やればできる」という成功を目指す姿勢や、金融サービスその他の生産的資産へのアクセスも含まれます。今回のワークショップは、起業家育成を支えるためにイニシアティブ「YouthConnekt Africa(YCA [1]の地域ワークショップの第2回目として開催されましたが、2018年10月、ルワンダの首都キガリで開かれた2回目のYCA年次サミットでも、アフリカで新たな顔ぶれの若手起業家やリーダーを育てるうえで、こうした能力が重要となることを改めて確認され、テクノロジーを応用できる実際的知識の大切さも強調されました。また、さまざまな部門で将来性のある雇用機会を発掘するため、さらに積極的なアプローチを採用する必要性についても、合意されました。


[1] YouthConnekt Africa(YCA)は、2012年にルワンダで設立された起業家育成を支えるためにイニシアティブです。技術を活用し、若者の市民参加を強化するため、「雇用創出」「教育・スキルの提供」「リーダーの育成」「ジェンダー格差への取組」「技術・イノーベンション強化」の5つの目標に焦点を絞って活動を展開しています。YCAは、国連イノベーションアワードを受賞。現在はウガンダ、ガンビア、コンゴ、ザンビア、リベリア、ルワンダで活動が広がっていますが、さらに広域範囲にYCAを確立するためのサポートが行われています。
 

YCAのプログラムは、各国のプロブラムにおいてアフリカの若者が主導権握り、それぞれの国情に見合った解決策を繰り出すよう求めるものとなっています。今回の地域ワークショップは、このデザインに沿う形で、アフリカ20か国で40人から50人のYCAフェロー第2陣を養成し、プログラムの目的に対する理解を共有しながら、YCAの展開を支援することを主目標としました。こうした若手起業家たちは、不可欠なスキルを身に着け、YCAが実現を目指す変革を体現してゆく存在です。今回の地域ワークショップは、1回限りのイベントや研修会にとどまらず、YCAを主体的に推進できる若手リーダーをさらに幅広く結集する役割も果たすことでしょう。

若年雇用と雇用創出、イノベーションの潜在性を備えたブルー・エコノミーは、今回の地域ワークショップでも中心テーマの1つになっています。海洋や内水の効果的利用は、アフリカの若者に雇用機会をもたらす要素として広く認識されています。こうした豊富な水資源は引き続き、食料の安定確保や雇用、貧困の根絶、健康と人間の幸福、イノベーション、観光、自然災害からの保護を支えているだけでなく、二酸化炭素排出量の30%、さらには温室効果ガスに閉じ込められた余分な熱の90%を吸収することによって、気候変動の影響も和らげています。また、ブルー・エコノミーは海洋と内水を、石油の持続可能な採取と保全が生物多様性や鉱物資源、持続可能なエネルギー生産、海上輸送と統合される開発空間として捉えています。ブルー・エコノミーはさらに、再生可能エネルギーの生産、観光、海運、海洋バイオテクノロジーなど、幅広い新興部門を探索する存在でもあります。

UNDPと日本が共催した今回の3日間のワークショップ(2019年4月9日から11日に開催)は、下記の3つのプロセスの中核(2のフェローシップ地域ワークショップ)として位置づけられています。

  1. YCAフェローのニーズ評価 - この準備段階では、異なる選考基準を用いて、YCAのフェロー候補者50人の発掘と動員を図ります。具体的な選考基準としては、これまでの実績、実証済みの潜在能力、将来の展望、才能が挙げられます。このニーズ評価プロセスでは、オンライン調査と電話インタビューを組み合わせて、それぞれの候補者を巻き込み、起業家としての価値をさらに高めることになります。
  2. YCAフェローシップ地域ワークショップ - ワークショップの中核的部分となる3日間のイベントでは、直接的な体験が中心となります。YCAのハブ&ファンド型デザインのほか、ブルー・エコノミーにおけるリーダーシップ、技術イノベーション、起業機会を基本に据えながら、このワークショップは、第2回YCAフェローシップ・プログラムの役割も果たします。
    • インパクト投資を中心に据えながら、起業とリーダーシップに関する実践的技能を身に着けさせること
    • ブルー・エコノミーの技術革新と雇用機会
    • 参加者をブルー・エコノミー、そして確立済みの企業とのパートナーシップ機会へと誘うこと
    • 50人のYCA 2019フェロー全員の間で団結心、すなわちチームとしての一体感を作り出すこと
    • YCAの製品につき、潜在的な試行テストを行うこと
  3. ワークショップ後の関与- ワークショップを修了した起業家はそれぞれ、YCAフェローとしてスタートを切り、卒業式ではそれぞれの誓いや意気込み、関連のアクションプランを発表します。

ワークショップ当日には、下記のような激励コメントがありました。

志水史雄AU日本政府代表部特命全権大使は、「YouthConnektは、経済統合の加速を如実に示す重要な機会です」と述べ、新たなアイディアを取りまとめ、若者の前途をよりよくするためのプラットフォームとしてのYCAの重要性を指摘しました。志水氏はまた、TICADがインフラの整備に取り組んでいることにも言及。志水氏は「経済統合が加速し、域内関税が引き下がれば、域外からの対アフリカ投資を刺激します。それに加えて、ビジネス環境の整備が重要です。」と強調しました。

アルバート・ムチャンガAUC貿易産業委員は、ワークショップ参加者に対し、アフリカ域内貿易自由化に努めるよう促しました。「パスポートの問題があることは知っています。皆さんがもし、アフリカの10か国以上で働いているのなら、私のところへ来てください。皆さんがAUのパスポートを取れるよう、助力させていただきます。」この発言は、温かい拍手で迎えられました。さらに「55か国が加盟するAUは、国境のないアフリカを作り、マーケットを作り、中間層を作ろうとしています。今から2030年までに、中間層の人口は60%増大し、若者が活躍できるマーケットが生まれます。」ムチャンガ氏はこう熱く語るとともに、AUの旗艦プロジェクト「単一アフリカ航空輸送市場(SAATM)」についても触れ、アフリカの航空会社が域内全土を無制限に飛ぶことができるよう、取り組んでいるところだと語りました。

ラミン・マネーUNDPアフリカ地域センター所長は、若者の熱意に感謝の意を表明しました。「皆さんこそが未来です。アフリカは皆さん次第なのです。私たちは、アフリカの問題の根本的原因を突き止める必要があります。『アフリカがアフリカを見捨てた』のです。ですから『私たちはどうすれば、この悪循環を断つことができるのか』を考えるべきです。答えは多くありますが、そのうちの1つは、このプロセスと各地域への活動にもっと民間セクターを呼び込めるよう、構造を強化することです。私たちは機会を与えてくれる土地として、アフリカを描く必要があります。よって、今回の地域ワークショップの第1の目的は、アフリカ20か国で、プログラムの目的に対する理解を共有しながらYCAの展開を支援する40人から50人のYCAフェロー第2陣を養成することにあります。」

ワークショップでは、経験を共有するプレゼンテーションやパネルディスカッションも多く行われました。イノベーションや品質、ブランディング、パッケージングといったキーワードが聞かれました。また、参加者からは、下記のコメントがありました。

通信専門家でワシントンDCのWorld Space Radioの設立者でもあるノア・サマラ氏は、情報通信技術(ICT)がエチオピアだけで30万人を超える雇用を創出できる可能性があると述べました。これを活用すれば、若者にとって素晴らしいプラットフォームができ上がります。「ICTですべての雇用を作り出せるわけではありませんが、多様な方向から 多くの人を巻き込むことはできます。」

国際法を学ぶ大学院生のメロン・マーシャ氏(25歳)は本ワークショップに参加をしたことで、新しい気付きを与えてくれるものだったと言います。以前は、研究を終えて就職活動をし、雇用されることが目標でしたが、「今回のワークショップに参加し、自分でビジネスをすることの可能性を学びました。これはいいタイミングでした。卒業したら自分の会社を持つつもりです。アイデアもたくさんあります。」と感想を述べました。

イノベーション・技術省で担当大臣を務めるシュメテ・ギザウ氏(博士)は、「雇用創出は、政府にとって最大の成果でなくてはなりません。私たちがデジタル・リテラシーを活用すれば、多くの雇用を作り出せるからです」と述べています。ギザウ氏は、ICTの分野でもっと取り組まねばならないことがあるという点を強調しました。

若者の雇用は、アフリカ連合が定めたアフリカの開発アジェンダ(アジェンダ2063)と国連が定めたアジェンダ(アジェンダ2030/持続可能な開発目標(SDGs)で、ともに優先課題とされています。最近の国連アフリカ経済委員会60周年記念式典で、UNDP総裁は次のように述べています。「豊かな鉱物、若年人口、さらにはほとんど手つかずの天然資源を抱えるアフリカは依然として、多くの機会に恵まれた大陸です。開発の次なるフロンティアは間違いなく、この大陸にあります。」


さらに詳しい情報は、下記にお問い合わせください。
Ms. Rediet Yejote-Work
Email: rediet.yejote-work@undp.org, Phone: +251 (0) 944720338