3月22日 世界水の日に寄せて-ケマル・デルビシュ国連開発計画(UNDP)総裁

2007/03/23

私たちは、2015年までに安全な水を継続的に利用できない人々の割合を半減させるという明確なターゲットを含むミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限の折り返し地点に立っています。しかし、世界がこの目標を達成するには解決しなければならない大きな難問があります。まず、9億人以上が安全な水へ、13億人以上が改善された公衆衛生へとアクセスできるようにする必要があるのです。

今年の世界水の日は、「水危機を切り抜けるために」がテーマです。水ストレスが世界中でほぼ8億人に影響を及ぼすとともに、生態系崩壊の危機に直面し、さらには水を得るための競争を激化させ、国家間の緊張を高めているという現実に着目するものです。水が枯渇しているわけではないのに、水への不安定なアクセスが世界の各地域で人間開発に多大な脅威をもたらしています。一例として、43か国でおよそ7億人が、年間一人あたりの水使用量がわずか1700立方メートルを下回るという水ストレスにさらされて生活しています。このままでは、20年後には30億人が同様の生活にさらされるだろうと予測されています。都市、工業、農業およびエネルギー需要の拡大による水危機が深まる中で、最も危険にさらされているのは、生計手段と食物の確保が困難な貧困層の人々です。『人間開発報告書(HDR)2006』は、安全で安価な水へのアクセスは人権であると位置づけ、水危機に立ち向かう世界行動計画の作成を呼びかけました。本日、世界水の日に私たちは再び呼びかけます。この水危機の問題は、適切に対応してゆかなければすべてのMDGsの達成にも影響を及ぼしてしまうでしょう。

皮肉にも今日の世界では、所得が低い人ほどより多くの金額を水を利用するために支払わなければいけない構造となっています。先進国では水に所得の3%以上を使うことが経済的困難の指標とみなされているのに対し、開発途上国の貧しい家庭では、彼らの収入の10%を水に費やさなければなりません。水危機の課題は、根本的な不平等に起因しているのです。『HDR2006』で強調されているように、水へのアクセスの問題は純粋に水自体の不足、もしくは水を供給する環境の不足によるものではなく、しばしば財政的・政治的な力の欠如を反映するものです。貧困層の人々は、選挙で投票したり、病気にかからずに生活したり、災害や紛争の危険を回避したり、経済力を蓄えたりする機会を得られないのと同じ理由で、十分に安全な水を得ることができません。金銭の不足は、発言する権利や機会の不足、もしくは欠如を意味します。世界の水危機に立ち向かうことは、貧困問題に立ち向かい、人間開発をよりいっそう進展させるために必要不可欠な行動なのです。

気候変動は貧しい人々の生計をさらにむしばむ恐れがあります。降水パターンの変化、干ばつおよび洪水の多発により、確保できる水の量はますます予測し難くなります。これはさらに貧困層を悩ませる要因となります。最貧困層の人々は気候変動に対する責任を負わないにもかかわらず、その余波を直接に受けます。困難に苦しむのは彼らなのです。アジアとサハラ以南のアフリカでの農業生産性は、気候変動の影響を最も受けると予測されます。また、海面の上昇によってバングラデシュのような海抜の低い国では飲み水への塩水混入の危険性が高まります。リスクと脆弱さを軽減し、管理するための効果的で適切な適応戦略の開発が、国家における水管理の方針と国際支援の主要な課題と位置づけられなければなりません。

水危機は困難な問題かもしれませんが、この非常事態に向けて具体的な対策を講じることは可能です。世界水の日は、この重要な問題についての議論を再度活性化し、また行動を促す重要な機会です。イギリスは、来年までにアフリカでの水と公衆衛生分野に対する支援を倍増し、2011年までにさらにその倍の2億ポンド(約4億米ドル)に増額することを誓約しました。G8やほかのドナーには、貧困層は水を必要としているという事実を受け止め、イギリスの例に続くことが必要です。MDGsのターゲットのひとつである、世界で安全な水と衛生設備を継続的に利用できない人々の割合を半減させるために必要な投資は、ヨーロッパと米国で1か月間に消費されるミネラルウォーターの費用と同額です。MDGsの達成が開発途上国にもたらす経済的恩恵は380億米ドルと予測されます。6月に開催されるG8サミットにおいてこれらの数字の持つ意味について入念な検討がおこなわれることを期待します。

水資源の管理を強化し、今のうちに将来の水危機に対応できるよう計画と投資をおこない、そして将来の水問題を自分たちで管理できるように国やコミュニティを強化することによって、私たちは人間開発を次の段階に進むように支援することができるのです。解決しなければならないのは水文学的、技術的問題ではないのです。すべてのレベルの力、政治とガバナンスがより大きな役割を担っています。私たちには世界的な水危機に取り組む手段があります。今必要なのは、これらの挑戦に関与する意欲、共同の政治的意志、そして適切な政策対応なのです。

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