ヘレン・クラークUNDP総裁スピーチ 人間開発報告書2014「人々が進歩し続けるために:脆弱を脱し強靭な社会をつくる」

2014/07/24

Photo: UNDP Tokyo


人間開発報告書2014「人々が進歩し続けるために:脆弱を脱し強靭な社会をつくる」
国際公式発表
国連大学ウ・タント国際会議場、東京
2014年7月24日(木)
午後2時15分

防災と人間の安全保障を世界でリードする国として広く認められている日本で、人間開発報告書2014「人々が進歩し続けるために―脆弱を脱し強靭な社会をつくる」を発表できることを嬉しく思います。また、本日の国際公式発表にご参加いただいた安倍晋三総理大臣にも感謝いたします。

今年で23回目を数える人間開発報告書のテーマは、特に時宜を捉えたものとなっています。各国がミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けてラストスパートをかける中で、脆弱性の増大が常態化し、災害や危機がこれまでの前進を停止または逆転させるおそれがあるからです。

シリア、南スーダン、中央アフリカ共和国―これらは深刻な暴力的紛争の影響によって人間開発が逆戻りした国々の一部にすぎません。昨年11月のフィリピンにおける台風被害や、5月のボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、クロアチアでの洪水のような異常気象は、人命の損失や生計手段、インフラの破壊によって、ほんの数時間で開発の成果を台無しにしてしまうおそれがあります。ここ日本でも、そして私の母国であるニュージーランドでも、地震とその余波がコミュニティに壊滅的な被害を及ぼしました。

しかし、危機の開発への影響や失われた人命の数は、どこでも同じというわけではありません。なぜなら、人間開発報告書も指摘しているとおり、適切な施策や措置によって、脆弱性を低めたり、個人やコミュニティがショックから立ち直れる力を育成したりできるからです。

これは決して簡単なことではありません。今回の人間開発報告書によると、開発途上国91か国のほぼ15億人が教育、健康、生活水準をいずれも満足に得られない多次元的貧困の状態にあります。さらに8億人が貧困に逆戻りするリスクを抱えていると見られます。この事実は私たちに、単に人々を貧困から救い出すだけでなく、この救出を永続させなければならないことを改めて示しています。

今回の報告書はこの認識に立ち、保健や教育などの基本的な社会サービスの普及、老齢年金や失業保険をはじめとする社会保障措置の強化、そして完全雇用に向けた本格的な取り組みを求めています。この趣旨に沿った措置はいずれも、脆弱性を低下させます。

報告書は、基本的な社会サービスの普及が貧困国を含め、全世界で実現可能だと論じています。それはまた、開発の成果を定着させ、社会の一体性を強化し、逆境に対する社会全体の強靭性を高めるという意味で、賢明な投資といえます。

報告書は、社会をより公正かつ包摂的にするため、制度と法律の対応力強化を求めています。報告書によると、これらは特に、ジェンダー、民族性、職種、社会経済的地位といった雑多な要因にしばしば基づく差別と排除により「構造的脆弱性」を抱える人々にとって重要となります。

報告書は、ライフサイクルの各時点で脆弱性が異なるという証拠も提示しています。乳児期、幼児期、就職期、高齢期など、特定の時期に経験する挫折は、特に克服が困難なこともあります。こうした人生でも傷つきやすい時期に照準を絞り、時宜にかなった投資を行えば、私たち全員が潜在能力を十分に発揮する助けとなります。

個人と社会の脆弱性を低下させるうえでいかに効果的な施策を導入しようとも、自然災害をはじめとする危機は今後も発生し、場合によっては破壊的な影響を及ぼすことでしょう。紛争や混乱を予測、予防する能力を育成し、防災と復興に投資を行えば、人々、コミュニティ、そして国家が危機を管理、緩和し、ショックからより早く立ち直ることができるようになります。

この関連で、私は日本が「兵庫行動枠組2005-2015:災害に強い国・コミュニティの構築」を全面的に支援し、2015年3月の国連防災世界会議の開催国を引き受けられたことを高く評価したいと思います。

この報告書の内容は、兵庫枠組の更新と、ミレニアム開発目標(MDGs)に代わるポスト2015持続可能な開発アジェンダ策定プロセスに大きく貢献します。脆弱性と強靭性という対をなす理念が人間開発の観点から同時に検討されたのは、今回が初めてです。この報告書に留意して、ライフサイクルと構造的脆弱性に取り組み、危機と災害に対する強靭性を高める意識的な取り組みを行えば、私たちが直面している人間開発への弊害の多くが回避できることは間違いありません。

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