日本の国際協力60周年記念シンポジウムにおける ヘレン・クラーク国連開発計画総裁のスピーチ(仮訳)

2014/11/17

Photo: UNDP Tokyo


本日、日本の国際協力60周年記念に際し、お祝い申し上げることができることをとても光栄に存じます。

このような特別な場に招待して下さり、そしてお話しさせていただける機会をいただき、岸田外務大臣と田中JICA理事長に感謝申し上げます。

過去60年もの間、日本はアドボカシーやグローバルパートナーシップへの強いコミットメントを通じ、国際開発協力をリードする世界の中でも屈指のODAトップドナーです。事実、1991年から2000年まで、日本は世界第1位のODA拠出国でした。

日本の援助プログラムは、開発途上国への技術協力とインフラ支援から始まり、人間の安全保障という概念に基づいた現在の支援まで発展してきました。日本のODAはその質の高さ、支援対象と焦点の当て方の的確さから見て、多くの国々の開発になくてはならないものとなりました。

この60年で世界は大きく変わりました。また、ここ14年間のミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた取り組みの成果を含め、国際開発協力にとって多くの主要な目標が達成されました。

MDGsは世界中で国際的な開発優先課題として広く受け入れられた開発目標です。MDGsで課題として挙げられたのは、極度の貧困・飢餓の撲滅、環境の保護、教育の普及、健康の改善、男女平等・女性のエンパワーメント、そして開発のためのグローバルパートナーシップの推進です。

国際的には、多くのMDGsに掲げられた課題の達成には著しいものがありました。例えば、1990年当時と比べると、極度な貧困状態におかれた人々は少なくとも9億人減っていますし、世界的に平均してみると、初等教育就学の男女比率の目標は達成され、現在ではほとんどの子どもたちが小学校に就学しています。また、乳幼児死亡率も劇的に減少しました。

日本が、貧困削減から保健、教育、農業分野まで積極的に開発に参加してきたことは、MDGs達成のために重要でした。UNDPはこのような日本と、様々な分野で長期的なパートナーとしてここまで共に活動してきたことを誇りに思います。私たちのこれまでの協力の例としては:

• 20年以上にわたるアフリカ開発会議 (TICAD) での連携があります。TICADの共催者として、UNDPは2013年から2017年にかけての横浜行動計画にコミットし、日本とその他のパートナーと共に包括的で持続的な成長、強靭な国づくり、そして人間の安全保障を促進するために活動を続けています。

• 約20年にわたり、ガバナンスから、貧困削減、環境、そしてインフラにわたるまで、日本はUNDPのパレスチナ人支援プログラム(PAPP)の活動を支えてきました。

• 「ネリカ米」プロジェクトでは、日本とUNDPはサブサハラアフリカの31の国々の米の安定供給のために共に活動してきました。1970年代後半に日本の二国間技術協力として始まったこのプロジェクトは、今では日本とUNDPの連携を通して三角協力・南南協力へとスケールを拡大しています。

ただ、日本を含め、多くのパートナーが積極的に開発にかかわり、MDGsのもとで既に意義のある進展があったにもかかわらず、多くの重大な開発課題が依然として存在し、また、新しい開発課題も出てきているのも事実です。

国家間だけでなく、ひとつの国の中でも開発の格差があることは周知の事実であり、多くの貧しい人々や社会的な弱者が開発の恩恵から取り残されてきました。さらに、MDGsが2015年に向けて掲げたのは貧困・飢餓の撲滅ではなく、そうした状態のもとで生活する人々の割合を半分にすることでした。つまり、今も多くの人々が日々深刻な欠乏状態の中で生活を続けているのです。

自然災害や紛争、あるいはその他の深刻な社会的混乱によって、開発の進展が妨げられたり、逆戻りしたりすることもよくあります。ハイチでの壊滅的な地震、フィリピンの台風「ハイヤン」、そして数え切れないほどの紛争や動乱がその例です。

防災、紛争予防と復興は、長い間日本の開発支援の中心的分野として取り組まれてきました。困難に直面した際の強靭性を高めることを目指した日本の揺ぎない取り組みは、多くの国々へ恩恵をもたらしてきました。

UNDP は、これらに関する取り組みで日本のパートナーであることを誇りに思います。
例えば:

• アフガニスタンやソマリア、パレスチナ、イラク、そしてシリアといった困難な状況下での支援

• ガバナンスや若者の雇用確保といった重要分野を通じた過渡期にあるアラブ諸国への支援

• フィリピンやハイチでの自然災害発生時の緊急支援や早期復興支援、などが挙げられます。

UNDPは来年3月に仙台で開かれる第3回国連防災世界会議の開催準備でも日本を積極的にサポートしています。ポスト2015開発アジェンダや、新しい気候変動枠組み、ポスト兵庫行動枠組みへの国際的関心の高まりは、強靭性の構築と人間の安全保障の保障が担保される新しい開発パラダイムを作る重要な機会です。

良い知らせは、2015年以降MDGsを引き継いで策定されるポスト2015開発アジェンダは、MDGsよ りも果敢に、より進化したものになるということです。既に、国連加盟国は新開発目標が「普遍的で、全ての国々に適用できる一方で、国によって異なる違いを考慮し、それぞれの国の政策を尊重する目標が定められた一つの枠組みになり、さらに平和、安全、民主主義的統治、法の支配、男女平等、そして全ての人の人 権を保障するものになる」ことに合意をしています。

ODAの役割は、ポスト2015開発アジェンダの実施、特に多くの低所得国や小島嶼開発途上国支援の実施において、とても大事なものになります。ODAへのコミットメントは、ポスト2015開発アジェンダの交渉において、信頼関係を構築するためにも重要なものです。

ただ、MDGsの実施と比較すると、新しい開発目標の実施のためには、いかにもっと良い政策を選択することができるか、に重きが置かれることになるでしょう。今日のODAは、国内の予算状況や、貿易、投資、そして送金による資金の流れによってその存在が小さくなっています。したがって、これまで以上に、ODAは他の資金の流れが開発に十分な貢献となるような触媒として使われることが求められているのです。

これら全ての課題は、来年アジスアベバで開催される第三回開発資金国際会議において話し合われ、その結果は持続可能な開発目標の合意のためににとても重要な意味を持ちます。持続可能な開発目標は、2015年9月に世界中のリーダーたちによって合意されることが期待されています。

ここで、新しい開発アジェンダで、ODAの 潜在的なインパクトを最大限に発揮させるために重要な鍵となる4つの原則を提案させてください。その4つとは、①パートナーシップの構築、②各国のオー ナーシップの確保、③開発のために人間を中心としたアプローチをとること、そして④包括性と平等性を確保することの必要性です。 

これらの4つの原則は、日本の開発支援のアプローチの核として長い間実現されてきたものです。そして、この4つの原則はUNDPの新戦略計画の中心を担うものでもあり、今後の日本とUNDPのパートナーシップを導いていくものです。

この4つの原則それぞれについて少し詳しく説明させてください。

• パートナーシップの構築
様々 なアクターが活躍する開発分野においては、従来のパートナーシップを強化するとともに、新しいパートナーシップを築くことが重要になります。現在はそれぞ れの取り組みがばらばらに行われがちで、開発途上国にとって負担になる状況が見られます。また、貿易から移民、課税、温室効果ガスの排出削減にいたるまで 分野横断型に開発政策をより一貫したものにしていく必要があります。

日本のODAは長い間、伝統的ドナーから新興国、国際機関、民間セクター、市民社会団体まで幅広いパートナーとともに行われてきました。

たとえばTICADでは、日本の隣国のアジア諸国や、アフリカの国々、国際機関、民間セクター市民社会を含む様々なパートナーの関与を奨励し、南南協力、そして三角協力に力を入れてきました。

もう一つの例としては、官民が協力して世界の最も貧しい人々へ最新の医療保健技術を届けられるよう取り組んでいる日本の公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)が挙げられます。UNDPは、GHITの活動においても、日本のパートナーであることを非常に嬉しく思っております。

• 各国オーナーシップの確保
開 発の優先課題は、開発途上国の人々の願いや必要性、需要によって決められるべきものです。援助は開発課題に対処するうえで触媒的な働きをすることはできま すが、その結果が持続的なものになる為にはその国の人々、制度、組織が強化され、その国のオーナーシップが確固たるものであるときに初めて実現されるので す。

日本は開発途上国がそれぞれの開発優先課題を決定できるように、開発途上国との密な対話を継続的におこなうことで、その国のオーナーシップの尊重を実現してきました。これはTICADを成功に導く柱として知られる「オーナーシップ」と「パートナーシップ」という2つの原則にも反映されています。アフリカ連合を第5回TICADの共催者に加えたことは、このTICADアプローチがアフリカのオーナーシップを尊重している一つの重要な証なのです。

このオーナーシップの確保は、日本とUNDPの連携の礎でもあります。たとえば、日本が拠出したアフリカ気候変動適応支援プログラム(AAP)では、アフリカ各国が気候変動という喫緊の課題に十分に対処できるよう、その政策能力を強化するために、日本とUNDPが協力しました。

さらに、日本は、自らの経験と知識を開発途上国の能力構築のために分かち合うことを惜しまず支援してきました。1954年から、すでに10万人を超える日本の専門家が、開発途上国へその国の能力強化のために渡り、同時に、50万人を超える開発途上国の専門家たちが日本を訪れています。こうした経験や知識の共有は、開発途上国の現地の人材や産業を育てる、日本の中心的な取り組みなのです。

• 開発のために人間中心のアプローチをとる重要性
人間一人ひとり、そして社会の能力を高め、機会を増やすことが、我々の全ての取り組みの中心となるべきです。

人間の安全保障の概念の下、日本は人間中心の開発をリードしてきました。人間の安全保障の概念は、人々の生活に影響を与える危険性の要因や結果を精密に分析し、かつ、国々やそこに住む人々の実際のニーズや能力とは何かを見つける、非常に有益な考え方です。

このアプローチは、貧困削減から食の安全、法の支配、市民の安全、人権、紛争予防、ジェンダー、若者、気候変動からその他の環境問題にわたるまで、UNDPの活動に非常に深く関連するものです。人間の安全保障も、またUNDPが1990年から取り組んできた人間開発の概念も、その根底にある考え方は同じです。

日本は国連に設置された人間の安全保障基金に拠出する主要国であり、UNDPはその基金によって拠出されるプロジェクトを他の国連機関と連携して一番多く実施してきた機関です。

例えば、ガーナ北部においては、人間の安全保障に関する国連のジョイントプログラムとして、国連食糧農業機関(FAO)、UNDP、国連児童基金(UNICEF)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連世界食糧計画(WFP)、国連大学(UNU)の 6つの国連機関が協働実施機関となり、地域に根ざした紛争予防のために、現地の能力強化と向上のための支援を実施しました。また、ウズベキスタンのアラル 海域においては、5つの国連機関が現地の経済、食料、保健、環境の安全性を高めるために協力して支援を実施しています。

• 包括性と平等性の確保
経 済成長だけに重点を置いても、貧困や欠乏の撲滅にはなりません。包括的で平等な開発へ目を向けることによってこそ、開発の恩恵から除外され疎外されてきた 人々にも支援が行き渡るようになるのです。私は、日本が社会的弱者に注意を払った支援をしてきていることを知っています。

日本は、男女平 等や女性のエンパワーメントにも積極的に力を入れています。例えば、アフガニスタン、エジプト、東ティモールでは、女性に焦点を当てた有権者教育。アフガ ニスタン、ソマリアでの女性警察官トレーニング。さらに、イエメン、エジプトでの若者層の女性の雇用促進などといったUNDPのプロジェクトを、日本は継続して支援しています。

結論
UNDPを代表し、日本政府と日本の皆様に、日本の国際協力60周年のお祝いを、心より申し上げます。

日本と開発途上国の連帯は、世界中で貧困撲滅が達成され人間の安全保障が保証された将来を実現するために、なくてはならないものです。

UNDPは、これからも日本と開発分野で共に協力していけることを心より願っております。

ご清聴ありがとうございました。

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