ヘレン・クラーク国連開発計画(UNDP)総裁:国際連合経済社会理事会(ECOSOC)での講演「国連システムにおける開発・人道・平和の統合」

2016/02/23


人々の生活と国家の開発の道筋に甚大な影響を及ぼす現在の人道危機の規模の大きさは、国連を含む国際社会による団結した対応を求めています。

国連システムにおいても、強靭性の強化、災害リスクの軽減、あらゆる危機からの復興支援を行う従来の縦割を越えて取り組み、長引く危機においても一体となって任務を遂行する新しい手法が多く見られるようになっています。

どのようにすれば国連システムが開発、人道、平和という三本柱の調整と統合を強化することができるかについて、いくつかのポイントを共有します。

1.SDGsと国連憲章の統合
持続可能な開発のための2030アジェンダ達成を支援するため、国連システムは開発、人道、平和そして安全の観点から知識、能力、資源を寄せ集めなければなりません。新しいグローバルアジェンダは明確で、平和なくして持続可能な開発はありえませんし、持続可能な開発なくして平和を実現することもできません。

2030アジェンダは、開発の過程で「誰をも置き去りにしない(Leave no one behind)」という志が明確です。開発のラストマイルに手を伸ばすとは、現在人道支援を必要としている世界の1.25億人に手が届くということを意味します。この数字は、長引く避難生活を余儀なくされている人々を含みます。世界の人々が、戦争と迫害のために避難生活を送る平均期間は、17年間と推定されています。従って、難民問題には人道と開発の両面からの対応が求められるということです。

国連の開発システムにおいて、私たちは、災害対策・リスク軽減・防災を通じた人道ニーズの軽減、長引く危機時における人間開発に向けた支援の継続、そして危機からの復興支援といった私たちの強みを持ち寄ることができます。

2030アジェンダの実施支援において、国連の開発、人道そして平和構築に向けた努力を機能させるための一貫した枠組を発展させることはとても重要です。可能な限り、私たちは現行の仕組を改善することを通じて、解決策を模索すべきです。

解決策を模索する中で、男女格差を含む不平等が根強くはびこる状況において、持続可能な開発目標(SDGs)も平和・安全のどちらも実現できないということを再認識することが重要です。女性と平和・安全に関する新しい国連安全保障理事会決議2242に沿って、大幅な格差の是正を掲げるSDGの目標10は、進んで取り入れられる必要があります。

2.統合プログラムの策定
統合したプログラム計画は、国連事務総長が我々に求めているように、国連システムが国連憲章に横断的に取り組むことを可能にするために必要です。

SDGsに向けて共に取り組めるように、私たちの分析・計画手法を最新化し、統合させなければなりません。

私たちの開発と人道支援計画は、複数年に渡って共同で実行すべきです。これは、人道、平和構築そして開発に向けた取組がしばしば連携を欠いている、長期化した危機の状況において、特に現実的な問題です。

一か国におけるひとつの国連枠組は、すべてのデータ、分析、リスク評価そして戦略計画をまとめるという私たちの目的であるべきです。

政府系パートナーと共により戦略的な国連開発援助枠組(UNDAFs)の実現に励む国連の開発グループとして、私たちは人道・平和構築パートナーと共に、共通の資源動員戦略に係る複数年計画を積極的に促進していきます。これらの戦略は、世界人道サミットに向けて国連事務総長が発表した報告書で求められたように、成果を出すための資金調達を模索すべきです。私たちは、このアプローチに関する合意を得るため、イスタンブールで開かれる世界人道サミットの機会を活かさなければなりません。

3.国連平和活動との連携
国連カントリーチームと国連ミッションの連携を強化する必要があります。

平和維持活動や特別政治ミッションといった国連の統合ミッションの場合は特に、真に統合された国連の対応を行うというビジョンを達成する必要があり、そのためには、各自の職責と能力に基づいて、さらなる取り組みが求められています。ミッションが立ち上がる際、計画を立案する人たちが国連の現地チームがもつ現状の能力について十分な情報を得て、その向上を支援することはとても有益です。

そして、国家レベルにおける国連システムは、共通の目的を明確に認識すべきであり、それを通じてこそ、確固たる平和を集団的に推進することができます。国連ミッションと国連のカントリーチームが協働して立案した計画をより活用することで、これらの目的の多くを実現することができます。ミッションは、最初から、カントリーチームが適切に実行できる事業領域に取り組む際の役割を認識しておくべきであり、その上で、国連事務総長副特別代表、常駐調整官、人道調整官、常駐代表に必要な権限委譲をすることを含めて、彼らを支援すべきです。

システム横断的に、私たちは統合の推進と動機づけを行い、統率のとれたミッションの成功事例から得る教訓を活用することができるのです。これは国連事務局長会議が4月に行われる次の会合で扱おうとしている議題の一つです。

4.資金調達
私たちは、国連の資金調達の仕組と、国連システムが人道・開発・平和構築の領域をまたがって計画・運営する方法の結びつきをもう一度考え直す必要があります。

理想的には、従来型及び革新的資金調達メカニズムの双方を通じて、複数年コミットメントを伴う全体として資金調達を行うことで、一つの一貫性のある国連枠組が、複数の資金源を活用することができるでしょう。

長引く危機や脆弱な状況下において、革新的資金調達を含めた資金調達の選択肢を議論するにあたり、世界銀行とその他の国際的・地域的な金融機関の役割が増大していることを私たちは歓迎します。

ドナーも、私たちの仕事に資金拠出をする上で、国連システム全体をうまく協力させるような動機づけについて考えて頂くことが必要です。これは長引く難民対策に対する資金拠出をどのように再構築するかも含めて考えなければなりません。これらの対応の開発に関する部分は、既存システムでは見過ごされる可能性があります。

ドナーの柔軟な対応が必要不可欠です。成果の評価や気候変動と人道支援に関する資金調達等を活用した国家計画及び優先事項と整合性をもつ効率的な資金ファンド(複数のパートナーによる信託基金等)なくして、成功はありえません。国連開発グループ(UNDG)は、統合的な資金調達戦略と共同出資が、開発、人道、人権、平和活動において、より良い相互作用を促進すると信じています。

5.組織間調整メカニズム
より強力な組織間調整メカニズムが必要です。

国連常駐調整官/人道調整官は、然るべき権限、信頼と支援を得てリーダシップを発揮し、与えられた責任範囲を成し遂げなければなりません。彼らは「Deliver as one(国連諸機関が一体となった任務遂行)」を実行するため、組織横断的に能力と資源を要請・動員できるべきです。開発と人道の調整という2つの機能が分離することは決して理想的ではないのです。

結論
国際協力が活用できる資源量は限られています。私たちは、2000年にミレニアム開発目標(MDGs)を打ち出した当時と比べて後退した国際経済状況下でSDGsを実行する時代に突入しました。また、世界は、長引く難民問題や第二次世界大戦以降見られなかったような規模の危機に直面し、拡大する深刻な異常気象が新しい平常になりつつあります。

 

 

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