ヘレン・クラークUNDP総裁 「アフリカ人間開発報告書2016」発表会における基調講演

2016/08/28

第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の公式プログラムとして開催された人間開発報告書2016発表会で基調講講演をするヘレン・クラークUNDP総裁 Photo:Yukiko Abe/UNDP Tokyo


【2016年8月28日、ケニア・ナイロビ】
国連開発計画(UNDP)は本日、アフリカ人間開発報告書2016『アフリカにおけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの促進』を発表しました。これによると、ジェンダーの不平等はサハラ以南アフリカに年平均で950億米ドルの損失をもたらしています。この金額は、2014年に1050億米ドルと、アフリカ全体のGDPの6%にまで膨れ上がり、包摂的な人間開発と経済成長に向けたアフリカの取組みが危機に陥っています。

ヘレン・クラークUNDP総裁は、本日のローンチ・イベントで「労働市場や教育、健康などの分野でジェンダー格差を縮められれば、貧困と飢餓の根絶を加速することができます」と語りました。第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で開催されたこのイベントには、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領、日本の岸田文雄外務大臣、北岡伸一JICA理事長も同席しました。

ヘレン・クラーク総裁は「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの促進は、正しい動きであると同時に、開発になくてはならない要素です」と述べています。

今回のUNDPの報告書では、アフリカの女性の地位向上を阻む政治的、経済的、社会的主因を分析し、ジェンダー格差を縮めるための政策や具体的な対策を提示しています。具体的には、ジェンダー関連法の規定と法の実践との間の矛盾に取組むこと、有害な社会的規範を打破し、差別的な制度環境を転換すること、そして女性の経済、社会、政治への参加を確保することが挙げられます。

ジェンダー不平等のコスト
資源や権力、富の分配の不平等などの根深い構造的障害が、不平等を継続させる社会的制度や規範と相まって、アフリカの女性、さらにはアフリカ全体の前進を阻んでいます。当報告書は、ジェンダー不平等が1%拡大すれば、その国の人間開発指数(HDI)は0.75%低下すると指摘しています。

人間開発指数(HDI)は、健康で長寿、教育、人間らしい生活水準という、人間開発の主要な側面における達成度を大まかに示す指標です。


アフリカの初等教育就学率では、ジェンダー格差は急速に縮まりつつありますが。アフリカ女性の人間開発の成果は、男性の87%にすぎません。その主要な原因は、女性の中等教育修了率と労働参加率が低く、妊産婦の死亡率が高いことにあります。

報告書によると、アフリカの女性の61%が職に就いてはいるものの、こうした仕事は賃金も評価も低く、いまだに経済的に排除され、ほとんどがインフォーマルな労働部門に属しています。

アフリカにおいて、女性は、非農業のインフォーマルな労働部門の雇用全体における66%を占めていますが、女性の所得水準は男性1ドル当たり70セントにすぎません。女性が経営者を務める民間企業は、全体のわずか7%から30%に止まっています。

当報告書は、重要な調査結果として、サハラ以南アフリカの労働市場におけるジェンダー不平等による経済的損失総額は、2010年以来、年平均で950億米ドルにのぼっており、2014年にはこの金額がアフリカ全体のGDPの6%に相当する1050億ドルに達した可能性があると報告していいます。

明らかに、社会的規範は女性が教育や有給労働に費やせる時間と、経済・金融資産へのアクセスを阻止し、アフリカ女性の地位向上を阻んでいます。例えば、アフリカの女性は依然として、水汲み作業の71%をこなし、そのために年間延べ400億時間を費やしているほか、銀行口座を開設したり、貸付を受けたりすることも難しい状況です。

アフリカの女性は、未成年の結婚や性的・身体的暴力、妊産婦死亡率の高さによって、健康にも深刻な悪影響を受けており、中でも出産年齢に達した女性が最も大きなリスクに晒されています。報告書は、思春期の出産が1%増大すると、成人女性の死亡率が全体で約1.1ポイント上昇すると指摘しています。

アブドゥラエ・マー・ディエエUNDPアフリカ局長は「ジェンダー格差が残っている状態で、持続可能な開発目標(SDGs)とアフリカのアジェンダ2063を達成することは夢物語であり、現実的ではありません。ジェンダー格差を解消すれば、アフリカで2桁の経済成長の目途がつくだけでなく、その開発目標の達成にも大きく貢献することでしょう」と語っています。

ジェンダー平等と女性のエンパワーメント実現への道のり
ジェンダー不平等に取組むためには、女性の社会的福祉とより生産性の高い生活に向けた経済的機会の関連性を考慮して、全政府的かつ全社会的なアプローチが必要です。

当報告書では、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを促進する戦略的指針として、法律の改正、女性の政策決定への関与を加速する国家能力の構築、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進のための部門横断的アプローチの採用、女性の資産所有と資源管理の推進の4つを提示しています。

報告書はさらに、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント、そしてその延長線上にある「持続可能な開発目標(SDGs)」と「アフリカのアジェンダ2063」の達成を加速するための6つの具体的行動も提言しています。

· ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを重視した制度設計とするために、すべての開発計画の策定と実施においてジェンダー平等を組織的な政策視点として捉えること

· もはやアフリカのリーダーは有害な社会的規範に正面から取組む責任を避けては通れないことを認識し、破壊的な社会規範に直接的に対処すること

· 短期的でその場しのぎの政治的、経済的政策決定を下すのではなく、目先の優先課題を長期的なビジョンと関連づけて、より包摂的なエンパワーメント志向の開発軌道を描き出す形で、ジェンダー平等を目指す計画策定と予算の優先づけを行うこと

· 政策を策定、完遂するとともに、結果や社会のニーズが変化した場合には、柔軟で強力、積極的かつ責任ある社会的枠組みを推進し、適応力のある国家機関を確保すること

· データを最大限に活用し、政策決定の改善や、情報に基づく政策の変更と軌道修正に役立てること。(国家レベルを超えたデータは、地域や地方への影響を捉えるうえできわめて重要です)

· 各部門間で方策や戦略、経験を共有するため、ジェンダーを重視する政策やイニシアティブの策定と実施に向けて地域連携と南南協力に参画すること

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを達成するには、政府、市民社会、民間セクターなどの開発パートナーの連携が必須です。

当報告書は、この観点から、「アフリカ女性投資銀行」と、職場のジェンダー平等に関する基準を普及させるための「ジェンダー・シール」認証制度の導入という、2つの重要なイニシアティブを提案しています。

報告書は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに多くを投資する国々が、人間開発でも良好な成果を上げていることを明らかにしています。アフリカの包摂的成長を確保するためには、女性と女児という、この地域の人口の半数を占める人々が転換を促す役割を果たすことが欠かせません。

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