アヒム・シュタイナー総裁の日本記者クラブにおけるスピーチ

2017/08/10

 

私は本日この場でお話させていただくことを大変光栄に思います。UNDP総裁に就任して約2ヶ月が経ちました。長年UNDPと強固な関係にある日本を訪れ、国連の、そして世界の未来にとって重要なテーマである「持続可能な開発のための2030アジェンダ」について話すことができて非常に嬉しく思います。

過去20~30年にわたって経済学や国際協力学の分野では、北においては望ましい状況は達成されたので、「開発」は南で行われるべきであるということが前提とされてきました。しかし驚くべきことに、2030アジェンダの採択によって、世界のリーダーたちはこの見方を放棄しました。歴史上初めて、各国が共に普遍的な開発目標を採択することに合意したのです。それは、全ての国が、健全な地球とそこに住む人々の福祉を確保するためにはすべきことがある、ということを表しています。このアジェンダでは国単位での活動では不十分であることも認めています。お互いの国は相互に依存しており、疫病や気候変動、デジタル経済の発展、そして2030年までに到達すると予想されている85億人の人口に必要な食糧生産能力など、世界の重要な課題解決のために協力していかなければなりません。

SDGsは、MDGs、またそれ以前の時代におけるめざましい発展に基づいています。1990年以来、極度の貧困状態で暮らす人の数は半分以上減りました。初等教育を受ける生徒の数も特にサブサハラ地域を中心に増え、より多くの女子生徒が学校に通っています。実際に開発途上国全体では、初等、中等、高等教育における性別間の格差はなくなってきています。感染症対策の分野でも大きな進展が見られます。新規HIV感染者は2000年から40%以上減少し、2000万人の人々が、人命を救う抗レトロウイルス療法にアクセスできるようになりました。妊産婦及び乳幼児死亡率も大幅に減少しています。

しかし、いまだすべきことは山積みで、2030アジェンダはMDGsで達成されなかった目標を達成するためだけでなく、開発課題とリスクが相互に関わり合う時代に取り組むための世界の大志を掲げています。

 

不平等:特に各国内における不平等は悪化しています。全体として、多くの人々は全く、あるいは平等に開発過程からの恩恵を享受できていません。不平等の高まりはそれ自体が問題であり、社会的な連帯を妨げ、不安定化を助長します。

紛争:シリアやアフガニスタンで起こっているような、長引く紛争は、漸く達成した開発の恩恵を台無しにしてしまいます。シリア危機発生以降、シリアは30年以上の人間開発の成果を失ったと推定されています。それゆえに、強い組織によって支えられた平和と包摂がSDGsには必要不可欠なのです。

気候関連のリスクを含む災害:同じく開発の進展を脅かします。だからこそ、環境に関する目標がSDGsには含まれているのです。環境の悪化は、情勢の不安定化及び紛争の原因にも結果にもなり得ます。残念なことに、気候関連のリスクは、気候変動への対策が取られない限り悪化していくでしょう。

 

必要性は高く、SDGsの目標は高く設定されていますが、朗報なのは、SDGsの施行から最初の2年で、私たちはすでに並外れたことを目の当たりにしているということです。

 

第一に、世界中の政府が、グローバルなレベルでの約束を各国内での活動にまで落とし込んでいます。ニューヨークで開催された国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)における今年度のSDGsレビュー会合では、物理的に可能であった数よりも多くの国が自発的に報告をしました。その報告の多くは、各省庁によってではなく、大統領あるいは首相が主導した取組でした。私は、今年度のハイレベル政治フォーラムにおける日本のプレゼンテーションや、包括的かつ効果的なSDGsに関連する施策の実施を確約する安倍首相のリーダーシップに見られるように、模範になろうという日本の熱意に大きな関心をもって注目しています。

これらの努力は、SDGsが日本と密接に関連していることを表しています。防災や気候変動に対する行動はSDGsに組み込まれていますが、それは日本のように地震や台風の被害を受けやすい島国にとって非常に大切です。先日、九州や秋田を襲った豪雨や洪水は、災害がもたらす被害を改めて思い起こさせました。女性管理職の割合を向上させる等、ジェンダー平等も未だ国家の優先事項です。

第二に、どこで「持続可能な開発目標(SDGs)」を耳にしたかに関わらず、役割を何か果たしたいと熱望している人々がいます。新しいアジェンダをまとめる過程において、1000万人を超える人々が、自身の期待と優先事項を発信しました。強固なコミュニケーションと関与する手段はこのゴール推進のために必要不可欠であり続けています。私は日本がSDGsに対する一般認知を高めようとしていることを嬉しく思っています。鍵となるのは、SDGsの17ゴールを暗唱して皆に教えることではないと思います。むしろ大切なのは、何を変えるべきなのかを人々が理解し、地球、社会、経済に関連するSDGs全体が1つのパッケージとして国の開発に対する考え方の基盤として認識されるよう手助けをすることです。人々の生活における現実とSDGsの公約を関連づけるいう観点で、メディアの役割はとても重要なのです。

第三に、民間企業はMDGsの時よりも現在のSDGsのほうが遥かに取り組みやすいと気づいたようです。以前は、民間企業の参加は、経済成長、雇用創出、税収に貢献するという観点から捉えられていたのに対し、現在は、このSDGsという開発アジェンダにおいて、民間企業はより広くより統合された役割を担う機会があります。この類まれな機会があるという指摘から私たちは学ぶことが多くあります。この点において、日本が官民パートナーシップ(Public Private Action for Partnership: PPAP)に焦点を当てているということと特に密接に関わるのです。

 

SDGs・パートナーシップ・UNDPの役割

実際、私たちはSDGsに関連した計画や政府の構造を設定する初期段階から、SDGs達成を促進するための政策、パートナーシップ構築が世界中で見られる段階に移っています。ときにパートナーシップは、明確にSDGsや2030アジェンダに関連していないかもしれません。しかし、私たちの世代における開発は、単一的な経済指標だけでは推し測れないことが自明の理となっています。私たちの世代において、平等、公正、及び持続可能性は開発にとって不可欠であるという認識のもとに形作られなければなりません。

私たちは誰も取り残すことはできません。間違いなくこれは2030アジェンダの中でもっとも強い一文といえます。もし私たちがそれを真剣に捉えるのであれば、全てが変わります。なぜなら私たちが2017年に苦しんでいることは、初めに誰かを取り残し、後から彼らを取り込むことは「開発と発展の対価」であるとしばしば合理化してきた開発のシナリオです。このアプローチからは「不平等や持続不可能性」が増す現象が生まれ、しばしば開発をむしばむ結果となります。そうして社会を数世代後戻りさせているのです。

このことは私たちにリスクを体系的に特定し、管理する必要性を訴えています。つまり言い換えれば、開発に対して想定されるリスクをあらかじめ把握するアプローチが必要であるということです。それぞれの文脈において、どんなリスクが開発を後退させうるのかを評価することが大切です。UNDPは我々のアドバイスを最も必要としている人々と共に活動することに焦点をおいています。私たちは、開発に対するグローバルな次元での深い理解をもって、強いパートナーシップを少しずつ築きながら活動しています。

2030アジェンダは、「開発」に焦点をあてた唯一の幅広い国連機関であるUNDPが、何のために発足されたのかを表しています。私たちは、セクターを超えた相乗効果を求め、その効果を社会の一人一人に手を差し伸べるために、各国が彼ら特有の道を進みつつ、手を取り合って活動しています。UNDPは他のどの機関より、大きな存在感をもっており、それは民間セクターにおいても同じです。UNDPは世界を通じて人材や人脈及び知識へのアクセスを持っています。180以上の国で働く17,000人の職員は時に、災害発生後、最前線で人々が明日生きながらえるための支援をしています。他方、各国に対して20-30年先の国の姿を見据えた開発戦略のアドバイスを行っています。

 

UNDPと日本のパートナーシップ (日本にとって重要な国際課題を含む)

真に統合的なアプローチを採用することは複雑な課題を浮き彫りにします。「誰一人取り残さない」ことを可視化することは、多くの文脈において難しいのです。また、賢くリスクを特定し管理するには別のスキルが必要です。それゆえにパートナーシップは必要不可欠になるのです。

長期に渡るUNDPと日本のパートナーシップには、SDGsの達成に向けた共通の努力において素晴らしい価値があります。例えば、私たちは共に:

  • 中東地域の安定化に向けた協力と暴力的な紛争の根本的原因に対して取り組んでいます。
  • アフリカ大陸における経済発展を緊密に支援しています。
  • アジア太平洋地域における津波に対する早期警報システムと災害への備えを強化しています。
  • 新しい医療技術へのアクセス、納品及び、導入を改善するために低中所得国の能力開発をしています。

また、私たちは、例えば、無報酬の育児・介護の重荷への対処等、ジェンダー平等と女性の経済的エンパワーメントについてより緊密に取り組みたいと考えています。私たちは、高齢化の課題への開発アプローチを拡大するために、女性を含めた高齢者を開発政策や計画に取り入れる日本の経験を活用したいと考えています。

国連で「人道支援と開発の連携」と呼ばれるものは、日本政府に支持されている「人間の安全保障」という概念の中心に据えられています。それは本来持続可能な開発と持続的な平和は表裏一体であるという事実の認識に基づいています。互いにどちらかを欠いては存在し得ません。日本は、危機の影響下にある人々の「保護」と「エンパワーメント」を強調しつつ、トルコ、ヨルダン、イラク、レバノン及びバルカン半島諸国におけるシリア難民危機への取り組むため、UNDPとUNHCRの双方に資金を提供しています。また、ウガンダ、ザンビア及びカメルーンにおける長期化した難民への取組も支援しています。

 

結論

冒頭に申し上げた、世界における2030アジェンダを実行する機運をつくることについて再度触れて結論とさせてください。SDGsへの取組で最も鼓舞させる事例は、複雑な状況下にありながらもアフガニスタンやソマリア、ヨルダン及びウガンダなどの国々で見られます。

アフガニスタンとヨルダンは、今年の国連ハイレベル政治フォーラムにおいて、2030アジェンダを平和と開発の条件を確立するための条件であると見なし、SDGs達成のための彼らの計画を発表した43カ国のうちの2つです。ウガンダはSDGsを国の枠組みに統合するという、目覚ましい取組を発表した国です。ソマリアは、30年以上の間ではじめて、国家開発計画にSDGsを主流化しました。これらは異例の期間における並外れた努力です。

改めてSDGs実施に資する日本の多岐に渡る努力に感謝いたします。日本は、SDGsの達成に向けた取組を国内だけでなく、他国も同様にそれぞれの国の中で実施されるべく支援しています。これはSDGsという大志を現実化するリーダーシップの形であり、私たちは日本と緊密な連携が続くことを楽しみにしています。

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