パキスタン:多民族が暮らす社会の結束を目指して

2019年5月7日

パキスタンでは、地域社会の結束や暴力・争いに対する回復力を高める取り組みにおいて、女性の存在感が薄いのが現状です。先入観によって女性は家庭内に追いやられ、しばしばこういった取り組みへの参加を阻まれています。このような現状にもかかわらず、世界各国では女性が社会的結束を強化し持続させるために重要かつ先進的な役割を担っています。そして、これらの取り組みは、特に平和構築の観点から、女性をプラスの変化と社会変革の積極的な主体とする上で重要な役割を果たしています。パキスタンの活気に満ちた若い女性たちは、平和の持続と地域社会の結束を促進している世界中の女性の仲間たちに尊敬の念を抱いています。

ファリサ・メモン(27歳)は、カラチの多民族地区であるサアディ町出身。ボランティアのソーシャルワーカーです。ファリサの初の社会的活動は、地元​​の若い女性たちに対し、サアディ町の公共職業訓練所に入所するよう勧めることでした。この訓練所は、以前は家事(のみ)に従事していた女性に縫物、刺繍、仕立ての研修を無料で提供し、ファリサの働きかけの結果、近所の女性25人がカラチの評判の良い衣料品工場「Gul Ahmed」で職を得ることができました。この経験によってファリサは勇気づけられ、周りの人々が直面していたより困難な問題に取り組みたいと思うようになりました。例えば、近年サアディ町に旧連邦直轄部族地域からやってきた人々が子どもたちを学校に行かせていないことに気づき、調べてみたところ、入学手続きに関する情報が届いていないことや、住む場所を追われた親達が学校との接触を躊躇していることが原因であるということがわかりました。これに対処するため、ファリサは自治体の学校長と協力し、子どもたちを近くの学校に入学させるよう親たちに促しました。

こういった経験を経て、ファリサは衝突が起きやすい地域社会において平和と社会的結束を促進するための取り組みに加わることになりました。 彼女は、最初の任務としてメモン人、ムハジール人およびベンガル人のコミュニティがある低所得地域のコランギに行き、日常茶飯事だった(また民族問題と捉えられがちだった)街中での争いや衝突を防ぐためには、子どもや若者が怒りの抑制や対立の対処法について訓練を必要とすることに気づきました。これに対処するため、ファリサと彼女のチームは、募金イベントやパキスタンの多様性の素晴らしさを称えるイベントを学校で開催しました。彼女はまた、コランギから若者たちを呼び社会的結束をテーマとする街頭での演劇公演を開催し、異なる民族的背景の子どもたちが一緒に遊ぶよう促しました。

2018年、ファリサはUNDPが若者能力育成プログラムの一環としてシンド州、バロチスタン州、ハイバル・パフトゥンハー州出身の若手活動家50人を対象に始めた「リーダーシップ、交渉力およびコミュニケーション力の能力開発および指導研修」の参加者の一人に選ばれました。この研修は、草の根活動家が、関連する有力者と繋がり、(必要な場合には)個人としても率先して取り組み、対象者にメッセージと成果を効果的に伝えることによって、既存の地域社会開発プロジェクトを拡大するために必要な技能と知識を習得することを目的としています。ファリサはこれまで活動現場での実践を通じて技能のほとんどを学んできたため、体系化されたコースを通じて開発の実務家や若手リーダーに必須の技能を学べることを嬉しく思いました。

「地域社会のために働くという情熱がこれまで私を動かしてきましたが、対象者に重要なメッセージを伝えたり、有力者や変革を起こせる人たちと効果的に繋がったりするために必要な技能を持っていませんでした。この研修はコミュニケーションや交渉の力を磨くのに役立ちました。」とファリサは語っています。