イエメンを新型コロナウイルスから守るには停戦が必要

2020年4月17日

紛争により2018年にアルジャムホリ病院が被害を受けました。長引く争いにより、すでに非常に弱い医療システムが破壊されました。新型コロナウイルスはそこに襲いかかり、特に最も脆弱な人々が影響を最も大きく受けるのです。イエメンの病院や診療所の50%未満のみが機能しており、ほとんどが有資格の医師・看護師など、医薬品、そして多くの場合は電気さえ不足しています。Photo: UNDP Yemen

イエメンでは新型コロナウイルス(COVID-19)の症例はまだ報告されていません (4月3日時点)。しかし、世界中で目に見えない津波が国々を襲い、世界的な健康危機や経済的大惨事が発生するのを目の当たりにしている今、地球上で最も脆弱な国の1つであるイエメンはウイルスが押し寄せた時のために備えなければなりません。

イエメンの武力紛争がこのまま続いた場合には、もはや勝ち目のない新型コロナウイルスという新たな無慈悲な敵に直面することになります。それは脆弱なわずかな利益さえも脅かし、世界で最悪の人道的および開発危機をさらに悲惨なものにします。今すぐに戦闘を止めることは、つまり国連主導の調停により紛争を終わらせることを可能とし、すでに希薄な環境での新型コロナウイルスの発生を防ぐのに希望を生むでしょう。

長引く紛争は、すでに非常に弱いものであった同国の保健システムを壊滅させました。新型コロナウイルスは、最も脆弱な人々が最も影響を大きく受けます。国連開発計画(UNDP)のイエメン紛争影響報告書によると、2019年末までに紛争によりイエメンの開発が21年遅れ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成が31年遅れたことを示唆しています。紛争により、イエメンの病院や診療所の50パーセント未満のみが機能しているのに留まり、そのほとんどが有資格の医師や看護師、医薬品、さらには電気さえも不足しています。  

紛争中の国

問題は、紛争中の国でどのように準備、対応、復興できるかです。

3月25日、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、新型コロナウイルスという災害を回避するためにイエメンに停戦を呼びかけました。これに続いて、マーティン・グリフィス国連事務総長イエメン担当特使は、戦争当事者に対し今すぐに行動するよう促し、「戦場はイエメンを分裂させ、新型コロナウイルスが発生した際への対応をより困難にするでしょう。」と述べました。

これに対して、すべての戦争当事者は積極的に反応しました。しかし、最後まで遂行することで、何百万人もの命を救うことができるのです。新型コロナウイルスの致命的な感染拡大を緩和するために、誰もがそれぞれの違いなどは脇に置き、戦いを止め、取り組みを調整する必要があります。イエメンの迅速かつ効果的な対応を確実にするために、地方、国、国際的な調整された公衆衛生政策が必要不可欠です。

UNDPは、疫病の発生と過去のパンデミックからの教訓により、連帯、科学、人権によって推進される最も脆弱なグループに焦点を当てた効果的な対応を設計することができます。イエメンの新型コロナウイルスについては、準備、緩和、復興を通じて、国連の対応に4つの柱で貢献しています。

第一防衛線を強化

防衛システムの最前線の役割である、医療システム、サプライチェーン、医師、看護師を強化支援することが重要です。英雄的な医療従事者の保護、例えばフェイスマスクや防護服の提供など、当局との強力なパートナーシップは、イエメン人が医療への平等なアクセスと治療を確保するのに役立ちます。

国連常駐調整官と世界保健機関(WHO)が主導のもと、当局と協力しながら、UNDPは必要な物資の調達、重要なインフラの復旧、機器の運搬を支援します。最前線に届くために、財政的および技術的サポートを通じてローカルガバナンスを強化する一方で、効果的なサービス提供を確実にするために市民社会のパートナーシップ強化を後押しします。

曲線を平坦化する

世界中の新型コロナウイルスの経験からの学びとして、社会的距離を考慮したり、在宅勤務をし、学校を閉鎖したり、大規模な集まりを延期したりすることが最も効果的です。

UNDPと案件設計に追加的な対策を導入することにより、ウイルスの拡散を遅らせるための関係当局とWHOの封じ込め戦略の取り組みをすでに支援しています。

現在および将来の保護

より迅速な復興を可能にするためには、食糧援助、直接現金給付、Cash for Work(雇用創出・現金報酬)、および公共事業計画を含む既存のプログラムの適用範囲を拡大することにより、社会的保護を強化しなければなりません。刑務所内の人々、国内避難民、および混雑した地域に住む人々を保護することも不可欠です。

UNDPは関係当局および実施パートナーと協働し、イエメン全体の関連分野における既存のプログラムを拡大しています。

経済を力づける

イエメンはすでに経済インフラの崩壊、給与未払い、そして仕事不足に苦しんでいます。

UNDPは、世界銀行、欧州連合、およびその他様々なパートナーシップと協力し合いながら、既存のプログラムを拡大し、また新規プログラムを開発します。中小企業へのサポートを増やし、農業などの地域のバリューチェーンを支援し、官民パートナーシップを強化するなど、様々なプロジェクトを通じて雇用創出に引き続き取り組んでいきます。

新型コロナウイルスがイエメンでの別の災害にならないように守るため、紛争を今すぐに止めなければなりません。イエメンの海岸に押し寄せる津波から、私たちは皆、ウイルスを倒すという共通目標のため団結しなければなりません。

イエメンは、もはや待つことはできないのです。