ナイジェリア北東部の紛争の被災者の復興と平和構築

2020年12月18日

レベッカ・ジョゼフさん、アダマワ州ホングLGAウバ村 photo: UNDP Nigeria

2009年以来、ナイジェリア北東部はボ コ・ハラムの反政府活動によって、危機 に陥っています。2020年上期の時点で、790万人が緊急支援を必 要としていました。地域の一部では、暴力的過激派による テロや攻撃が続いていますが、多くの コミュニティは安定を取り戻し、避難民の帰還も始まっています。帰還を加 速させ、コミュニティの復興を支援す るため、UNDPナイジェリア事務所では日本政府とのパートナーシップを通じ、コミュニティと被災者の生計改善に取り組んでいます。

対象のアダマワ州とヨベ州、ボルノ州で支援を受けた6名の声をお聞きください。

1. レベッカ・ジョゼフさんはアダマワ州ホングLGA(地方行政区)ウバ村に住む母親で、6人の子どもを育てています。レベッカさんは自分の畑にソルガム(モロコシ)とササゲを植えました。「私はもう15年以上農業をやっています。暴力のせいでこれまで家族のために伝統的なやり方でわずかな土地しか耕すことができませんでしたが、今回日本政府とUNDPの豊富な資金提供により農業普及員による支援を受けることができました。彼らが教えてくれた農法を取り入れることによって収穫量が増えたため、家族が必要とするものを手に入れることができるようになりました」とレベッカさんは語ります。

農業普及員が行っている農業技術訓練は、生産性の高い新しい手法を学ぶのにとても重要な役割を果たしました。農業普及員は作物ごとの農地の耕し方を教え、良質な種子の特徴、作物や土壌条件によって使用する肥料の量と種類、殺虫剤や殺菌剤の性質、病気や害虫ごとのその使用量と種類、種まきの方法、収穫技術と収穫後の保存方法などを説明してくれました。農業手法により収穫量が増えました。これまで私たちが行っていた農法は大きく改善しました。

レベッカさん自身も農業普及支援を受けた他のメンバーも資金に余裕がないため、種子率、殺虫剤や殺菌剤の使用などについて推奨された内容を完全に守り実行することはできていないと認めています。日本政府とUNDPを通じ、自分たちウバ村の村民がウバ村に滞在する農業普及員や農業開発プロジェクトとの連繋と強力なノウハウを持っていることも良いことだとレベッカさんは語ります。


2. ウマル・サイドゥさんはアダマワ州ホングLGAウバ村の農民です。以前農民たちは先祖代々伝わる古い方法で農作物生産を行ってきたと彼は言います。日本政府の支援によりUNDPが農業開発プロジェクトと共同で実施した農業普及サービスのおかげで、農民たちは適正農業規範(GAP)について学び、知識を得ることができました。

農業普及員は、農地整備の時点から作物の収穫に至るまで現場で指導を行い、畑の耕し方、良質な種子の識別、様々な作物について推奨される種子の使用、除草、収穫、および保存方法などについて研修会を開き、現場で実地指導をしてくれました。

推奨されるGAPを採用したことにより今年は生産量が増え、余剰生産物を市場で売って子どもの学費や医療など家族の出費に充てることができ、自分にとって人生を変えるほどの支援になったとウマルさんは語ります。ウマルさんは来シーズンにも農業普及員から助言をもらいたいと語り、GAPを守るつもりだと断言しました。ウマルさんは他の農民や今年のプログラムに参加できなかった人たちにもこの支援を広げる大きな可能性を示しました。

ウマル・サイドゥさん、アダマワ州ホングLGAウバ村 Photo: UNDP Nigeria


3. アイシャ・マルムタさんはヨベ州フネLGAダウラ村で3人の子どもを持つ女性世帯主です。自分には十分な収入源がなく、作物生産は家族の需要を満たすには足りないと語ります。彼女は家族の中で唯一の稼ぎ手であり、多くの責任を抱えています。家族の基本的ニーズを満たすため、施しものや借金に頼らなければなりません。

アイシャさんは、ナイジェリア北東部において紛争の被害を受けた人々に対し、日本政府の資金によりUNDPが立ち上げた農業開発プロジェクトとの共同による農業普及サービスとして、普及員からの支援を受けたと語ります。これは神様から贈られたチャンスであり、家族の未来を変えるため我が家の門をたたいてくれたのだとアイシャさんは語ります。普及員たちが村で会合や研修会を開き、たくさんの知識や情報を実際に見せてくれたおかげで、アイシャさんや他の農民たちも今年は多くの収穫が得られると語っています。

生産高が多かったのは、良い時期に十分な雨が降るなどの自然の要因に加え、普及員たちが農業生産の向上に大きな役割を果たしたことも重要な要因の一つだったとアイシャさんは語ります。「今シーズン私は日本政府、およびUNDPの共同の取り組みにより、推奨される作物栽培方法について徹底的な指導を受けました。私はトウモロコシとマメを栽培しています」とアイシャさんは語りました。

昨年は雨の量や時期などの自然条件が良かったにも関わらず十分な収穫が得られなかったそうですが、今年は収穫が多く、それによってたくさんお金を得ることができ、他の食料や学費などの費用に充てることができるそうです。

アイシャ・マルムタさん、フネLGA、ダウラ村 photo: UNDP Nigeria


4. マキンタ・バカウーさんは45歳で、日本政府の資金によりUNDPが実施した農業開発プロジェクトと共同の農業普及支援を受けた500人の農民の一人です。マキンタさんはヨベ州の内乱による紛争の影響を受けたフネLGAダウラ村の出身です。マキンタさんは「私は30年以上もの農業経験がありますが、農民に新しい生産技術を教えることの影響を初めて見ることができました。成果が表れています」と語っています。

マキンタ・バカウーさん、ヨベ州フネLGAダウラ村 photo: UNDP Nigeria

作物栽培のサイクル全体にわたり、普及員たちがグループ研修会や現場での実証により指導してくれた小さな技術による影響がこれほど大きい違いをもたらすことを農民たちは初めて知ったとマキンタさんは語ります。種子の数量、種類、種まきの方法、除草、殺虫剤の使用などあらゆる小さな技術を普及員が教えてくれた通りに実行した結果、驚くべき生産量を得ることができたと言います。これまで農業をやってきてこれほどの収穫量を得たことはなかったそうです。またナイジェリア北東部では統計によると、収穫後のロスと劣悪な保存条件の影響がきわめて大きく、多大な損失をもたらしていました。

マキンタさんや他の農民たちは学習した作物生産の推奨方法を続けると語っています。これまで知りませんでしたが普及活動は重要なツールであり、来シーズンも普及員たちと連絡を取るつもりだとマキンタさんは語りました。


5.ディクワ地方行政区(LGA)はボルノ州東部に位置します。ディクワの町はマイドゥグリから東へ90kmの距離にあり、バマ、ンガラ、マファ、マルテの各LGAへの入り口となっています。ディクワは発展しつつあり、農業が主に行われています。

8人の子どもを持つ母親のヤガナ・ブカルベさんは「軍が定めた安全区域内の農地しか使えないため、農民の機会が制限されています。農民として育った私たちにとって、農業は唯一できる仕事です。現在農作業が盛んに行われ、私は今年の収穫によって自立できます。私には子どもがいるため、日々彼らを食べさせていかなければなりません。農業普及員から受けた指導と支援により、収穫量を大きく増やすことができました」と語ります。

ヤガナ・ブカルベさん photo: UNDP Nigeria


6. 「農業は私たちの誇りです」とムスタファ・ハッサンさんは語ります。さらに、「UNDPのおかげで今年数百人の農民が農地に戻り、人道支援に頼らなくても家族を食べさせることができるようになりました。農民たちはある程度の満足を得ています。以前、私たちは大規模な農業を行い、収穫したものをガンボルやチャドで売ることもできました。暴力が私たちから生活手段を奪いました。しかしUNDPは私たちが心血を注ぐ農業を続ける希望と新たな機会を与えてくれました」と語りました。

ムスタファ・ハッサンさん photo: UNDP Nigeria

昨年、ディクワ周辺ではほとんど農業が行われませんでした。今年日本政府を通じたUNDPの支援により、人々は畑に出るようになり、雨季の農業に従事する農家がますます増えています。ヤガナ・ブカルベとムスタファ・ハッサンは、今年農業支援を受けた1,000人の農民の一人です。