ガーナ・西アキム郡における症例発見調査のために、学校の外に集まる生徒たち

 


新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(The Access and Delivery Partnership:ADP)は、命を救う医薬品と医療技術が、それらを最も必要とする人々に確実に届くよう、低中所得国とともに取り組んでいます。ADPは各国が政策及び規制を強化し調和させ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた国主導による持続可能な進歩に必要な改革を推進するため、専門家や関連機関の能力向上を支援しています。 ADPは日本政府の支援のもと、国連開発計画(UNDP)が主導し、コアパートナーである世界保健機関(WHO)、熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)およびPATHと共同で実施するイニシアチブです。詳細については、ADPウェブサイトをご覧ください。


ガーナヘルスサービスで、ブルーリ潰瘍対策および風土病トレポネーマ症根絶のための国家プログラムマネージャーを務めるナナ・コナマ・コテイ医師は「風土病トレポネーマ症は、道の終点に見つかる病気だとしばしば言われます。主に、基礎的な保健サービスへのアクセスが限られた貧しいコミュニティに住む人々が感染の被害に遭います。」と述べています。

特定の地域に蔓延するトレポネーマ症細菌の慢性感染症である風土病トレポネーマ症は、皮膚、軟骨及び骨に影響を及ぼし、外観を損なう消耗性疾患です。主に15歳以下の子どもと人里離れたコミュニティの住人に広く見られます。

治療しなければ、生涯にわたる障害を引き起こす可能性があります。

 

脚にできた風土病トレポネーマ症の潰瘍を医療従事者へ見せる西アキムの生徒ゴッドフリー・タマテ

 

かつて世界中の高湿熱帯諸国で見られたこの病気は、現在では、西アフリカのガーナを含む約15の国々で見られるのみとなっています。

風土病トレポネーマ症のような顧みられない熱帯病は、世界中で10億人以上の人々に影響を及ぼしています。2007年、風土病トレポネーマ症は、WHOの根絶を目指す顧みられない熱帯病に指定されました。

西アキム郡にあるトポアセ・メソジスト学校の生徒のゴッドフリー・タマテ君(14)は、「先月できた小さなおできが今月大きくなった。時々痛くなって、学校にいるときに集中できなくなる。だから薬局で薬を買ったけど、よくならないんだ。」と話しています。

 

風土病トレポネーマ症は、多くの場合手足に病変ができ、人と人との接触を通じて伝播します。

 

コテイ医師によると、「この病気は、たくさん遊びお互いに直接肌が触れ合う機会の多い子どもたちの間でよく見られます。一割ほどの治療されないままの症例が、外観を損なう永続的な風土病トレポネーマ症となってしまいます。」

「重要なのは、風土病トレポネーマ症の合併症は容易に防げるということです。この病気は容易に処置することができるのです。」

 

コテイ医師、首都アクラの事務所にて。

 

1950年代、風土病トレポネーマ症は世界的な根絶に向けた取り組みの対象となった最初の疾病群の一つでした。当初の対策は世界で5,000万人であった患者数を1964年に250万人にまで減らすことに成功しました。しかし、保健当局が他の優先課題に関心と資金を向けるようになったため、ここ数十年で急増しています。

2012年、風土病トレポネーマ症根絶に向けた見通しを一変する可能性のある、投与が容易な新治療法が発見されました。たった一度の抗生剤アジスロマイシンの経口投与により、2-4週間以内に治癒することが確認されたのです。アジスロマイシン錠の経口投与は、以前の根絶プログラムで使用されていた注射用ペニシリンに比べ、感染地域の大規模な集団治療に適しています。この発見は、WHOによる新たな根絶のための戦略(※英語原文)の策定及び、疾病の根絶に向けた国の対策の見直しに繋がりました。

現在、ガーナヘルスサービスによる、感染地域の住民に対し広く薬を配布する集団投薬を通じた風土病トレポネーマ症根絶に向けた取り組みが行われています。集団投薬の主な目的は、風土病トレポネーマ症の発生の防止とともに、治療、治癒、そして感染の連鎖を止めることです。

これらの取り組みの策定と調整の一部は、ADPの支援によりTDRが野口記念医学研究所と共同で行っています。

「プログラムの成功には政治的なコミットメント、リーダーシップ、資金面と薬の調達面に関わるリソースが必要です。現在、プロジェクト実施地域にはそれらが揃っているのです。」とコテイ医師は述べています。「風土病トレポネーマ症の根絶は、ガーナの人々の生活に大きな変化を与えます。変革をもたらす可能性を秘め、公衆衛生を間違いなく改善するでしょう。」

集団投薬は、2020年にまずはガーナ国内18の郡において開始されます。

データは限られていますが、2008年にガーナヘルスサービスにより実施された調査によると、国全体での風土病トレポネーマ症の有病率は0.7%と推定されていますが、一部の農村地域では20%にも達しています。国内16州のうち、グレーター・アクラ州を除くほぼ全ての州において症例が報告されてています。最も影響を受けているのは高湿な気候のイースタン州、ボルタ州、セントラル州、アシャンティ州、ブロン・アファフォ州、ウエスタン州です。

ガーナヘルスサービスの西アキム郡サミュエル・アジマン・ボアテン医師は、「確かに、風土病トレポネーマ症に対する効果的な治療法は存在します。しかし、根絶が効果的に行われ、感染の連鎖を食い止めるには、感染が確認された全てのコミュニティを対象とする集団治療が実施されなければならないのです」と指摘します。「1950年代の根絶キャンペーン以来、それが行われていませんでした。」

 

上空から撮影した西アキム郡のコミュニティ

 

2019年12月から2020年1月にかけて西アキム郡で実施された30日間にわたる「症例探し」とも呼ばれる感染の流行地域のマッピング調査により収集された情報は、後の集団投薬の計画策定に役立てられます。この調査では、郡の流行地域と非流行地域を特定しマッピングを行い、地方自治体レベルにおいて的を絞った集団投薬の実施を行うことが出来るよう、ベースラインが確定されました。また、地元の有力者や地域住民へのインタビューも実施され、この病気に関する知識の度合いなど、運営上の潜在的な課題を特定しました。

 

西アキム郡にある学校で、風土病トレポネーマ症の有無を判断するため皮膚の病変を見分けるスクリーニング検査を受ける列に並ぶ生徒たち。約13万の人口を有する西アキム郡は、10の市町村から構成され、そのうちの7つが風土病トレポネーマ症の流行地域となっています。

 

ボアテン医師は、「集団投薬は、複数の要素が段階的に組み合わされて行われます」、と説明します。「私たちは、医療従事者に対し疾病の特定と検査について、ボランティアに対しサーベイランスと疑わしい症例の報告についてのトレーニングを行い、その後、地域住民の認識を高めるべく、社会的動員(ソーシャルモービライゼーション)を行います。これらすべてが体系的に連携して、プログラムの成功を確実なものにします。」

 

西アキム郡における風土病トレポネーマ症の根絶のための集団投薬を統括するボアテン医師

 

さらに、ボアテン医師は、「最初の一歩は、流行地域であるコミュニティを探し出すことです。その結果をもとに、アジスロマイシンによる集団投薬の計画を立てます。仮に、全てのコミュニティメンバーがせめて一回でも治療されれば、疾病が広まり続けることはないのです」と強調します。

集団投薬は、入念な計画と複数の段階的な取り組みを必要とします。その準備段階の一部として、ADPは第一線で活躍するコミュニティに根ざした医療従事者の能力強化を支援しています。これらの活動はまた、アジスロマイシンの投薬を効率的に進めるにあたり障壁となる運用上の課題を特定することも目的としています。

風土病トレポネーマ症根絶に向けた国家プログラムに携わる医療従事者及び、地方レベルの顧みられない熱帯病の担当者は、症例特定・報告及び治療薬に対する有害反応のモニタリングについての研修を受けました。

ボアテン医師によると、「アジスロマイシンの単回経口投与の集団投薬を行ったコミュニティは、ほぼ全ての住民が投薬を受けたと仮定すると、風土病トレポネーマ症の有病率を12か月で90%減少させることが可能です」。

西アキム郡保健局で疾病管理を担当する公衆衛生担当官のソロモン・アンツィ・ブレフォは、近隣の学校で行われた症例発見のフィールドワークを次のように振り返ります。「私たちは、まず、子どもたちに風土病トレポネーマ症についての基本的な情報を伝えるための話をします。その後、病変、潰瘍、その他の皮膚疾患がある子どもたちとそうでない子どもたちとに分けるために、身体的特徴によるスクリーニングを行います。」

 

学校で健康教育を行う医療従事者

 

「症例発見チームは、皮膚の病変が風土病トレポネーマ症らしいかどうかを確認します。そして疑わしいとされた子どもたちを、迅速診断検査を行うための列に並ばせます。迅速診断検査の陽性反応は高い確率で風土病トレポネーマ症の感染を示しますが、その後、デュアルパスプラットフォームを使用し実際に今現在病気にかかっているかを判断します。」

 

ソロモン・アンツィ・ブレフォ(ピンク色のシャツを着用)ら、流行地域マッピングの一環で生徒たちの検査を行う西アキム郡保健局の医療従事者たち

 

チームは、風土病トレポネーマ症の感染を確認すると、その場でアジスロマイシンを投与します。

「2年以上前からこの腫れはあったよ。温かいお湯と薬局で買ってきた軟膏で治療してたんだけど治らないんだ。病院には連れて行ってもらったことはない」、と16歳のサミュエル・アチア君は悲しそうに話します。

 

風土病トレポネーマ症の治療を受けるサミュエル・アチア

 

ボアテン医師は、「それほど痛みが強くなく、ごく日常のものとして捉えられるため、人々は病院へ行きません。長年そのままになっているケースも散見されます。正しい投薬治療なくしての自然治癒はなく、放置すれば慢性的な潰瘍になってしまいます。」と説明します。

学校の訪問に加え、一症例たりとも見逃さないように他のチームは家を一軒一軒訪ねます。さらに、啓発活動に取り組むコミュニティボランティアたちも存在します。

 

地域住民に馴染みが深いことに助けられ、オク・アサレ・ジョシュアのようなコミュニティサーベイランスボランティアたちは、予防に関するメッセージを伝えたり、風土病トレポネーマ症の疑いがある症例を注意深く観察したりします。

 

教師であり、農夫でもあるアヌマ・コジョ地区のコミュニティサーベイランスボランティア、オク・アサレ・ジョシュアは次のように話しています。「ボランティアとして、私たちは地域を巡回し、地域住民、特に、子供どもたちに、少なくとも一日に一回は体を洗い、清潔を保つようにと教えています。また、どんな傷でも見つけたら最寄りの医療施設で検査を受けるよう伝えています。」

 

学校やコミュニティでの活動中、風土病トレポネーマ症以外の他の皮膚疾患にも注意を払います。

 

集団投薬が行われた後、地域で新規症例の発生がないかをモニタリングするため、コミュニティサーベイランスボランティアとコミュニティナースの助けを得て、監視が強化されます。

 

 

集団投薬の成功は、様々な関係者とのパートナーシップ構築にかかっています。適切な啓蒙活動や健康教育教材を通じて、政治的・地域社会的支援を動員しなければなりません。また、教育や水と衛生、予防接種、栄養、健康増進、コミュニティ開発に関わる組織など、分野横断的な協働が必要不可欠です。

「私たちは、他のプログラムで行われた集団投薬によって得られた教訓を生かそうとしています。」と、コテイ医師は述べています。「集団投薬を成功させるには、多面的なアプローチが必要です。社会的動員はその要であり、コミュニティからの賛同・協力は欠かせません。」

新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(ADP)は、今後、医療従事者の能力強化と症例発見活動の実施において、ガーナヘルスサービスを引き続き支援していきます。これらの活動は、ガーナにおいて集団投薬を実施し、この顧みられない熱帯病を根絶することを可能にする医療制度の強化に大きく貢献しています。

すべての活動が完了した時、感染の連鎖はついに断ち切られることでしょう。


著者:イアン・ムンガル(UNDP)/ プレイズ・ヌタコー(UNDPガーナ)/ 令官洋子(UNDPガーナ)
写真:ニイ・アマ・ソロモン
 
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