グラスゴーで開かれていた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、地球温暖化を抑制するための新たな合意を採択し、閉幕しました。アントニオ・グテーレス国連事務総長はこれを重要なステップとしつつも「まだ不十分」と評しています。
事務総長は「私たちは地球の気温上昇を1.5°C以下に抑えるという目標を維持するため、気候変動対策を加速しなければならない」と語っています。
1.5という小さな数字には、私たちが生きている現代にとって極めて重要な意味があります。
公平で豊か、かつ持続可能な未来に対する私たちの希望は、この数字にかかっています。科学者たちは異口同音に、気温上昇が1.5°Cを超えれば、健全な地球は将来望めないと主張します。この水準でも、海水面は上昇し、異常気象の頻度と規模は増大することにはなりますが、それでも2°Cの温暖化に比べれば、リスクははるかに小さくなります。
ちなみに、地球の気温はすでに1.1°C上昇しました。
グラスゴーのCOP 26では、適応策を目的とする資金や、適応策に関するグローバル目標、ジェンダー、「地方コミュニティ及び先住民プラットフォーム」など、重要な課題についても前進は見られたものの、全体としては物足りない結果に終わりました。
COP26に先立ち、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は厳しい警告を発し、今すぐに大胆な行動を起こさなければ、さらに危険な未来が確定してしまうと述べています。
その調査結果によると、コンマ以下の温度上昇ですら大きな違いをもたらします。
国連環境計画(UNEP)の報告によると、私たちがこのままの道を進めば、今世紀末までに地球の気温は2.4°C上昇することになります。
グラスゴー会議を控えた気候交渉担当者には、このような恐ろしい数字が突きつけられていたのです。
失敗は許されない状況でした。多くの指導者は、パリ協定が掲げる目標の世界的達成を目指し、自国が決定する貢献(NDC)を強化するという決意を新たにして、会議に臨みました。
UNDPの「気候の約束(Climate Promise)」は、全開発途上国の8割以上の国におけるNDCの策定の支援をしています。国連、市民社会、そして金融界からの35機関との連携により、気候変動への適応策や緩和策、自然と森、そして若者やジェンダーの問題に関し、インパクトも生まれています。
COP26に先立ち発表されたUNDPの新たな報告書「気候対策への意欲の現状(The State of Climate Ambition)」により、気候変動の危機を受けやすい国が非常に意欲的であることが明らかになりました。開発途上国と島嶼国の93%が自国のNDCの引き上げ、そのうち86%が緩和策の取り組みの強化に意欲的でした。
UNDPの過去2年間の「気候の約束」を通じた取り組みの中で、温室効果ガス排出の責任が最も小さいにもかかわらず、気候変動の影響を最も受けやすい国が、リーダーシップと決意を持っていることが分かりました。
先進国は2020年までに毎年1,000万米ドルを拠出すると約束していました。この目標はまだ達成されていないばかりか、さらに最近のUNEPによる推計では、実際のコストがこれをさらに上回ることが示されました。
UNDPはまた、市民の声を政策決定者に届けています。
UNDPとオックスフォード大学はG20議長国との連携により、気候変動に関する世界最大の世論調査の結果を発表しました。
この「G20みんなの気候投票(G20 Peoples' Climate Vote)」には、68万9,000人が回答しました。その中には18歳未満の若者30万2,000人以上が含まれています。
2021年初頭に発表された第1回調査結果を受け、今回の調査では18歳未満の若者が気候変動対策を支持しているということが改めて明確になりました。
アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「今回発表した『G20 みんなの気候投票』によると、G20 諸国では平均して若者の7割が、私たちが今、グローバルな気候緊急事態に直面していると認識しています。この気候緊急事態を今後引き継ぐことになる若者たちは、世界のリーダーたちに向けて、今すぐ気候変動対策をとるようにと、明確なメッセージを送っています。」と語っています。
「世界のリーダーの皆さんへ(Dear World Leaders)」と題するメッセージは、市民を政策決定者と直接につなげるパイプ役を果たしました。全世界のあらゆる世代から反応があり、根本的な変革を期待、要求する声が広がっています。
「私たちの子孫のための未来を確保するという仕事をしっかりと進めてください。さもなければ、皆さんは歴史に悪者として名を残すことになるでしょう。すでに悪者側にいるのですから」 – アルドさん(スイス)のコメント
UNDPが新たに発表した化石燃料補助金に関する報告書によると、危機を悪化させている化石燃料補助金は、世界の貧困層を気候危機から守るために各国が拠出を求められている資金の4倍にあたります。
私たちは「絶滅を選ぶな(Don’t Choose Extinction)」という、世界中で話題となったメディア・キャンペーンを通じ、化石燃料に費やされている多額の補助金の用途を、クリーンエネルギーや公平性の実現に向けた社会事業へと転換することを呼びかけています。
COP26での合意文書は、化石燃料に初めて言及していますが、その内容は土壇場の交渉でトーンダウンされてしまいました。
この合意はまた、特に排出量の多い国に対し、2022年末までに、2030年時点の目標をさらに強化するよう求めています。
UNDPのシュタイナー総裁はグラスゴーで、COP26で得られた前進を基に、各国によるNDCsの実施を支援することをねらいとして、「気候対策の約束」の第二段階の発足式に出席しました。
グラスゴー気候合意の署名に関し、シュタイナーUNDP総裁は1.5℃という目標が「まだ生きている」と述べます。
さらに総裁は「COP27への道は今ここから始まっています。COP26によって生まれた気運をさらに加速することが必要です。1.5°Cという目標の達成が危ぶまれる中、各国は早急に、COP26をきっかけとしてさらにコミットメントを強めなければなりません。COP26を終えた今、もう誰も幻想を抱くことなどできません。希望はまだ残っているとはいえ、人と地球を守れる余地は、日々刻々と狭まっているからです」と語りました。
希望を持てる理由は多くあります。年金基金による化石燃料事業への投資の停止や、各国による石炭火力発電の段階的廃止、さらには若者や先住民コミュニティその他、変革を要求する市民たちが持っているエネルギーなど、私たちはこれまでに起きたものとは比較にならないグローバルな転換を目の当たりにしているからです。
グテーレス事務総長は、こうした気候変動対策の推進者に次のようなメッセージを送りました。
「皆さんが落胆していることは知っています。しかし、前進へと至る道はいつも直線とは限りません。回り道をすることもあれば、溝があることもあります。それでも、目標はきっと達成できます。私たちは生きるために闘います。この闘いには勝たねばなりません。決してあきらめず、決して引き下がらず、前進を続けてください。」