TICAD7 高級事務レベル会合 アディスアベバにて:左から2番目

 

来年2022年には、チュニジアで第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が開催されます。今回は、2015年より国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部にてTICADユニット・プログラムマネジメント専門官を務める古我知晶( こがち あき)に、アフリカでの経験や、TICAD8の重要テーマなどについて話を聞きました。


(聞き手) アフリカで開発のキャリアをスタートしたそうですが、これまでどのような業務にどのような経緯で携わってきたのでしょうか。

2005年 から10年間ブルキナファソで勤務しました。はじめの3年は国連開発計画(UNDP)ブルキナファソ事務所で気候変動対策を担当し、その後は前職で関わりのあったブルキナファソ政府・環境省内の気候変動を扱う部署も兼任して勤務していました。

大学の学部では環境学を専攻し、国際関係、フランス語、アフリカ史を勉強した大学院でのフランス留学を経て、国連ボランティア(UNV)で研修を行った後、UNVの環境専門家として派遣されました。ブルキナファソはフランス語圏であり、かつ京都議定書を批准した直後で、国として気候変動対策の準備を行っていた時期であったため、最適な赴任先でした。

 

ブルキナファソ、北部サヘル地域にて 気象データを集める装置:画像右端
ケニア、気候変動適応策の知見探しのフィールドミッション:中央が古我知

 

ブルキナファソでは、現地の人々の生活改善のために現地政府職員の方々と共に毎日働きました。マラリアに計10回もかかるなど身体的にも辛いことも確かにありました。しかし、赴任した当初はそもそも何かと模索していた気候変動について任期を終えたころには100年後の予測が可能になったり、共同体や農村の生計を支える持続可能なコミュニティレベルの気候変動対策を活かし国家政策の形成に貢献できたりしたことは、かけがえのない経験で現在の仕事にも続く私の原動力となっています。

また以上のような気候変動国家政策への努力が認められ、ブルキナファソ政府が開発に貢献したブルキナファソの関係者に送る「開発栄誉賞」を頂きました。私個人へのメダルというよりも、環境省の方々の長年の努力がこのような形で認知されたことをとても喜ばしく思いました。ブルキナファソの国名は現地語で「高潔な人々の国」。何世紀にも及び砂漠化と戦いながら助け合い生計を立ててきた高潔な人々の国に少しでも貢献ができたのであれば、一生涯の誇りです。

 

ブルキナファソで開発栄誉賞を受賞している古我知
ブルキナファソの気象庁での会議にて:左から3番目

 

現在はニューヨークのTICAD本部でプログラム専門官として業務にあたっていらっしゃいますが、アフリカの現場での経験は現在の職務とどのように結びついていますか。

現在はニューヨークの本部にて、アフリカ全体でそれぞれ行われているプログラムの管理をしています。具体的には、アフリカの一部の国や地域で成果を上げているプロジェクトや政策事例を他の国での状況改善に用いることができないかというノウハウのマッチングや、各国のUNDP事務所の予算について拠出国への報告、3年に一度のTICADイベントの開催準備など、業務は多岐にわたります。

コロナ禍前は頻繁に現地に赴き、各国事務所の状況把握も行なっていました。 新型コロナウイルス(COVID-19)蔓延の影響で現地への出張が難しい現在は、ビデオ会議で国事務所と案件の執行状況の確認、プロジェクトの成果の広報、現地にいる日本人職員のサポート等に徹しています。毎朝6時・7時から国事務所やダカール/アディスアベバ事務所との打ち合わせに始まり、昼はニューヨークのチーム、そして夕方は日本と電話会議などを行い、出張はなくとも忙しい毎日です。

早くフィールドに戻りたいという気持ちはありますが、現場の国事務所での長い勤務があったからこそ、現在、本部にいても各国の事務所のプロジェクト執行の実態が把握できています。また同時に、将来、国事務所に戻った際に戦略的なサポートを行うためには、現在の職場において本部と地域局間の協力体制を理解することが非常に大切だと感じています。

 

前列、右から4番目が古我知

 

アフリカ開発において、TICADの果たす役割はどこにあるのでしょうか。

アフリカ全体では過去10年で極度の貧困に陥っている人々の割合は小さくなり、低所得国としての分類から卒業する国が増えました。将来を見据えると、若者層の増加、技術変革、アフリカ域内貿易の発展、人的資源などアフリカの明るい未来を約束する要素があります。一方で依然として蔓延する不平等、脆弱なガバナンス、気候変動、急速な人口増、工業化の遅れ、増加する紛争と暴力といった課題の解決も求められています。 UNDPはTICADの共催者として、1993年以後、今述べたような課題に対して持続可能な開発目標(SDGs)の達成を掲げ、人道・開発・平和の連携を推進してきました。 TICADは、主催者のUNDPと日本政府のみではなく、各国政府や国連諸機関、ビジネスセクターやNGOなども巻き込むオープンなプラットフォームとして、その訴求力の大きさが魅力であると思います。


ー 日本政府はUNDPと連携し、どのような形でアフリカ開発に携わる事ができるでしょうか。

日本は、TICADの主催と並行して歴史的にアフリカ開発に財政面・人材面の双方で大きな貢献をしてきました。特に産業人材の育成を目指す「カイゼン」プロジェクトは功を奏しています。

例としてUNDPがJICAとの連携で行なっているプロジェクトを紹介します。日本の製造業の知見を活かした生産性・効率性の向上を目的とし、JICAはアフリカ現地の中小企業を対象としてカイゼンプロジェクトを実施しています。カメルーンでこのJICAの研修を受けた人々が、「カイゼン・コンサルタント」として、 他国でオンライン研修に講師として参加し、研修を行いました。コロナ禍においては、中央アフリカやマリにおいて「カイゼン手法」を通して質の高いマスクの製造ができるようになり、結果WHOの基準を満たしたとして実際に現地で配られるに至りました。このプロジェクトは単にマスク製造の質や現地企業の生産性を高めただけでなく、地域の雇用や若者の支援につながり、コロナ禍後の復興に備えた人々の生計の再建に貢献しています。

このように、支援プロジェクトの推進自体を務める日本含む拠出国、支援の受け入れ側のUNDPのアフリカ各国事務所が、各国の優良プロジェクトのノウハウを共有する TICADをハブとして仲介し、一つ一つ社会問題を解決していく事の積み重ねが何よりも大切だと感じています。


ー 最後に、来年チュニジアで開催されるTICAD8への期待を教えてください。

TICAD8では、やはりパンデミックからのより良い復興がテーマになると思います。 新型コロナウイルスの世界的流行で発展途上国は特に大きな打撃を受けました。中でもアフリカは特に脆弱な状態に置かれています。過去30年で開発指標が初めて後退し、常に成長が記録されてきたサブサハラアフリカでも25年で初めて景気後退が予測されます。

UNDPは、新型コロナウイルスパンデミックの初期段階から、各国からの対応・復興支援要請に対し迅速な対応を行ってきました。TICAD8においてもまず第一に、グローバルヘルスの問題が焦点となり、先に挙げたマスク製造支援などパンデミックによる課題に直面している国々を支援する取り組みが、今後数年では重点的に行われるのではないでしょうか。そして中期的には、コロナ禍による経済の停滞や女性の雇用の喪失など、失われてしまった開発水準への復帰も重要なテーマです。 ただ、復興の際に単にコロナ禍前の水準に戻すだけではなく、これを改善の機会と捉え、気候変動などにも配慮したより強靭で持続可能な社会を構築するという意識が非常に大切であり、まさにより良い復興に向けた議論が行われることを期待しています。


最後に、これから国際協力分野を目指す人たちにメッセージをお願いします。

開発業界を生き、志半ばで亡くなった同僚が何人もいます。日々生きていることを当然であると思わず、全力で、どのようなことに貢献したいのかを常に考えて、模索していくことが大事だと思います。開発に携わることはどこからでもできることだと思いますが、私自身は、ブルキナファソで学べたことは人生の宝であると思っています。現地に行き、自分の目で見て体験することからたくさんのことを学ぶことは素晴らしいことです。皆さんも、ぜひ様々な機会を見つけてチャレンジしていってほしいと思います。

 

聞き手: インターン 貫名優貴子 (右)2021年6月〜9月

古我知晶プロフィール

  • 甲南大学英語英米文学科在学中に英国留学
  • 2003: 立命館大学大学院国際関係研究科在学中にフランス交換留学
    移民地区にて西アフリカ系移民を支援するNGO活動を経験
  • 2004: 国連ボランティア計画ドイツ本部(アフリカ部)で1年間のインターン研修 立命館大学大学院修士課程を修了
  • 2005 - : UNDPブルキナファソ事務所(国連ボランティア):環境・エネルギー部門環境専門家
  • 2010 - 2012: ブルキナファソ環境省、NAPA 気候変動行動適応計画コーディネーションチーム所属
  • 2010 - 2015: 京都大学大学院博士後期地球環境マネジメント専攻学修証書
  • 2013 - 2015:UNDP ブルキナファソとブルキナファソ環境省のポストを兼任
  • 2015 -:UNDP TICADユニット・プログラムマネジメント専門官
  • 2021 - : 慶應義塾大学政策メディア研究科後期博士課程

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