2018年2月 北ダルフール州フィールドモニタリング調査にて

 

現在、国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所で、若者によるソーシャルイノベーションと起業を支援するプログラム「Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)」を担当している天野裕美(あまのひろみ)に、活動内容やこれまでのキャリア、国際協力を志す人へのメッセ―ジを聞きました。

若者支援に興味を持ったきっかけは何でしたか?

学生の時から国際協力に関心があり、子どもの権利について学んでいました。ヨルダンでの青年海外協力隊(青少年活動)に従事した時に、活発でチャレンジ精神があり、コミュニティのために何かしたいという若者に多く出会いました。能力、体力、やる気あふれる彼・彼女たちが潜在能力を発揮し、さらに羽ばたいてほしいと願い、そして同時にそのような機会を得られない若者にも支援していきたいと考えるようになりました。

若者支援にどのように関わってきたのでしょうか?

若者支援を続けていきたいという思いから、UNDPスーダンの「生計復興プログラム:青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクト(以下、ユースボランティア・プロジェクト)」に2013年から従事することになりました。スーダンを離れた後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)ジュネーブ本部で若者支援のトレーニングマニュアルの作成など、スタッフやNGOが若者支援をより効果的に行えるようにするための仕事に携わりました。

若者支援に様々な角度から携わる中で、若者の自立した生活を支えることにつながるビジネスや起業への関心が強まり、現在は若者の社会起業家を支援しながらSDGsへの貢献を目指しているYouth Co:Lab(ユース・コーラボ)を担当しています。

スーダン ダルフールでの国連職員の生活はどうでしたか?

UNDPダルフールの事務所に着任した際には、農村地域において部族間や反政府勢力との紛争が断続的にあり、それを受けて私が駐在していた市街でも治安が悪くなることもありました。他の国連職員や現地職員の間で日々情報共有を行い、治安悪化に備えるようにしていました。

 

2018年2月北ダルフール州フィールドモニタリング調査先・プロジェクト対象コミュニティにおけるモニタリング会議で発言する様子

 

ダルフールの若者の生活状況を踏まえて、若者支援の重要性を教えてください。

ダルフール総人口のうち15-24歳までの青少年層の割合が19.7%と高い中、20年近く続くダルフール内の紛争により若年層が教育の機会・雇用へアクセスしづらいことが大きな問題です。学校へ通う年数は平均2.4年(2000年)から3.8年(2019年)へと少しは改善傾向にありますが、スーダンの学校へ通う平均年数を世界の国々と比べると189カ国中170位に位置します。

教育や仕事の機会が無い若者たちは、能力や情熱を発揮することもできず、未来に希望も持てないでしょう。若者たちの成長の機会が失われるということは、地域、国、世界全体の成長の機会が失われることでもあると思います。そのため全ての若者が、自分の力を伸ばし、発揮し、自己の目標に挑戦できる機会を得ることが重要だと考えます。

ダルフールで携わったプロジェクトと業務内容を教えてください。

UNDPは2012年からダルフールにおける若者の能力開発を通した地域の生計向上を目的としたユースボランティア・プロジェクトを実施しており、私は2013年から2019年までプロジェクトのマネジメントを行いました(第3フェーズでは日本から支援をいただきました)。このプロジェクトでは、ダルフールの大学卒業者を対象に研修を行い、マイクロファイナンス、起業、環境配慮型ビジネス、環境資源活用技術等に加え、ボランティアリズム、ジェンダー学、紛争解決予防など、コミュニティ開発に従事するボランティア として必要な科目を研修に加えました。トレーニングを修了した若者は現地コミュニティに9カ月間派遣され、地域の人々に学んできたノウハウを伝えることで、地域全体の生計向上を目指しました。

どのような困難がありましたか?

研修後の効果はやはり現場に足を運んでみなければ分かりません。しかし紛争下でモニタリングと評価を行うことは容易ではありませんでした。例えば、国連職員が市内から出て、活動をするには平和維持軍による護衛を必要とし、自由に外出して調査することができません。ダルフールでは現地のNGOと協力することで、モニタリングや現地調査に加え、ボランティアの募集を実施しました。

また、プロジェクトの運営では、現地の若者のジェンダー平等を重視しました。例えば、現地で青年ボランティアを募集した時に、男性から数多くの応募がありましたが、女性からの応募は少なかったのです。そこで、女性にも幅広く機会を提供できるようにボランティアの募集期間を延ばすなど工夫し、最終的には応募者の比率が男性対女性で6:4になりました。

若者支援を進めるには、現地のNGOや若者省の職員のように若者の能力をしっかりと理解し、発揮させようという思いを共有できるパートナーと協働することが大切です。幸いにも、若者への理解が深く、情熱のある同僚やパートナーに恵まれ、プロジェクトを成功させることができました。

 

2018年3月 北ダルフール州の参加者と

 

どのようなやりがいや学びがありましたか?

緊張した面持ちだった若者が、トレーニング後には生き生きした顔つきに変わり、派遣先で自ら先頭に立つ姿を見て成長を感じ、とても嬉しかったです。またスーダンでの経験から、若者が自立し生計を立てていく力を育てることは、地域開発においてとても有益なことだということを学びました。そしてその中で若者の起業支援に関心を持つようになり、Youth Co:Labに繋がりました。

Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)で今後やりたいことは何ですか?

Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)は、UNDPとシティ・ファウンデーションの共催で、若年層向けのエンパワメントと起業家エコシステムの強化を行う、アジア太平洋地域では最大規模のプログラムです。このプログラムではSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する社会起業家の支援を行っています。日本でも2019年8月の開始から今年で3年目となり、SDGs達成に繋がる取り組みを行う社会起業家コンテスト「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会」や、若手起業家を育てる環境の醸成について議論するシンポジウム「日本ダイアローグ」などを開催しています。

日本に限らずアジア太平洋地域でもプロジェクトを展開しているYouth Co:Lab(ユース・コーラボ)で、地域や国境を越えて機会に恵まれない若者を少なくしたいという思いを少しでも実現したいと考えています。

2019年から感染が拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は計り知れません。しかし逆にこの状況が機会ともなり得ます。イベントや会議がリモートで開催されるようになりました。デジタル、オンラインの力などを活用することで、地方に住む若者とも繋がることができると思います。Youth Co:Labでは様々なイベントも実施予定です。是非ウェブサイトやSNSをフォローしてください。

国際協力に興味を持つ方々へメッセージをお願いします。

もし自分の興味分野に悩んでいるのでしたら、「やってみたいこと」と「長く続けられていること (本当に好きなこと)」の二点から考えてみることをおすすめします。そして方向性を絞るために、とにかくできることからやってみることも大切だと思います。特に若いうちは体力もあるので、どんどん現場に行って、現地の生活を体感して欲しいです。まずは、積極的にアンテナを張りインターンシップやボランティアの情報を見つけ、機会があれば参加してみてください。もし自分の興味と直結していないかもと思っても、参加することで、新しい世界が開け、興味が定まっていくこともあります。

 


 
天野裕美
UNDP駐日代表事務所
ユース連携コンサルタント
  • 2003年:成蹊大学文化学科卒業
  • 2005年:英国エセックス大学にて人権学修士号取得
  • 2007-2009年:青年海外協力隊(青少年活動)としてヨルダンに赴任
  • 2012年2月~2013年2月:JICA国連ボランティア特別枠によるUNVとして、首都ハルツームにあるUNDPスーダン事務所の「危機予防と復興ユニット」に所属
  • 2013年3月~2014年9月:ダルフールへ異動・南ダルフール州にて、ユースボランティア・プロジェクトに従事
  • 2015年1月~2019年7月:プロジェクト・アナリストとして、北ダルフール州に赴任し、同プロジェクトに従事。
  • 2020年9月- 2021年1月:国連難民高等弁務官事務所 Youth engagement traning development consultantとして従事
  • 2021年2月~現在:UNDP駐日代表事務所に勤務、Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)を担当

聞き手 (写真右):堀本季歩 UNDP駐日代表事務所インターン(2021年1月〜5月)

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