2019年12月、UNDP南アフリカ事務所との同僚と:右から5番目が浜野

 

来年チュニジアで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)を見据え、アフリカに関わる国連開発計画(UNDP)の邦人職員を通じて、今のアフリカと日本に期待される役割を探ります。今回は、2019年からUNDP南アフリカ共和国事務所にてプログラム分析官として勤務する浜野沙羅(はまの さら)に、これまでの経験や南アフリカでの仕事、民間企業から国連機関を目指す人へのメッセージなどを聞きました。


(聞き手)国連機関で仕事をするまでにどのような経験をしてきたのか、これまでのキャリアを教えてください。

大学卒業後、国際交流NGOピースボートでの通訳、シンガポール日本国大使館を経て、日本で人材育成会社に勤務しました。

ピースボートでは国際交流の船旅を実施していたのですが、その乗船時や、シンガポールで勤務していた際に、東南アジア諸国をはじめ開発途上国の現場を訪れる機会がありました。東南アジアでは著しい経済発展が目立つ一方で、スラム街が高層ビルに隣接していたことや、建設現場の人々や家政婦さんなどのほとんどが出稼ぎの労働者であったことが印象的でした。肉体労働者や非熟練労働者は低賃金で働いており、ほとんどの場合、非正規雇用者です。こうした貧富の差を目の当たりにして、労働者の権利や都市開発、児童保護など、様々な開発課題について考えさせられました。こうした経験から、貧富や経済格差をどのようになくせるか、誰も取り残さない経済発展を実現するにはどのようにしたらよいかに関心を持ち、大学院では特に開発経済学を学びたいと考えるようになりました。

大学院では、日本財団支援アジアンピースビルダーズ奨学金プログラムを通じて二つの修士号を取得しました。一つはフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学で国際政治学を、もう一つはコスタリカにある国連平和大学にて「持続可能な経済開発」を専攻しました。もちろん学業も充実していましたが、開発の実務に携わるための実践的な経験も積むことができました。例えば、修了プロジェクトの一環として、ラオスにてラタンという植物を保護しつつ、ラタン生産者の収入向上を目指すプロジェクトのインパクト評価を行いました。

大学院修了後、国連ボランティア(UNV)としてセルビア共和国の国連常駐調整官事務所(RCO)に勤務しました。RCOで様々な国連業務の調整を行いつつ、UNDPの業務サポートに携わりました。数ある国際機関の中でUNDPを志望した理由は、UNDPが途上国の開発に強みを持つ機関であると同時に、経済発展、ガバナンス、気候変動やジェンダーといったあらゆる側面から開発をサポートしているためです。誰も取り残さない長期的な開発を考える際には、一国における様々な課題の関係性を理解することと、その国のシステムや関係組織の支援が非常に重要だと思っています。一国の開発に携わる上で、UNDPのミッションと考えに共感し、UNVからUNDPでの仕事を志望しました。

 

ー南アフリカでの浜野さんのお仕事について教えてください。

南アフリカはアフリカ大陸における経済大国であり、所得水準が比較的高い国です。一方で、世界最大規模の経済格差や高い失業率などの問題も抱えており、コロナ禍で状況は深刻化しています。JPO1年目の昨年は、UNDPが出版したコロナ禍に関する報告書の南アフリカ版(Socio-Economic Impacts of COVID-19 in South Africa)の編集などに携わりました。

さらに今年の4月には、日本政府による拠出金で、南アフリカでの青少年の雇用拡大に向けた、技術研修・職業訓練(Technical and Vocational Education and Training, 略称TVET) 校の能力強化プロジェクトを立ち上げました。南アフリカに拠点を置く主要な日系の自動車メーカーと連携し、TVET校が市場のニーズに沿った訓練ができるようにすることで、自動車産業での雇用率向上を目指す、民間連携のプロジェクトです。南アフリカでは自動車産業が主要な産業となっていますが、TVET校で実施される職業訓練の内容と実際に企業が求める人材の間にミスマッチが起きていたので、私はその改善にあたりました。

青少年の雇用拡大に関わるプロジェクトを立案する際、企業側が求める特定の人材像や業界の採用トレンドを理解するために、人材会社に勤務していた経験が大変役立ちました。企業や業界の立場から考えると、採用したい人材とは「特有の技能・ソフトスキルを修得した人」となります。人材会社での業務経験を通じて、こうした企業が求める人材や雇用のトレンドに敏感になりました。

 

2021年8月、Coastal KZN TVET校にて、UNDPによる機材搬入のための事前視察

 

ー民間連携の仕事をしてみて、どのような困難、やりがい、学びがありましたか。

プロジェクトに関わる各関係者のニーズを把握し、それを踏まえて運営を行うのが難しい点です。民間企業だけでなく、現地政府や日本政府、研修受講者など多くの人々がこのプロジェクトに関わっており、それぞれに異なる方針や要望が存在します。プロジェクトの実施過程でこうしたニーズに新たに気づくこともありました。例えば、プロジェクト開始時から「卒業生の就業率を高めるために学生へのサポートが大事だ」と認識していたのですが、協議が進む中で、学校側から「教官へのサポートも必要だ」という指摘があがりました。教官は民間企業との接触が全くなく、企業側の実情を知らないため学生に教えられないという背景があったのです。私たちの知見だけではわからないことも多く、現場の声を聞くことは重要だと思っています。

多様なアクターとの連携は難しくもありますが、同時にやりがいを感じる点でもあります。新たなパートナーシップを構築し、同じ目的に向けてより効果的な活動をつくる、UNDPの「つなぐ役割」に醍醐味を感じています。

 

2021年4月、クワズール・ナタール州のTVET校視察。右から4番目が浜野

TVET校視察。左から3番目が浜野

 

ー2019年に横浜で開催されたTICAD7では、TICAD史上初めて民間企業を公式なパートナーと位置づけるなど、官民の連携が特徴的でした。TICAD8を見据えて、アフリカ開発における日本の可能性や、日本に期待することを教えてください。

アフリカではアフリカ大陸自由貿易圏協定(AfCFTA)の運用が開始し、域内貿易が盛んになり、これからはさらにアフリカ発の製造業の競争力強化や貿易インフラの発展が見込まれます。今まで以上に、投資やビジネスがしやすい環境が整ってきているのです。

ビジネスチャンスが拡大する一方で、コロナ禍からの回復や気候変動への対応も重要なテーマになっています。アフリカで活用できる日本の技術や製品は多くあると思います。経済発展だけでなく、より持続可能な形でアフリカの発展に貢献できる技術の促進を期待しています。大きな企業だけでなくスタートアップへの働きかけを増やしながら、より長期的・継続的なパートナーシップを構築できればと思っています。

 

ー今後の夢や、やりたいことを教えてください。

2年間の南アフリカでの仕事を通して、現地の若者や企業のポテンシャルの高さが印象に残っています。特に「自分たちで自分たちの課題を解決したい」という思いを強く感じました。

南アフリカ及びアフリカ全体の様々なスタートアップや素晴らしいビジネスモデルを持った中小企業、さらにはアイデアを持つ若者がよりビジネスを実現・拡大できるよう、イノベーションを支える枠組みを整えていきたいです。これまでの業務を通じて、新たな投資の枠組み・金融モデルに関して理解を深めることができたと同時に、若者などのアイデアを大きくするにはやはり資金が重要であると感じました。これから伸びていくと思われるSDGs投資などに関する知見を深め、ソーシャルビジネスへの資金を増やせるような取り組みに関わっていきたいと考えています。

 

ー最後に、これから民間企業での経験を活かして国連で働きたい人へのメッセージをお願いします。

民間企業で働いている方は、ITやファイナンス、ロジスティクスなど、国連で活かせるような分野のスキルを持っているはずです。国連機関は民間企業のオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)のような機会はあまり多くなく、即戦力を求める職場です。民間企業で資格取得や研修制度があれば積極的に活用し、培ってきたスキルと専門性を伸ばすことは重要なポイントです。

スキルに加えて、どのような開発課題に関心があるか把握することも重要です。開発も多岐に渡る分野なので、紛争や災害など緊急性のある現場に携わりたいのか、長期的な社会経済開発の支援が行いたいのか、あるいは特定の課題に関心があるのかなど、ご自身の考えを持つことが重要だと思います。自分のスキルと貢献したい課題を掛け合わせると、具体的な活躍の場が見えてくるはずです。

必ず活かせるスキルがあると思うので、まず自分のスキルを把握して、伸ばせる部分を現在の所属先で伸ばすことが大事だと思います。そして、開発途上国の現場や各国連機関の特徴を知るための手段として、UNVなどの制度も利用してみてください。


聞き手: インターン 登里祥伍 (右)2021年8月〜12月

浜野沙羅プロフィール
マウントアリソン大学(カナダ)国際関係学部卒。シンガポール日本国大使館、米国系人材関連会社を経て、国連平和大学(コスタリカ)開発経済学とアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)国際政治学の両修士号を取得。2018年、外務省委託「平和構築人材育成事業」により、国連ボランティアとしてセルビア共和国のUNDP兼RCOに勤務。翌年、国連人間居住計画(UN-Habitat)で日本政府支援 の住宅再建・修復事業の運営を担当。2019年より外務省JPO派遣制度でUNDP南アフリカ共和国事務所に勤務。2021年10月よりUNDP本部アフリカ局TICADユニット勤務

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