2021年10月、第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)での写真

 

世界中で気候変動問題に対する意識と危機感が高まる中、 UNDPではパリ協定の目標実現に向けて、幅広いネットワークと包括的な開発支援を生かして、様々な取り組みを行っています。そこで、第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)や「気候の約束(Climate Promise)」イニチアチブに携わり、UNDP ニューヨーク本部で気候変動プログラム専門官として勤務する山角恵理(やますみ えり)に、これまでの経験や気候変動に対する思い、国連機関で働く上で必要な心構えなどを聞きました。


Q1 第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が昨年10月に英国・グラスゴーで開催され、およそ200か国が参加しました。今年は世界の平均気温の上昇幅を摂氏1.5度に抑制する努力を追求するということが明記されたことが印象的でした。会議に実際に携わってみての思いを聞かせてください。

最も心に残っているのは、約200ヶ国が集う本会合です。気候変動によって海面上昇の深刻な影響を受けている島国や、気候危機によって水・食糧不足の危機に直面する国々の首脳たちが、温室効果ガスの排出量が多い国の首脳たちに対して窮状を直接訴えかけている姿を初めて目にしました。二国間での交流・交渉を行う際には、お互いの経済・外交政策及びそれぞれの力関係を考慮した発言が慣例です。様々な国際会議に携わってきましたが、経済大国に対して特に途上国が集団的な交渉力を発揮し、国の存続に関わる深刻な危機や安全保障問題の建設的な解決策を強く訴える姿はなかなか目にすることがありません。これこそマルチラテラリズム(多国間主義)の意義であり、COP特有の、全ての国が気候変動問題という一つの課題に対して真剣に向き合うということなのだと感じました。

 

2019年9月、「気候の約束」の取り組みを発表した国連気候変動サミットでの写真

 

Q2 山角さんが携わっているUNDPの「気候の約束( Climate Promise )」イニシアチブは、気候変動対策強化において特徴的なプロジェクトの一つだと思います。また、気候変動問題の現状について山角さんはどのようにお考えですか?

「気候の約束(Climate Promise)」は、パリ協定の目標達成に向けて各国をサポートするために UNDPが2019年に立ち上げたイニシアチブです。パリ協定に基づき、全ての国が温室効果ガスの排出削減目標「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution、通称NDC)」を策定することが定められています。それぞれの国のNDCの貢献が積み上がり、世界全体で気候変動への取り組みをより拡大していくことで1.5度目標に近づくというメカニズムです。UNDPは現在、120か国(途上国の80%以上)でこのNDCの策定、及びその目標を実現するための政策実施の支援を行っています。COP26に向けて行われた「気候の約束」の第一段階の取り組みでは、それぞれの国がより意欲的なNDCを策定できるようにするための政策面での支援を行いました。そして、策定したNDCに沿った政策の実行が、今後取り組んでいく第二段階となります。

各国がCOP26までに策定したNDCの効果については様々な見方があり、全てのNDCが達成されたとしても世界の平均気温は約2. 7度上昇するとも言われています。1.5度に抑えられない現状に正直フラストレーションを感じました。しかし、20年間、気候変動を追いかけ続けている新聞記者の方と話す機会があり、その方の言葉が印象に残っています。「若い人たちはCOP26を失敗と感じるかもしれません。しかし約20年前、気温が7度上昇すると言われていた時代から見ている私からしたら、これだけ短い期間に気温上昇を2.7度に抑えられたことは大きな成果です。だから諦めずに取り組みを強化し続けていけば、目標である1.5度の達成も見えてくる。」と仰っていました。気候変動問題に対して楽観的に見ることはできませんが、私は今回の結果は今後数10年間、気候変動問題に向き合っていく上で、前に進む希望として見ることにしています。

Q3 一人一人が気候変動問題に向き合い、声を上げていくことが必要であると思うのですが、私たちが今できることは何でしょうか?

気候変動は果てしなく大きな問題で、一か国、一企業、または一個人が自らの力のみで解決していくことは困難だと感じますよね。しかし、今日何を買うか、食べるか、どうやって目的地に行くか、どういったエネルギー源を使ったか、日々の生活がすべて気候変動政策に関係しています。私はそういった身近なことから、どういう政策があって、個人や社会としてどういったアクションを起こせるのか、まずは知って考えてほしいです。そしてそれを周りに広げてほしいです。

気候変動問題をより身近に感じてもらいたいと思い、UNDPでは2020年、「気候の約束」の一部として、無料オンラインゲーム「Mission 1.5」を発表しました。このゲームは、プレイヤーが国の政策決定者になったつもりで、より気温上昇を抑えるために正しいと思う解決策を選択していくというものです。様々な気候変動の専門機関や科学者と相談しながら作ったゲームで、正しい選択肢を選ばないと、地球の温度がどんどん上がっていきます。初めてゲームに挑戦した時、私自身もいくつか解答を間違えて気温が1.5度近くまで上昇してしまい、1.5度に抑えることがどれだけ大変なことなのか感じました。世界中の人に遊んでもらいたいと思い、様々な言語で公開しています。日本語版でもプレイできるので、是非挑戦してみてください。

 

2020年2月、「Mission 1.5」を発表した時の様子
オンラインゲーム「Mission 1.5」

 

Q4 世界的に気候変動問題への関心や意識が高まる中、山角さんは今後の対策実施に期待することはありますか?

各国の人々の声がしっかりと反映された、意欲的な政策が提示されたらいいなと思っています。また、私自身もそれに向けて、努力を続けたいと思います。

世界各地で気候変動に関するストライキが起こり、大きな声を出して訴える若者たちの姿がその象徴として多くのメディアで取り上げられました。一人一人の声がこんなにも重く、重要なもなのかと感じさせられる一方、なぜ人々や環境を守るといった当たり前のことが政策に反映されていないのか、疑問に思うことも多いと思います。

そこで、UNDPでは「気候の約束」に参加している120か国及び世界各国の政策決定者や政府関係者に市民の声を届け、政策に反映していくため、「みんなの気候投票(People's Climate Vote)」という調査を2020年から2021年にかけて実施しました。これは、気候変動に関する世界最大規模の世論調査で、計120万人が参加しました。世界人口の過半数を占める50カ国を対象とし、気候変動に高い関心を寄せながらも、通常選挙ではまだ投票権のない18歳未満の若者50万人以上も含まれています。UNDPとオクスフォード大学が共同調査・結果分析を行い、2021年1月に結果を発表したところ、回答者の64%が気候変動をグローバルな危機と捉え、大半の回答者が広範な対策を要望することがわかりました。

さらに昨年のG20開催に先立ち発表した別の調査「G20 みんなの気候投票」では、世界経済の約80%及び世界の排出量約75%を占めるG20諸国でも気候変動を危機であると捉える人が大多数であり、今後、気候変動に関心の高い若者が投票権を得るようになるにつれ、気候変動対策への支持が広がっていくという結果を伝えることができました。

 

UNDP では気候変動対策に対する様々な取り組みを実施しています

 

Q5 UNDPで仕事するまでにどのような経験をしてきたのか、またこれまでのキャリアを教えてください。

大学院卒業後は、国際NGO、ウガンダ日本大使館、外務省G7伊勢志摩サミット・外務大臣会合事務局、UNDPケニア事務所で経験を積み、現在、UNDPのニューヨーク本部で勤務をしています。

経済学を専攻した大学時代に、経済モデルでは今後の経済見通しや理想的な状態を容易に導き出せるのに、開発・国際問題は資金があっても解決されないことに関心を持ち、単純にモデル化できない複雑な開発事情についての理解を深めるため、大学院では開発学を学びました。その後、カンボジア、ベトナム、ウガンダ及びケニアで働く機会に恵まれ、開発途上国での資金の流れや経済システム・開発政策について深く学ぶことが出来ました。ウガンダの日本大使館で経済分析及び経済協力の仕事をさせていただいたことをきっかけに、この分野でのキャリアを心に決めました。

その後、アフリカ開発会議(TICAD)やG7伊勢志摩サミット、G20や国連総会に携わる機会があり、それまでの開発現場での業務から、徐々に政府間プロセスに関する本部業務へとキャリアが変化していきました。特に政府間プロセスに関する業務の中で得た国際政治や政策分析を踏まえた経験が評価され、現在のUNDP本部での気候変動プログラム専門官のポジションに繋がりました。

Q6 国連機関や国際協力分野で働くことに興味をもつ人へのメッセージをお願いします。

国連や国際会議などの業務に携わると、奇跡だと思えるような国の政策決定や変化を目にすることができるため、私にとっては大きな幸せです。しかし、その分、困難なことや心が折れる場面もたくさんあります。そのため、必ず自分は乗り越えられると物事をポジティブに捉えることが重要だと思っています。どのような年齢、スキル、バックグラウンドを持つ人であっても、国連は様々な人材を必要としているので、個人が持つ才能や強みを磨いていくことが大切だと思います。時期によって必要な人材が変わりますが、絶対に諦めなければどこかで必ず扉は開きます。あきらめず、チャレンジしてみてください。


山角恵理(やますみえり)

兵庫県芦屋市出身。同志社大学経済学士、(英)マンチェスター大学開発学修士号修得。外務省・専門調査員(在ウガンダ大使館)及びG7伊勢志摩サミット・外務大臣会合準備事務局・専門員を経て、2016年からUNDPに勤務。ケニア事務所、本部・対外関係アドボカシー局、ファイナンスセクター・ハブを経て、2020年1月から現職の総裁室・気候変動プログラム専門官として気候変動及び政府間プロセスに従事。


聞き手:インターン山崎杏実(左)、Ana Lale(右)

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