2015年12月にコソボ中央部オビリッジ市においてUNDPのプロジェクトが支援した女性の社会的企業の出発式にて。右から2人目が筆者。

2015年3月から国連開発計画(UNDP)コソボ事務所で、JPOとして勤務している富永文彦です。今回のエッセイでは、現在のコソボの状況、UNDPのプロジェクトや自身の役割、そして自分が開発の世界を志した理由について紹介させていただきます。

コソボの現在

皆さん、コソボと聞いて何を連想しますか?旧ユーゴスラビアの崩壊後、1990年代後半に、独立を巡りコソボとセルビアとの間で紛争が起こったため、コソボと聞いて「紛争」を連想する人も多いのではないでしょうか。紛争は1999年に終結し、復興が進んだ2008年にコソボは正式に独立を宣言*しましたが、 私自身も当地に赴任するまでは治安の心配をしていたぐらいで、紛争後のコソボについてはあまり知られていないのではないかと思います。実際にこちらに来てみると、休日の街は家族連れで溢れ、一般的な治安は非常に良くなっていることがわかりました。また、紛争終結直後から日本がコソボを支援してきたことから、私が日本人と分かると、日本への感謝を口にする親日家も多いです。さらにコソボは2016年に、欧州連合(EU)への加盟へ向け、「安定化・連合」合意(Stabilisation and Association Agreement)に署名し、政治、経済、貿易、環境、そして人権分野などにおける様々な改革に取り組んでいます。

しかしながら、一部では民族間の対立がいまだに残っているほか、高い失業率や汚職、環境汚染などの問題も依然として深刻です。コソボの過去数年間の経済成長率は平均3.5%とプラス成長を記録しているものの、経済は開発援助や海外に住むコソボ人からの送金に大きく依存しており、労働人口全体の失業率は35%、労働市場で差別を受けやすい若い女性の間での失業率は72%にも達します。経済の抜本的な構造転換のみならず、民間部門の更なる発展や生産性の向上などが、持続可能な経済成長を実現する上で必要不可欠となります。また、縁故主義や贈収賄などの汚職が問題となっているほか、環境分野の規制枠組みが整っていないため、古い火力発電所や中古車などからの排気ガスによる大気汚染や、 防災能力の強化も課題となっています。

UNDPのプロジェクトと自身の役割

こうした問題に対応するため、UNDPコソボ事務所では以下の3つの柱のもとに、コソボの関係機関と協力しながら様々なプロジェクトを実施しています。

  1. 持続可能な開発
  2. 民主的なガバナンスと平和構築
  3. 環境、気候変動・防災

私は現在、「持続可能な開発」および「環境、気候変動・防災」ユニットを担当しており、私の役割は主に、1)プロジェクトの実施管理 2) 新規プロジェクトのデザインおよび企画書の作成です。1つ目の役割は、各ユニットのプロジェクトの迅速な実施を監督することが求められます。現在は、女性や少数民族など社会的に弱い立場にいる人を対象とした雇用関係のプロジェクトと、コソボにおける防災能力強化を目的とするプロジェクトの実施状況を監督しています。2つ目の役割では、UNDPや他の開発パートナーが拠出する資金を用いて実施するプロジェクトをデザインし、それを企画書に落とし込みます。プロジェクトの分野や大まかな方向性は、各機関の優先事項やコソボにおけるニーズを総合的に勘案し、UNDPの常駐代表や各国の大使、そしてコソボの関係者などの協議である程度決まりますが、その後のプロジェクトのデザインや企画書の作成は事務レベルで詰めていくことになります。

この度、日本政府が支援する日・UNDPパートナーシップ基金という枠組みで、私も企画に関わった防災分野の新しいプロジェクトが承認されました。このプロジェクトでは、多様なニーズを持つ人々の視点に立った防災対策を計画するほか、女性が防災・復旧の重要な担い手であると位置づけ、女性の防災関連能力の強化を図る予定です。防災分野における優れた知見を有した日本が資金を拠出し、コソボの防災対策を継続的に支援してきたUNDPが実施する予定であるこのプロジェクトは、日本の国際協力機構(JICA)の支援との相乗効果も見込まれ、コソボの防災能力を更に向上させることが期待されます。

開発の世界を志した理由

私は父親の仕事の都合で、6~9歳までの3年間をモンゴルで暮らしました。当時のモンゴルは共産主義から資本主義への移行期で、街には貧困が溢れ、自分と同じぐらいの年齢の子どもが物乞いをし、マンホールの中で暮らしていることに、幼心ながら衝撃を受けたことを覚えています。この時の経験が、開発分野を志す原点となっています。その後、大学時代に留学したエクアドルでは、アマゾンの熱帯雨林劣化や石油開発による土壌汚染、また、沿岸部のマングローブ林がエビの養殖プールを作るために伐採されるなど、経済発展のために環境が犠牲とされる現状を目の当たりにしました。さらに、大学院時代にボランティアを経験したエルサルバドルでは、気候変動の影響により大雨が発生し、当時私が暮らしていた家の目の前で地滑りが発生するのを間近で目撃しました。発展途上国では経済発展が優先され、環境はともすると後回しにされがちな問題ですが、気候変動や自然災害は、これまで積み上げてきた開発努力が瞬時に水の泡となるような甚大な被害をもたらす可能性を持っています。こうした経験から、私は国際開発のなかでも環境分野で貢献していきたいと考えるようになりました。

UNDPのヘレン・クラーク総裁が様々な場面で、「リスク情報を無視した開発は、持続可能な開発ではない(筆者意訳、原文:If development isn’t risk-informed, it isn’t sustainable development)」と述べているとおり、今後は気候変動や自然災害のリスクを十分に理解したうえで、持続可能な開発を進めていくことが重要になっていくと考えます。開発をコアな使命とするUNDPは、環境問題を開発分野の取組の一部として包括的にアプローチすることが可能で、持続可能な開発を実現する上で重要な役割を果たします。私自身もUNDPの一員として、昨年9月に採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が掲げる「地球上の誰をも置き去りにしない(Leave no one behind)」という概念が実現する世界へ向けて、SDGsの達成期限である2030年を目指して日々業務に取り組んでいます。一人でも多くの人を笑顔にできるよう、今いる場所で自身のベストを尽くし、今後も努力を重ねていきます。

※独立宣言は全ての国で承認されておらず、コソボは国連の正式な加盟国となっていない状態です。したがって国連がコソボに言及する際は、「国連安保理決議1244(1999年)に規定されるコソボ」という一文が通常併記されます。


富永文彦(とみなが・ふみひこ)

UNDPコソボ事務所 持続可能な開発及び環境、気候変動・防災ユニット プログラム・アナリスト。モザンビークとニュージーランドの日本大使館での勤務を経て、2015年より現職。アメリカ創価大学教養学部卒。ミドルベリー国際大学院モントレー校国際環境政策修士。

本記事は2016年6月24日に掲載されたものを、2021年6月1日に再投稿しました。

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