マライタ州ランガランガ村で女性たちと面談 ©UNDP Solomon Islands

 

南太平洋に浮かぶ、900以上の島から成る国、ソロモン諸島をご存知ですか?私は2016年、ここにあるUNDP事務所の長として赴任しました。首都ホニアラがあるのは、ガダルカナル島。多くの日本人の心に特別な響きがあると思います。もともとは南海の楽園であるこの島は、第二次世界大戦中、アメリカと日本の激戦地として多くの死者を出し、地獄と呼ばれました。戦後、ソロモン諸島は平和への道を歩み始めましたが、1998年から2003年まで土地や資源などの問題を巡って民族間で内戦が起こり、昨年6月までオーストラリアが率いる多国籍平和維持軍が派遣されていた事実を、日本ではあまり知られていないかもしれません。

UNDPソロモン諸島事務所では、内戦中から平和構築のプロセスを支援してきました。その中で特に注目されたのは、女性が平和構築に果たした役割です。兵士として戦争に直接参加をするのは大多数が男性ですが、残されたコミュニティーのメンバーや家族をまとめ、守り、平和への道を築き上げた女性の貢献は、数多く知られています。

このように草の根レベルでの貢献は認められているソロモン女性ですが、公の場でリーダーショップを発揮するにはまだほど遠いのが現状です。1978年の独立後、これまでに国会議員を務めた女性は、わずか4人。現在も、50人の議員中、女性はたった2人です。女性は全人口の半分以上を占めるわけですから、男女平等の政治参加など民主主義の観点から見るとずいぶん不公平な現状です。ソロモン諸島を含め太平洋メラニシア地域での女性議員の比率はとても低く、近年パプアニューギニアとバヌアツで行われた選挙でも、女性議員がゼロという悲惨な結果になりました。

UNDPソロモン諸島事務所では、こうした現状を変えるために政府や女性グループと積極的に連携し、女性議員を増やすための政策を推進しています。まず、女性議員が増えない理由を分析したところ、女性が選挙に当選しにくい理由として、女性の役割や実力、可能性に関する偏見や、制度の問題(投票システムや選挙資金確保の問題など)が挙げられたため、女性候補者がより公平な立場で選挙活動を行える環境づくりや女性リーダーへの能力強化支援などを行ってきました。その一環として、今年5月には、50の選挙区から公募した女性リーダーを集め、政治の仕組み、選挙活動のノウハウなどの研修を行いました。研修の最後には、実際に国会の本会議が行われる議事堂にて女性リーダーによる環境法の討論が行われ、全国中継されました。その様子を見たソロモンの人びとは、論議の質の高さと女性のリーダーシップの可能性に感動し、その後しばらく話題となりました。参加した女性たちは、これを機会に、来年の総選挙に向けて大きな自信がついたと目を輝かせていました。

 

マライタ州女性リーダーとハウ首相との会談
平和構築ナショナルダイアログで意見を述べる女性立候補者
ソロモン諸島で2人目の女性議員となったリネット議員と
ガダルカナル州の女性。

 

ひるがえって日本はどうでしょうか。実はソロモン諸島の状況とさほど変わりません。今年6月現在で、日本の衆議院の女性議員比率はおよそ10パーセントで、191か国中158位にとどまりました。後発開発途上国であるソロモン諸島は2パーセントで186位でした(列国議会同盟の報告より)。日本は先進国の中でも、またご近所の中国と韓国からも大きく出遅れています。女性議員の候補者を増やす法整備など女性が活躍できる社会を推進する動きがみられ、働き方の改革などもよく耳にするようになりましたが、明確な結果につながっていないと聞きます。

他国でも女性議員がなかなか増えない構造的な障壁が存在しますが、多くの国々がこの壁を乗り越え、女性議員比率の世界平均は過去20年で倍増。現在は23.8パーセントとなっています。その最大の推進力は、議員や閣僚などの一定数を女性に割り当てる「クオータ制」と言われる制度の普及にあると言われています。現在、120カ国以上で何らかの形でクオータ制が実施されており、ソロモン諸島でもまず女性にチャンスを与えるのが優先だということから、クオータ制導入が検討されています。これには様々な議論があり、クオータ制は投票者の意向を反映せずに選挙結果を変え、民主主義に反するものだという意見がある一方、人口の半分を占める女性が政治参加できない現状のほうがもっと反民主主義だという声もあります。

私は、環境を整えていくことはもちろん大事ですが、まず妨げとなる文化を変えていくことが重要だと思います。しかし、女性の役割はソロモンの伝統文化の中で成り立っているから、急に変えるのは無理だという声もあります。

女性立候補者およびヘレン・クラーク氏と ©UNDP Solomon Islands

 

先日、女性議員の増加促進の一環として、女性が議員の3~4割を占めるニュージーランドより、前首相(およびUNDP前総裁)のヘレン・クラーク氏を招き、女性候補者を激励していただきました。彼女が初めて議員になったころのニュージーランドでは、女性議員は8人だけでした。その後、20年をかけて数はどんどん増え、ついに30代の女性首相が誕生。一国の首脳として出産し産休を取る世界初のケースとなりました。クラーク氏は、「文化は変えられるもの、いや変えなければいけないものだ。政治や開発から女性が取り残されているようでは、持続可能な開発目標(SDGs)を達成できるはずはない。女性議員が増えることにより、汚職が減るなど目に見える効果がある」と訴えました。

私は日本で働いた経験がないのですが、日本の報道などを見る限り、「男性を支えるのが女性の役割」などというような型にはめられた女性像が根強いような気がします。私自身は外国人と結婚し、二人で話し合った上で、私のキャリアを軸とした生活をすると決めました。2年から4年ごとに、転勤のたびに世界の国々を転々とするわけですから、夫は行く先々で、現地ないしその国を拠点としてできる仕事を探すなど、柔軟な対応を迫られます。彼が私の仕事についてきているからか、日本人の方から「ヒモですか」と質問を受けたこともありました。しかし、外国の大使館では女性外交官を夫がサポートしているケースが多々あり、当たり前の光景となっています。

女性議員の問題にしても、女性がより活躍できる社会を築き上げるには、今ある壁の根本的な原因を理解し、働き方の改善、社会全般の文化や考え方の改革を含めた、具体的な対応を打ち出していく必要性があると思います。日本でもソロモン諸島のように、政党、女性グループ、候補者を交えての、女性議員推進プログラムを積極的に展開してはどうでしょうか。現在、日本の女性がもし立候補しようとしたなら、どのような支援がうけられるのでしょうか。日本はインフラなどの面では世界の最先端を行く先進国ですが、女性の社会進出の面では数十年の遅れをとっています。このような状態を重大問題と認識しつつ、女性議員比率世界ナンバーワンを獲得したアフリカのルワンダ(女性議員比率61%)など、ほかの国から学ぶこともたくさんあるのではないでしょうか。


久保田あずさ | UNDPソロモン諸島事務所カントリー・マネージャー / ソロモンアイランド国連ジョイントプレゼンスオフィース・マネジャー

2002年にUNDPマラウイ事務所へ貧困削減プログラムオフィサーとして赴任後、ニューヨーク本部の評価部、モルジブ事務所副所長、ラオス事務所副所長を経て現職。現在ソロモン事務所では、気候変動、緊急災害、ガバナンス(選挙、平和構築)などのプログラムに主に取り組んでいます。米国マサチューセッツ州スミス大学人類学部開発学科卒業(学士)、米国ニューヨーク州コロンビア大学国際関係学科修了(修士)。

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