人間開発報告書2009: 障壁を乗り越えて―人の移動と開発

人間開発報告書2009: 障壁を乗り越えて―人の移動と開発

2009年10月5日

私たちの世界はとても不平等である。世界中の多くの人々にとって、自分の町や村を離れて移動することは、自らの人生を改善する最良かつ、ときとして唯一の選択肢である。人の移動は、個人や家族の所得、教育や社会への参加を改善し、子どもたちの将来の展望を広げるにはとても効果的であるが、その意義はそれだけではない。自分の住む場所を自分で決められることは、人間の自由に欠かせない重要な要素なのである。

世界中の移住者に典型的な姿というものは存在しない。果物の収穫をする季節労働者、看護師、政治的難民、建設作業員、学者、あるいはコンピュータ・プログラマーなどすべての人々が、国内または国外へと移動する約10億の人々の中に含まれる。移住先が国内であろうと国外であろうと、人は移動するとき、希望と不安を胸に旅立つが、ほとんどの人々は、新しい機会を広げるために移住する。自分の能力を活かせる土地に移り住んで、自分と家族(一緒に移住したり、しばらくして後を追ってきたりする場合が多い)の暮らしを向上させたいと考えている。

移住者の出身地であれ移動先であれ、地域コミュニティや社会も総じて、移住者による恩恵を受けている。移動する人々の多様性と、人々の移動を管理する様々な規則が、とくに世界的な景気後退にあって、移動をとりわけ複雑な問題にしている。

『人間開発報告書2009『障壁を乗り越えて―人の移動と開発』では、人の移動に関する政府の政策を改善すれば、人間開発の状況を大きく促進できることを明らかにする。本報告書は、まず、誰が、どこへ、いつ、そしてなぜ移動するのかといった、人の移動の輪郭をたどり、それから移住者とその家族、あるいは出身地や移住先に対して、人々の移動がもたらす幅広い影響を分析する。

そして、人々の選択肢と自由を拡大するために、各国政府が国内外への人の移動を妨げる制約を減らした事例を明らかにする。さらに、人々が無事に移住先に到着すると同時に展望を広げるための具体的な方策を議論する。人々が移住後にはやく安定することは、出身地と移住先の両方に多大な恩恵をもたらすことにつながるのである。このような改善は単に移住先の政府への提言にとどまらず、出身国の政府、特に民間企業や組合、あるいは非政府機関といった、この問題で重要な役割を果たすさまざまな関係者、さらには移住者自身への提言でもある。

『2009年度版『人間開発報告書』は、複雑さを増す世界各地での人の移動のパターンから、最良の成果を模索する政策立案者に対し、人間開発を政策課題の中心に据えることを求めるものである。

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